選択の自由と、責任の関係
部下に責任感を意識させたいなら、カギとなるのが選択の有無だ。
『最後は言い方』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら)選択の自由がなければ責任感は生まれない。「イエス」と答えるしかない状況に置かれれば、人は服従するしかない。
服従は、人々に考えることをやめさせる。別の誰かが決めたルール、指示、行動内容に従うことしか求められないからだ。
思考や意思決定という厄介なプロセスから解放されるのだから、服従すればラクができる。おまけに責任まで回避できるときている。
会社で業務上のミスがあると、「言われたとおりにやっただけです」という返答がよく聞かれる。これはつまり、自分に責任はないと言っているのも同然だ。
ほかの誰かが決めたことに、ただ従ったにすぎないのだから。
相手を従わせるのに多くの言葉は要らない。
「これをやって」
「なぜですか?」
「やってほしいからだよ」
「わかりました」
このようなやりとりですむ。上司からすれば、部下への現状説明という厄介で時間のかかる仕事から解放される。しかし、詳しい説明がなければ脆弱な状態が生じる。
決断する人と実行する人を分けていた産業革命期では、服従が生まれるのは自然な成り行きだった。
しかし、いまの時代に求められているのは、連携から生まれる「責任感を持った取り組み」だ(連携をとることについてはこちらの記事も参照)。
責任感を持った人の言い方はどう変わるのか
責任感を持って取り組む人の言葉には、業務を遂行するという決意に加えて、一定条件を満たした場合や、一定の業務を行ったあとに意思決定や判断のモードに入るタイミングが含まれる。
次のような感じだ。
◆「プロジェクトの次の段階を始めようと思います。その次をどうするかを判断するための中断は10日後を予定しています」
◆「選択肢1で進める予定です。15日したら一度中断して振り返ります」
◆「次の生産ラインを稼働させます。1万ユニット生産したら、会議を開いてデータを検証します」
また、チームのメンバーに責任感が生まれたかどうかを確かめたければ、次のように問いかけるとよい。
◆「実行の計画はどうなっている?」
◆「実行業務に戻る予定はいつ?」
◆「次に中断して進捗を確認する前に、業務の遂行にどのくらいの時間をかける?」
◆「このプロジェクトでは、何をきっかけにして次の中断をとるつもりだ?」
◆「その仮説を実行に移すときはどうやって周知する?」
◆「この活動はいつまで有効か?」
「どう始めようか? 」と聞くことの効果「何」や「どう」という言い方を使った質問も効果的だ。
◆「どう始めようか?」
◆「素早く安く試すにはどうすればいい?」
このように尋ねると、尋ねられた側は障害や限界について心配するのをやめて、限られた時間とリソースで何ができるかと考えるようになる。
つまり、できないことからできることへフォーカスが移るのだ。
これについては、「何」を使うこともできる。次のような感じだ。
◆「もっとも小さい作業は何になる?」
◆「われわれに何ができる?」
◆「それは何に喩えられる?」
◆「最初の一歩となる活動は何だ?」
チームに実行への責任感を自覚させるには
いまから紹介するのは、計画、打ち合わせ、議論が十分になされ、いよいよ業務の遂行に取りかかるとなったときに効果的な言い方だ。
『米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら)チームのメンバー数人が、新製品のアイデアについて話し合っているとしよう。
彼らの考えでは、この会社のブランドイメージにぴったりだと思われる新たな製品市場があるのだという。
実際に何をするかの議論が行われているなか、リーダーであるあなたは、実行に対する責任感を彼らに自覚させたいと考えている。
そしてあなたがこう尋ねて会話が始まる。
「まずは何ができる?」
「そうですね、ウェブページをつくって写真をいくつか掲載し、注文が入るのを待つ、または、アンケートを実施してこういった製品に興味がある人の数を把握することができます」
「君が私の立場なら何をする?」
「ウェブページを作成します。そうすれば実際に注文が入るかどうか試せますし、今日中にネットにあげられますから」
「わかった。ではチームとしてすべきことは何だ?」
ここまで話が進めば、あとは彼らが引き受けるだろう。
責任感が関係する会話になると、可能なことの話から仮定の話になり、最終的にやるべきことを問う流れが自然に生まれる。
可能性、仮定、やるべきことのどの段階にチームがいるかを言葉を通じて明らかにし、彼らを次の段階へと導く。それがリーダーの務めだ。
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