「人口戦略会議」のシンポジウム=24日午後、東京都千代田区

民間組織「人口戦略会議」が24日に公表した報告書では、「消滅可能性自治体」が前回調査から約150自治体減った。だが、その要因の一つは外国人住民の増加によるもので、自治体の持続可能性の見通しは10年前と同様に厳しい。政府や自治体の対策は、地方の人口流出の抑制に重点が置かれたが、出生率の向上が急務であることを改めて浮き彫りにした。

沖縄はゼロ

「(人口減少が)経済にどのような影響を与えるか非常に憂慮している」。同日、東京都内で開かれた同会議主催のシンポジウムで、議長を務める三村明夫日本製鉄名誉会長は人口減対策の必要性を強調した。

報告書で「消滅可能性自治体」とされた744の自治体のうち、2割超の165自治体が東北地方に集中。一方、中四国地方は93自治体だが、前回調査で「消滅可能性都市」とされ、今回は脱却した自治体が多く、地域格差が浮かんだ。

また、今回の調査では人口流入が多いのに、出生率が低い自治体を「ブラックホール型」と分類。東京23区のうち、新宿や豊島、文京、台東、墨田など16区が含まれる。報告書は16区について、「(出生数向上などの)『自然減対策』が必要」と具体策に踏み込んだ。

地域発展に参画

10年前の前回調査で「消滅可能性」を指摘された各自治体はこの間、主に移住・定住を促進する分野で独自色の発揮に力を入れてきた。ただ、そうした取り組みは、人を呼び込むために過度な競争を引き起こした。

自治体にとっては、移住者の定住が課題になっている。地方の人口減少問題に詳しい高崎経済大の桜井常矢教授(地域づくり論)は「移住・定住策として人を移動する『人口』と見るのではなく、地域とのかかわりを持つ『人材』として捉え、今そこに暮らす人々の安全・安心を持続可能にするような関係構築への道筋を描く必要がある」と指摘する。

時間要する地方創生

政府が東京一極集中解消のために始めた地方創生政策も十分な成果が出ているとは言い難い。産業振興や企業誘致は人口を吸引するが、民間の協力が欠かせず、時間を要するからだ。

岸田文雄首相は同シンポジウムに「人口減少、少子化への取り組みをさらに強化する」とのビデオメッセージを寄せた。しかし、厚生労働省が2月に公表した令和5年の出生数(速報値)は75万8631人で過去最少に落ち込んでいる。

同会議の副議長を務める日本郵政社長の増田寛也元総務相は「人口がどのようなメカニズムで減少するかを示すことが重要だ」と報告書の意義を強調した。政府や自治体は、報告書があぶり出した地域ごとの事情を加味したより実効性のある対応を講じる必要がある。(大島悠亮)

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