仕事が減らない、常に時間に追われている……。そのようなときは、仕事のシステムを見直してみませんか(写真:Graphs / PIXTA)「TO DOリストにやることを書き出す」「仕事に優先順位をつける」「スケジュール表を作る」……。仕事術やタイム・マネジメントの本を読んで、そこに紹介されている手法をやってみたものの、思いどおりの効果が得られなかったという経験はありませんか?HONDAで働いていた青木高夫氏はイギリス駐在時、HONDAでの仕事はもちろん、論文の投稿や講演など多忙な日々を過ごしていました。そのとき偶然、出会った本が、マーク・フォースター氏が書いたタイムマネジメントに関するベストセラー『Do It Tomorrow』です。青木氏は日本のビジネスパーソンにも役立つ内容だと確信し、2007年に邦訳版『マニャーナの法則』を刊行。「マニャーナ」とはスペイン語で「明日」の意味。マニャーナの法則とは「新しい仕事は明日やる」を基本にする仕事術のことです。同書をさらに増補・改訂し、このほど出版した『仕事に追われない仕事術マニャーナの法則・完全版』で青木氏は、改めて「“忙しいだけの仕事”を捨て、チャレンジングな“本当の仕事”に集中する」など仕事の本質に触れられたと紹介しています。同書から一部を抜粋、再編集してお届けします。

仕事の効率を上げるには、優れたシステムが必須です。優れたシステムが構築できたら、次は、そのシステムが無意識でも作動するようにすることが肝心です。

仕事を前にして「さて、どうするんだったっけ?」と考えてしまうようでは、結局、その仕事が先送りされるか、忘れられるのが関の山だからです。

優れたシステムの持つ特徴とは、一度身についてしまうと「しない」ことにものすごい抵抗感を覚えること。こうしたシステムと習慣が、あなたの成長を支えてくれるのです。

具体的に、仕事のシステムとは次の「7つの原則」を備えていなければなりません。

原則1 「明確なビジョン」が存在する
原則2 「一事に集中」する
原則3 「少しずつ頻繁に」行う
原則4 「リミット」を設ける
原則5 「クローズ・リスト」を使う
原則6 突発の仕事を減らす
原則7 コミットメントと興味を区別する

この原則で、仕事に対する充実度と成果、満足感は劇的に変わります。本記事では、このうち、『原則1「明確なビジョン」が存在する』と『原則6 突発の仕事を減らす』について紹介します。

ビジョン明確化の鍵は「何をしないか」

ビジョンの大切さについては、今さら言うまでもありません。個人でも、企業でも、ビジョンを持つことの大切さは語り尽くされています。

あなたも「ビジョンなら持っている」「ビジョン作りなら得意だ」とお思いかもしれません。

しかし、「ビジョンがある」と言っても、明確なものではなく、ビジョンが機能していないケースがあるので要注意です。

ビジョンが機能している状態とは、①「ありたい姿が明確」かつ②「ありたい姿の実現に向けて力を集中できている」という状態です。

例えば、「専門分野で市場のリーダーになる」というビジョンは明確だと思いますか? 市場の独占が本音なら、明確に「市場を支配する」をビジョンとすべきでしょう。

このように、対象を明確にするどころか、逆に煙にまいてしまうようなビジョンが世の中に氾濫しています。ありたい姿を明確にしたくないのなら、ビジョンなど持たない方がましというものです。

そして、ビジョンを明確にするための鍵は「何をしないか?」にかかっていると言っても過言ではありません。

ビジョンとは「何をするか」を規定するものですが、同時にそれは「何をしないか」をも規定します。

レストランでオーダーする時に、何を食べるかを決めることで「食べないもの」が決まってしまうように、1つの行動を選択すれば、選ばれなかったものを拒否することになります。

EXERCISE → 「しないこと」リストを作る

ここでは「何をしないか?」をはっきりさせてみます。

次の例を参考にして(「TO DOリスト」ではなく)「NOT TO DOリスト」を作ってみてください。

《NOT TO DOの例》● 午後11時から午前11時までは電話に出ない● ランチタイムには仕事をしない● 午後6時以降は仕事をしない● 進行中のプロジェクト以外の仕事には手を出さない● メールの処理に30分以上かけない● 計画した仕事が完了するまで他のことをしない

突発の仕事を減らす

「今日やろう」と決めた仕事がその日に終わらないのはなぜでしょうか? 一番の原因は「邪魔が入ること」つまり、突発の仕事が予定に入り込むからです。

突発の仕事をゼロにすることはできませんが、その影響を最小限に抑えることは可能です。

突発の仕事の発生源は、クライアント、上司、部下、同僚(そして、あなた自身)と無限にあります。

そして、突発事象には、誰もが当たり前のように即座に対応します。これは〝衝動の脳〞が突発事象に反応するようになっているからです。

〝理性の脳〞を上手に使って、〝衝動の脳〞が突発の仕事に反応するのをコントロールし、計画への干渉を抑えることが、この原則を守る鍵になります。

「突発の仕事」を具体例でチェック

EXERCISE → 「突発の仕事」を見極める

次のうち、突発の仕事はどれでしょうか?

【Q1】あなたは消防士。火災発生の連絡が入れば、いつでもすぐ出動する。

【A1】突発の仕事ではありません。

火災はいつ起こるかわからないものですが、その非常事態に対応するのが消防署員の仕事です。これを突発の仕事と思うようなら、あなたは消防士とは言えません。

【Q2】上司があなたを呼び、新しいプロジェクトに取りかかるよう指示をした。これから数週間、とても忙しくなりそうだ。

【A2】上司に呼ばれたのは突発事象です。しかし、与えられた仕事にどう対応するかは別の問題です。突発事象に反射的に反応しなければよいのです。

プロジェクトは数週間から数ヶ月かかるのが普通ですから、やみくもにとっつきやすい仕事から取り組むのではなく、まずは実行計画を作りましょう。

【Q3】友達からメールが届いた。面白いサイトを見つけたとのこと。早速、リンクをクリックし、そのサイトをチェックした。

【A3】これが典型的な突発の仕事です。すぐに対応する必要はありません。

【Q4】クライアントから電話があった。緊急の依頼なので、すぐに対応しなければならない。

【A4】なぜ、どのように緊急なのかを明らかにしてください。クライアントの要望を無条件で100%受け入れることが、よい仕事の仕方であるとは限りません。

クライアントへのすばやい対応が本当に必要なら、そのたびに対応するのではなく、適切なシステムを作ることです。

上司からの突然の依頼は?

【Q5】上司から突然、仕事を依頼された。今日中に終わらせなければならない。

【A5】典型的な突発の仕事です。あなたの予定は完全に狂ってしまいます。もしも、こんなことが頻繁に起こるようなら、上司に抗議する必要があるでしょう。

【Q6】ここ数日、ある仕事にかかりきりだ。終わりが見えないので、その仕事は今日からアシスタントに任せることにした。

【A6】突発的な仕事です。計画を立てずに仕事を進め、さらに、今になって部下に押しつけるという罪を重ねています。これこそが上司が犯す仕事上の〝犯罪行為〞です。

【Q7】オフィスのコーヒーが切れてしまった。来客があるので、急いで買いに行かなければならない。気が利かない社員ばかりだ。

【A7】突発の仕事です。同情しますが社員個々人の気配りの問題ではありません。システムができていないことが、突発の仕事に翻弄される結果を生んでいるのです。

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