仕事の効率を上げるには、優れたシステムが必須です。優れたシステムが構築できたら、次は、そのシステムが無意識でも作動するようにすることが肝心です。
仕事を前にして「さて、どうするんだったっけ?」と考えてしまうようでは、結局、その仕事が先送りされるか、忘れられるのが関の山だからです。
優れたシステムの持つ特徴とは、一度身についてしまうと「しない」ことにものすごい抵抗感を覚えること。こうしたシステムと習慣が、あなたの成長を支えてくれるのです。
具体的に、仕事のシステムとは次の「7つの原則」を備えていなければなりません。
原則1 「明確なビジョン」が存在する原則2 「一事に集中」する
原則3 「少しずつ頻繁に」行う
原則4 「リミット」を設ける
原則5 「クローズ・リスト」を使う
原則6 突発の仕事を減らす
原則7 コミットメントと興味を区別する
この原則で、仕事に対する充実度と成果、満足感は劇的に変わります。本記事では、このうち、『原則1「明確なビジョン」が存在する』と『原則6 突発の仕事を減らす』について紹介します。
ビジョン明確化の鍵は「何をしないか」
ビジョンの大切さについては、今さら言うまでもありません。個人でも、企業でも、ビジョンを持つことの大切さは語り尽くされています。
あなたも「ビジョンなら持っている」「ビジョン作りなら得意だ」とお思いかもしれません。
しかし、「ビジョンがある」と言っても、明確なものではなく、ビジョンが機能していないケースがあるので要注意です。
ビジョンが機能している状態とは、①「ありたい姿が明確」かつ②「ありたい姿の実現に向けて力を集中できている」という状態です。
例えば、「専門分野で市場のリーダーになる」というビジョンは明確だと思いますか? 市場の独占が本音なら、明確に「市場を支配する」をビジョンとすべきでしょう。
このように、対象を明確にするどころか、逆に煙にまいてしまうようなビジョンが世の中に氾濫しています。ありたい姿を明確にしたくないのなら、ビジョンなど持たない方がましというものです。
そして、ビジョンを明確にするための鍵は「何をしないか?」にかかっていると言っても過言ではありません。
ビジョンとは「何をするか」を規定するものですが、同時にそれは「何をしないか」をも規定します。
レストランでオーダーする時に、何を食べるかを決めることで「食べないもの」が決まってしまうように、1つの行動を選択すれば、選ばれなかったものを拒否することになります。
EXERCISE → 「しないこと」リストを作るここでは「何をしないか?」をはっきりさせてみます。
次の例を参考にして(「TO DOリスト」ではなく)「NOT TO DOリスト」を作ってみてください。
《NOT TO DOの例》● 午後11時から午前11時までは電話に出ない● ランチタイムには仕事をしない● 午後6時以降は仕事をしない● 進行中のプロジェクト以外の仕事には手を出さない● メールの処理に30分以上かけない● 計画した仕事が完了するまで他のことをしない突発の仕事を減らす
「今日やろう」と決めた仕事がその日に終わらないのはなぜでしょうか? 一番の原因は「邪魔が入ること」つまり、突発の仕事が予定に入り込むからです。
突発の仕事をゼロにすることはできませんが、その影響を最小限に抑えることは可能です。
突発の仕事の発生源は、クライアント、上司、部下、同僚(そして、あなた自身)と無限にあります。
そして、突発事象には、誰もが当たり前のように即座に対応します。これは〝衝動の脳〞が突発事象に反応するようになっているからです。
〝理性の脳〞を上手に使って、〝衝動の脳〞が突発の仕事に反応するのをコントロールし、計画への干渉を抑えることが、この原則を守る鍵になります。
「突発の仕事」を具体例でチェック
EXERCISE → 「突発の仕事」を見極める次のうち、突発の仕事はどれでしょうか?
【Q1】あなたは消防士。火災発生の連絡が入れば、いつでもすぐ出動する。【A1】突発の仕事ではありません。
火災はいつ起こるかわからないものですが、その非常事態に対応するのが消防署員の仕事です。これを突発の仕事と思うようなら、あなたは消防士とは言えません。
【Q2】上司があなたを呼び、新しいプロジェクトに取りかかるよう指示をした。これから数週間、とても忙しくなりそうだ。【A2】上司に呼ばれたのは突発事象です。しかし、与えられた仕事にどう対応するかは別の問題です。突発事象に反射的に反応しなければよいのです。
プロジェクトは数週間から数ヶ月かかるのが普通ですから、やみくもにとっつきやすい仕事から取り組むのではなく、まずは実行計画を作りましょう。
【Q3】友達からメールが届いた。面白いサイトを見つけたとのこと。早速、リンクをクリックし、そのサイトをチェックした。【A3】これが典型的な突発の仕事です。すぐに対応する必要はありません。
【Q4】クライアントから電話があった。緊急の依頼なので、すぐに対応しなければならない。【A4】なぜ、どのように緊急なのかを明らかにしてください。クライアントの要望を無条件で100%受け入れることが、よい仕事の仕方であるとは限りません。
クライアントへのすばやい対応が本当に必要なら、そのたびに対応するのではなく、適切なシステムを作ることです。
上司からの突然の依頼は?
【Q5】上司から突然、仕事を依頼された。今日中に終わらせなければならない。【A5】典型的な突発の仕事です。あなたの予定は完全に狂ってしまいます。もしも、こんなことが頻繁に起こるようなら、上司に抗議する必要があるでしょう。
【Q6】ここ数日、ある仕事にかかりきりだ。終わりが見えないので、その仕事は今日からアシスタントに任せることにした。【A6】突発的な仕事です。計画を立てずに仕事を進め、さらに、今になって部下に押しつけるという罪を重ねています。これこそが上司が犯す仕事上の〝犯罪行為〞です。
【Q7】オフィスのコーヒーが切れてしまった。来客があるので、急いで買いに行かなければならない。気が利かない社員ばかりだ。【A7】突発の仕事です。同情しますが社員個々人の気配りの問題ではありません。システムができていないことが、突発の仕事に翻弄される結果を生んでいるのです。
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