「こいつ頭悪そう」と思われるのが嫌だから、「文章を書くこと」が苦しくなってしまいます(写真:jessie/PIXTA)「数字に弱く、論理的に考えられない」「何が言いたいのかわからないと言われてしまう」「魅力的なプレゼンができない」これらすべての悩みを解決し、2万人の「どんな時でも成果を出せるビジネスパーソン」を育てた実績を持つビジネス数学の第一人者、深沢真太郎氏が、生産性・評価・信頼のすべてを最短距離で爆増させる技術を徹底的に解説した、深沢氏の集大成とも言える書籍、『「数学的」な仕事術大全』を上梓した。今回は「ビジネス文章」について取り上げ、評価を下げてしまう文章の問題点とその解消法を数学的な視点から解説する。

「頭悪そう」と思われる文章は書きたくない

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ビジネスの重要なコミュニケーションは、メールなどでの文章で行うことが常識です。しかし多くのビジネスパーソンが文章を書くことに苦しんでいます。

なぜこれほどまでに現代のビジネスパーソンは、「文章を書くこと」に悩むのでしょうか。

伝わらないから

うまく書けないから

もちろんその通りだと思いますが、本当にそれだけでしょうか。大きな声では言わないけれど心の中ではみんな思っている本音。今から私がそれを言語化します。

「こいつ頭悪そう」と思われるのが嫌だから

いかがでしょうか。メールや書類などを読んで、「なんだか読みづらい」「何が言いたいのかわからない」という印象を持ったことがあるはずです。そしてその印象は次のように変わります。

「あまり賢そうな人には思えないな」

「この人は仕事がデキなさそうだ」

「この人、大丈夫かな」

このように思われることは、ビジネスシーンにおいて「大惨事」。誰しもが避けたいことのはずです。

今回は、このような「大惨事」が起こってしまう文章の2つの問題点と、その問題点を解消するヒントを「数学的」な視点からご紹介します。そのヒントは、じつは「数学」に隠されているのです。

誤解がないように先にお伝えしますが、私は文章に数字や数式を使うことを推奨するわけではありません。ヒントが数学に隠されているといっても、数学ではなく「数学的な記述」に注目することを提案しています。

文章は「これ以上削ぎ落とせない」のがベスト

まずはお手本となる「数学的な記述」をご覧ください。ここでは数学の理解が目的ではないので、ざっと眺める程度で問題ありません。

半径5cmの円における、円周の長さを求める。 円周の長さを求める公式は次の通り。円周の長さ=2πr(πは円周率、rは円の半径) R=5であるから円周の長さ=2πr =10π 仮に円周率を3.14とすると、円周の長さ=10π=31.4(cm)

それでは、この「数学的な記述」を手がかりに、「頭悪そう」と思われてしまう文章の問題点を紐解いていきましょう。

まずは1つ目の問題点です。

問題点①文章がダラダラと長すぎる大変申し訳ないのですが、明日の打ち合わせについてお願いがあるのですが、10時からの予定でしたが、重要なアポが入っていたということを忘れてしまっておりまして、すみませんが11時からに変更ということにしていただきたいのですが難しいでしょうか。本当に申し訳ございません。

これは悪い例です。1文が長すぎて、冗長な印象を与えてしまいます。

一方で、先の数学の論述は、非常にすっきりとした印象があったのではないでしょうか。数学の論述に無駄な1行や無駄な文字の使用は許されません。徹底的に少ない情報で論じることが正義なのです。

そこから導き出される1つ目の問題点の解決策は、

すべて1行で表現する

です。「これ以上削ぎ落とす情報がない状態」を目指します。

この点に注意して先ほどの悪い例を修正すると、次のようになります。

明日の打ち合わせについてお願いがあります。10時から別の重要なアポがあることを失念しておりました。そのため、スタート時間を11時に変更していただくことは可能でしょうか。

だいぶ読みやすくなったのではないでしょうか。短い文章だとその効果がわかりにくいかもしれませんが、長い文章で「すべて1行で表現する」を徹底すると、読み手に与えるストレスは激減します。

情報を限界まで削ぎ落とせたら、次は「行間の距離」を考えます。ある1行とある1行の間は遠いのか、近いのか、という感覚です。すると、2つ目の問題点が見えてきます。

問題点②文章の「塊」がわかりにくいお疲れ様です。打ち合わせの開始時間変更について、問題ありません。明日の11時から、よろしくお願いします。ところで、先日もらった資料についても明日詳しく聞きたいのですが、12時までお時間をいただくことは可能でしょうか。お忙しいところ申し訳ありませんが、ご検討のほどお願いします。

これは悪い例です。一見すると、ただの箇条書きのように見えてしまいます。どこからどこまででワンメッセージなのか。どこから別の話に展開されるのか。一瞬では理解できません。

一方で、数学の論述はトピックごとに「塊」ができており、視覚的に読みやすくなっています

そこから導き出される2つ目の問題点の解決策は、

意図的に「塊」をつくる

です。意味が近いものはあえてくっつけ、遠いものはそのまま離しておく

この考え方を適用することで、先ほどの文章は次のようになります。

お疲れ様です。 打ち合わせの開始時間変更について、問題ありません。明日の11時から、よろしくお願いします。 ところで、先日もらった資料についても明日詳しく聞きたいのですが、12時までお時間をいただくことは可能でしょうか。 お忙しいところ申し訳ありませんが、ご検討のほどお願いします。

以上が、私の提唱する、数学的な記述法です。この記事も、ご紹介した技術を使って書かれています。

「数学的」はビジネス文章と相性抜群

私はこれまで文章術を学んだことはありません。にもかかわらず、文章が読みやすいとお褒めいただくことがこれまで何度もありました。10年以上も作家として活動できていることと無関係ではないでしょう。

「深沢さんは理系出身なのになぜ文章がお上手なのでしょうか?」

たくさんいただいたこの質問の中にきっと何か大切なことが隠れているはず。自分の文章を分析し、ついに私がたどり着いたのが、今回お話しした数学的な記述」でした。

「数学的な記述」はビジネス文章と極めて相性が良いと断言します。ビジネス文章には、心が動かされる詩的な表現は必要ありません。伝えるべきことをわかりやすく。これがビジネス文章に求められていることであり、「数学的な記述」が得意とするところです。

「数学的な記述」にとことん反した、「余計な情報が多くて何が言いたいのかわからないうえに、最初から最後まで連続した文章」は、間違いなくとても読みにくく、ビジネス文章として不適切でしょう。

そして、そのような文章を目にしたとき、あなたはきっとこう思うはずです。

「あまり賢そうな人には思えないな」

本人の気づかないところで評価を下げてしまう。これほどもったいないことはありません。今回ご紹介した方法を、ぜひ実践してみてください。

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