子どもを1人の人間として尊重することが自己肯定感を高める第1歩です(写真:tabiphoto/PIXTA)自己肯定感は、子どもが今後の長い人生を生きていく力、幸せになる力そのものです。どんな否定的な状況のなかでも、自己肯定感があれば、笑顔になれます。つらいことや悲しいことが起こったときにどう乗り越え、幸せを見つけていけるか、『何があっても「大丈夫。」と思える子に育つ 子どもの自己肯定感の教科書』より一部抜粋・再構成のうえ、子どもの自己肯定感を育てる方法をご紹介します。

子どももプライドをもって生きている

子どもは大人よりも両親や身の回りの大人に対して純粋です。そして、想像力がとても高いものです。

「純粋だなんて、小学校に入る前までの話ですよね」なんてことはありません。

お子さんが10歳を過ぎていようと、口答えするような年齢になろうと、まだまだ純粋で、自己肯定感が育まれる時期です。

好奇心や探究心もとても旺盛、柔軟性と適応力も、大人よりずっと高いです。だからこそ大人は「こうするべきだ」「こうしなくちゃいけない」などと決めつけず、その子のプライドを尊重し、その子自身の特性が発揮できるような見守り方をしてあげることが大切です。

お母さん、お父さんがほかの子と比べたり、決めつけたりすると自己肯定感は育まれないのです。

たとえば、お母さんに「あなたは国語が得意なのよね」といわれたとします。その通りならいいのですが、本当は違っていたとしても、ほかにもっと好きなことがあったとしても「そうなのかな」と子どもに思わせてしまう場合があります。

お母さんからすると、子どもをその気にさせるためにかけた言葉かもしれませんが、ここには、言葉でコントロールして子どもを操作する危険性が潜んでいます。

親の言葉で自分の本当の気もちにフタをしてしまう

子どもは大人が思うよりずっと、ちゃんと自分で考えています。それを言語化したり、うまく表現したりする力は大人に比べて未熟ですが、自分が望んでいることは、子ども自身がいちばんよくわかっています。そして、お母さんやお父さんが、自分に何を望んでいるかも。

大人より想像力や適応力が高いからこそ、子どもは無意識に親が望むような行動をとったり、自分の本当の気もちにフタをしてしまったりすることがあるのです。

お母さん、お父さんも自分が子どもだったころのことを思い出してみてください。すごく好きなことをやろうとして、その気になっていたのに、大人の行動や発言によって、その気もちにフタをしてしまったこと、ありませんでしたか。

親はそのときの感情や感覚で「なんでやらないの?」「どうしてできないの」「こっちのほうがいいんじゃない?」などといってしまいがちですが、子どものプライドは少しずつ傷ついています。だから親がいえばいうほど、やる気をなくしてしまうこともあります。

またママ友との会話のなかで、謙遜しているつもりで子どもの前でプライドを傷つけるようなことをいってしまう親御さんもいます。

「うちの子、まったく勉強ができなくて」「本当に何をやってもダメなのよ」などとわが子をつい下げてしまう。大人のコミュニケーション術といえばそれまでですが、もしも子どもがそれを聞いていたら、どう思うでしょうか。

子どもは「謙遜」などわかりません。「お母さん、そんなふうに思っていたんだ……」とそのまま受けとってしまうでしょう。

子どもも、プライドをもって生きている1人の人間です。ちゃんと子どもを尊重することが自己肯定感を高める第1歩です。

どんな言葉を使うかよりトーン、雰囲気が大事

声をかけるとき、どんな言葉を使うかよりも大切なのが、トーン・雰囲気です。

ポイントは、やさしい雰囲気で、明るい笑顔で、ゆっくり。

同じ「ありがとう」でも、きついいい方や早口でいわれるのと、やさしくゆっくりいわれるのとでは、受けとる側の気もちはまったく違います。それは、大人同士でもそうですよね。

どんなに子どもに承認の声かけをして、0.1ミリの成長に気づいてほめることができたとしても、声のトーンですべてが台無しになってしまうこともあります。

こころに余裕がないとき、忙しいとき、親自身になんらかのストレスがあるときなどは、どうしても声に表れてしまうことがあります。

そんなときは無理してがんばらなくてもいいのです。

具体的にほめるってどうしたらいいかわからない、子どものほんの少しの成長に気づくのが苦手、という親御さんは、まずはやさしく、笑顔で声をかけてみることからはじめてみましょう。

Q1.子どもをほめるときに「すごいね」などという言葉を使いがちですが、うれしそうにしないことが多いです。もっと具体的に伝えたほうがいいのでしょうか。(9歳女児の親)

子どもをほめるときに、「すごいね」「えらいね」「がんばったね」などといった言葉をかけているお母さん、お父さんはとても多いです。

「ほめるといい」ということはみなさんよくご存じなので、とにかく「すごい」「えらい」というほめ言葉を使って、なんとかお子さんをやる気にさせようと思いがちです。

「すごいね」の前に、何に対してすごいのか伝えてあげる

そもそも「すごい」「えらい」という言葉は非常に抽象的で、あいまいなものです。

何に対して「すごい」のかが伝わらないので、いわれた子どももピンと来ないのでしょう。

ここまでお話ししてきたように、具体的にプロセスに気づき、ほんの少しの成長を伝えましょう。

たとえば「昨日、宿題がんばってやってたよね。必死で机に向かってるの見て、すごいなーって思ったんだよね」といってあげる。

どんなささいなことでもかまいません。

漢字ドリルをやっていたら、「あれ、漢字の線が今日は濃くなって、読みやすくなったね。1文字1文字を、ていねいに書けるようになったんだね。すごいね」といった具合です。

要は「すごいね」の前に、何に対してすごいのか伝えてあげることです。

ただほめればいいと、「すごいね」「えらいね」などと言葉で伝えても、プロセスを見ていないことは、子どもにはちゃんと見抜かれています。「お母さん、適当にほめているな」と、わかっていますよ。

お母さん、お父さんがちゃんと見てくれていると実感できると、子どもの自己肯定感は上がっていきます。

親のボキャブラリーも試されるので、最初はちょっと大変かもしれませんが、大切なのは、子どもに「ちゃんと見ているよ」と伝えることです。

子どもは、ていねいに見てもらいたい生きものだということを認識しましょう。

もちろん忙しいときは、ざっとしか見られないこともありますし、本当はまったく見ていないこともありますよね(笑)。でもいいんです。ここは少しだけテクニックを使いましょう。

子どもにはナイショですが、「ていねいに見ている」ふうなことを伝えられれば十分です。仕事で疲れていても大丈夫。伝えるときだけ、少しだけやさしく、明るい笑顔で「このドリル、前回より濃く書けててすごいね」といってみる。

それだけで子どもはうれしそうにしますし、親子関係ももっとよくなるはずですよ。

そんなに大げさに考えなくても大丈夫です。具体的に伝えることを意識していくだけ。そして、いちばん大切にしてほしいのは、やさしいトーンと明るい雰囲気です。

必要なのは自己決定する力

子育てのゴールは子どもの自立です。そしてその子が自分の人生の主人公となって生きていけるようになることです。

そのために必要なのは、子どもを自分の思い通りに動かす言葉ではありません。子どもが自分で決めて行動できるようにうながす言葉です。

わかりやすい例では、「ごはんだから、もう片づけて」ではなく「そろそろごはんだけど、どうする?」というような問いかけです。

小さいお子さんで、まだ遊びたいようなら「まだ遊びたいんだね」と、その気もちをいったん受け止めます。そのうえで「じゃあ、終わったらおいで」と、自分で終わりの時間を決められるようにします。

こうした声かけは、子どもに自己決定する力をつけるだけでなく、何よりお母さん、お父さんが楽になります。なぜなら、子どもを急がせたり待たせたりする必要がなくなるからです。

忙しいし、急ぎたい大人の事情もよくわかりますが、「もう学校に行く時間だよ」「早く、早く!」などと時間で子どもを動かそうとすると、子どもが自己決定する機会を奪ってしまいます。

自立する子どもに育つ3つの言葉かけ

ここでは自己決定することができ、自立できるようになる3つの言葉かけを紹介します。

① 「あなたの考えていることを教えてもらってもいいかな」「あなたの意見を聞かせてもらってもいいかな」

あなたの考えていること、意見を聞かせてほしいとうながすことは、子どもに自分自身の意見を見いださせる機会や、選択肢を与える機会を養うことにつながります。

②「(使ってみたときのことを)考えてみようか」

文房具でもおもちゃでも、何かを買うときなどにかける言葉です。

たとえばペンを買おうとしたときに、「実際にこのペンで書いてみたときのことを考えてみて」などと伝えます。

そうすることで、子どもは自分の頭のなかで想像し、自己決定する力がついてくるのです。

③「どんなよいことと、よくないことがあるかな?」『何があっても「大丈夫。」と思える子に育つ 子どもの自己肯定感の教科書』(SBクリエイティブ)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

迷ったときの声かけです。小さいお子さんには難しいですが、10歳くらいになったら、こんな声かけをしてあげましょう。

大きなことでなくてもかまいません。買いものをするときでさえ、迷っているときに「もう、さっさと決めて」などといっていませんか?

子どもによいこと(メリット)とよくないこと(デメリット)を聞くなんて……と思われる親御さんもいるかもしれません。

迷ったときピンと来たほうを選ぶ、ということがあってもいいですが、子どものときからメリットとデメリットを考える習慣をつけてあげることは、自己決定できる力をつける後押しになるでしょう。

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