読んで考えさせられる本、3冊をご紹介します(写真:Fast&Slow / PIXTA)

東大生は、読書家が多いです。東大の図書館にはいつもたくさんの学生が詰め掛けています。1日に何冊も本を読んでいる人もザラですし、授業では本の内容について議論をしています。

ただ、彼ら・彼女たちの読書は、知識を得るための読書とは少し異なります。

多くの人は、知識や技能を身に付けるために、読書をしているのではないでしょうか。例えば「わかりやすい文章を作るための文章術」を読んで、「わかりやすい文章を作るための方法」を知ろうとする、という人が多いと思います。

問いを考えるために、読書する東大生たち

一方で、東大生は違った読み方をしています。一言で言うと、「考えるための読書」をしているのです。

「少子高齢化社会でどう生きていけばいいか」というテーマの本を読んでいるときに、「少子高齢化社会ではこう生きればいい!」という「答え」を探すのではなく、「少子高齢化社会で、どう生きていけばいいか」という、問い自体を考えるために読書をしているのです。

そのため、東大生が読む本は、「考えさせられるもの」「答えが明確ではないもの」が多いのです。

今回はそんな中から、東大生が「考えるために」読んでいる本を3冊ご紹介したいと思います。

1 現代語訳 学問のすすめ

『現代語訳 学問のすすめ』(ちくま新書)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

まずは『学問のすすめ』です。有名な本であり、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と言う一節は多くの人が知っている言葉だと思います。

この言葉は「人間はみんな平等だ」と言いたいのではありません。「人間は平等なはずなのに、世界は平等にはなっていない。それは、学問を修めているかどうかがカギになっている」という意味が込められています。

『学問のすすめ』なので、当然と言えば当然ですね。このように「学問とはそもそもどういうもので、どんな価値があるものなのか」ということについて語っている本なのです。

さて、東大生がこの本を読んでどんなことを考えるかといえば、「本当に福沢諭吉が言っていることは正しいのか」ということです。

「学問」=(現代で言えば)「勉強」ですが、勉強していれば上の立場になって、勉強しなければ下の身分になってしまう、というのは、現代においても適応可能な話なのでしょうか。

昔の作品から、現代を比較して考える

日本の受験システムはペーパーテスト一発で、平等性が一定担保されていると言われています。一方で、教育格差はますます広がっています。

「勉強できなければ下の身分になってしまう」と福沢諭吉は語っていますが、現在社会で考えると、そもそも学びたくても、十分に教育にお金を投資できない家庭環境で育ち、塾にも通えず、思うように勉強できない子どもたちも一定層いるのです。

このように、昔の作品を読んで、現在と比較してみたり、時代を超えて正しいと感じられる部分はどこなのかを考えいくことができる点で、『学問のすすめ』は「考える読書」にぴったりの1冊だと言えるでしょう。

2 東大合格はいくらで買えるか? 

『東大合格はいくらで買えるか?』(星海社新書)。(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。

先程とは打って変わって、今度は教育格差に対して真っ向から切り込んでいく1冊、『東大合格はいくらで買えるか?』(布施川天馬著)です。

東大に合格している人の多くが、十分に教育に投資をすることができる家庭で育った人たちです。

小学校低学年から子供を塾に入れて、中高一貫の名門私立中高に行かせて、予備校にもたくさん通わせて、その結果として東大に合格しています。

この本には、教育への課金金額について東大生やその親御さんにアンケートを取って調べたところ、その金額が「1380万円程度」であるという結果が出たと書かれています。

『学問のすすめ』の部分でも述べたように、ペーパーテスト一発で大学の合格が決まる日本の入試システムですが、1380万円を投資できる家庭は少ないため、どうしてもお金のある家庭が有利になってしまうわけです。

この本を読むと、「平等とは何か」ということについて考えさせられます。

最近「親ガチャ」という言葉も流行しています。子どもがどう育つかは、家庭環境や親御さんのリテラシー・収入など、運の要素が大きいと言われています。

世界は平等ではありません。平等性を担保しようとしても、完全にその問題が解消されることはありません。

東大生が東大に合格できたのは、努力の結果である部分はもちろん大きいのですが、運の要素も多分に含まれているわけです。

この本は、東大生に限らず、教育というどんな人でも触れるであろう物事について、深く考えるきっかけになると思います。

3 生成AIで世界はこう変わる 

『生成AIで世界はこう変わる』(SB新書)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

3冊目は、『生成AIで世界はこう変わる』(今井翔太著)です。ChatGPTをはじめ、最近は生成AIがどんどん進化しています。

まだまだ人間と比べると拙い部分もありますが、「この文章を要約してください」「ナポレオンについて、5歳の子供でもわかるように説明してください」「この公式を使った問題を3つ作ってください」など、人間ではすごく時間がかかるような文章・説明・問題・アイデアを、一瞬で生成してくれるのです。

また、文章だけでなく画像も生成してくれます。イラストや絵は、人間にしかできないものだと言われていましたが、それもAIがこなせるようになってしまったのです。

現実にそうなるのか?を考えながら読む

この本では生成AIで世界がどう変わるか、さまざまな予想が書いてあります。

そのどれもが論拠がしっかりしたものであり、どれも正しく思えます。しかし、それでも「本当にこんな未来が来るのだろうか?」と考えながら読むのが大事です。

すべてが正しいということはないでしょうし、まったく違う未来が来るかもしれません。答えがないからこそ、考えるのが楽しいのです。本書を読んで、みなさんには「どんな未来が来るのか」を考えてもらいたいと思います。

いかがでしたか? どの本も、答えが出るわけではないけれど、考えるきっかけになる本だったと思います。ぜひみなさんも、疑問を持ちながら、考えながら、読んでもらえればと思います。

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