推薦入試はどのように対策を練ればよいのでしょうか(写真: Fast&Slow / PIXTA)

4月から新年度に入り、中学や高校、大学など、子どもの受験を考える家庭も多いのではないでしょうか。

大学受験に関しては、従来ある一般入試のほか、総合型選抜、学校推薦型選抜など、入試方法が多様化しています。

特に推薦入試(総合型選抜・学校推薦型選抜)による大学入学者は拡大の一途を辿り、2022年度の文部科学省の調査によると、推薦入試による合格者は、50.3%。一般入試による合格者の49.7%を上回る水準になりました。

推薦入試に対する理解が広がらない

一方で、受験生の子どもを持つ親世代には、まだまだ推薦入試に対する理解が浸透していません。「一般入試で受験した子どもたちと比べると、努力せずに入っている」「大学に入学してから、学力が担保できないのでは」など、否定的な声も聞かれます。

従来の受験にはない、新しい選択肢として出てきた推薦入試。子どもの受験を支えるうえで、親も正しく理解する必要があるでしょう。

私自身2019年度入試で早稲田大学政治経済学部、国際教養学部、社会科学部、文化構想学部にAO入試(現:総合型選抜)で合格しました。そのときの経験を活かし、現在はオンラインで総合型選抜対策を行う学習塾を経営しています。

今回の記事では、これまでの生徒指導の経験を踏まえながら、推薦入試の中でも総合型選抜に絞り、対策法を紹介します。

推薦入試には、学校推薦型選抜(旧:指定校推薦入試)と総合型選抜(旧:AO入試)があります。

具体的に、それぞれの入試形式における、重視するポイントや違いは以下の通りです。

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ちなみに推薦入試は、欧米の大学入試を参考に導入されたと言われています。例えばアメリカの大学では、高校の成績や、SAT®またはACT(いずれも大学進学希望者のための標準学力テスト)に加え、高校時代にやってきたことを評価するために、エッセイや面接などを受験生に課し、合否を決めています。

学校推薦型選抜は、成績の高さや、高校内での競争など、ハードルの高さはあるものの、総合型選抜より受かりやすい側面があります。一方で総合型選抜は、試験対策をしっかり練らないと、落ちる可能性も十分にあります。

総合型選抜の受験を考えるうえで、最も重要なのが「学部選び」です。なぜなら、学部によって、出題形式ががらりと変わるからです。

学部によって出題形式が大きく異なる

面接で聞かれる質問の例を挙げると、早稲田大学政治経済学部では「シルバー民主主義について、あなたはどう思いますか?」などのように、政治学的な視点からの質問があり、受験生の意見・思考力が問われます。

一方、文化構想学部では「日本文化を世界に広めるためにはどうするか?あなたが興味を抱き、学生時代に追求してきた日本文化は?」といった、文化的な観点から、質問をされることがあります。

つまり、総合型選抜で最も問われるのが「本当にその学部で学びたいのかどうか?」ということです。

一般入試の合格者が大半を占める時代には、大学で学ぶ内容よりも、どの大学に行くのかが受験における最重要事項だった側面もあるでしょう。

そのため「志望する大学に受かること」だけを目的にしていた受験生は、合格後に燃え尽きてしまい、授業への意欲や学びに対する意欲が低下してしまうという問題も指摘され続けてきました。

その対策として、入学前にその学部で学ぶことに対する受験生の意欲を測れる総合型選抜が拡大した、と言えるのではないかと思います。

では、総合型選抜に合格するのはどのような人なのでしょうか。結論から言うと、「偏差値が高い人ではなく」、大学側から「この学生はこの大学の、この学部での研究や学習に向いている」と思われた人だと思います。

私が2000人以上の総合型選抜の合格者たちの志望理由書を分析してわかったのは、彼ら・彼女たちの共通点は、志望学部での学びに対して深く理解しているということです。

「なんとなく英語が話せるようになりたいから、国際教養学部に行きたい」とか、「スポーツが好きだから、スポーツ科学部を選ぶ」といった具体性のない漠然とした理由では、総合型選抜では合格は勝ち取れません。

なぜこの大学なのか。大学4年間で何を学びたいのか。どのような授業を受講したいのか。どの教授のもとで、どのような指導を受けたいのか、などの質問すべてに答えられるような、学部への深い理解が必要です。

総合型選抜で合格した生徒の志望理由書

実際に、総合型選抜で合格した生徒たちの志望理由書を見てみましょう。

1つ目は、上智大学の総合人間科学部教育学科に合格した生徒の志望理由書です。

「将来私は、日本の教育現場や学校が生徒や社会の国際化に対応し、多様な個性や背景が輝くことが可能な学校現場を構築するために、貴学を志望する。
 (中略)私は貴学入学後、前述した3つのアプローチを達成するために学習をする。具体的には○○教授の下でアジアを中心とした人の国際教育交流や多文化教育を学び、○○教授の下でより深く教育現場におけるAIの導入等を学習した上で、地理歴史の教員免許の取得を目指す。また、日本教育史やドイツの教育哲学等も学習をする。何よりも貴学では国際的な視野から日本の教育の在り方を学習することができ、更に多様な分野と連携しながら教育に向き合うことが可能な環境が整備されている」

2つ目は、同じく上智大学の文学部新聞学科に合格した生徒の志望理由書です。

「私はデジタル化が進む情報社会における、新たなマスメディアの役割について研究をしたい。入学した暁には、同じ志をもつ仲間と共にメディア論やデジタル・ジャーナリズム、時事問題について議論を重ねて学びながら、実践的なテレビ制作、資料調査にも積極的に取り組み、ゆくゆくは社会全体に問題解決のための議論を促し、その問題に苦しむ人々を助けられるような情報発信者となれるよう、全力で邁進する所存である」

同じ大学の志望理由にもかかわらず、学部によって学生に求めているものが、まったく違うことがうかがえます。合格した2人の志望書を見ると、大学での目標、どの教授の下で学びたいのか、などが明確に書かれています。

大学側が総合型選抜を導入し、急激に拡大・多様化した背景には、大学側の「学部での勉強や授業での学びに前向きな生徒を歓迎したい」という強い意図を感じます。

18歳時点の限定的な学力で測ってきた従来型の一般選抜では、志望大学に入学することがゴールになってしまっている生徒もいるでしょう。

先にも述べた通り、一般入試で合格したことに安堵し、燃え尽き症候群になってしまった人もいます。私自身、受験で燃え尽きてしまった人たちが、授業中に寝たり、ゲームをしたり、ひどい人は二日酔いで大学に来る、という光景を実際に目にしました。

一方で、早稲田大学の恩藏直人常任理事はAO入試(総合型選抜)で入った学生のGPA(成績平均値)は、全体的に高いと発言しており、東北大学の花輪公雄理事(当時)も、文部科学省の高大接続システム改革会議において、AO入学者の成績が高いというデータを報告しています。

総合型選抜合格者は、目的意識が高い

受験生や私たちのような教育や受験に携わる者も、推薦入試に対する理解を深めたうえで、どのような選択肢が子どもにとって望ましいのか。子ども自身の選択を尊重し、サポートしてあげることが大事になるでしょう。

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