工事が進む大阪・関西万博会場の大屋根リング=8日、大阪市此花区

2025年大阪・関西万博は開幕1年前にもかかわらず、盛り上がらないばかりか、インターネット上には今も延期・中止論を唱える声があふれている。自宅で実物さながらの高精細画像を気軽に楽しめる令和の時代、パビリオンが林立し多くの人たちでごった返す万博はもはや「オワコン」(終わったコンテンツ=時代遅れ)なのか-。

来場者目標2820万人を掲げる今回の万博は海外パビリオンの建設工事の遅れが深刻化し、建設費が当初の約2倍に膨れ上がるとネガティブ(否定的)な印象を持つ人が急増。さらに、能登半島地震の被災地復旧を優先し違約金を払ってでも万博を延期・中止すべきだという声が世論を席巻した。

また、価値観が多様化した上、大画面テレビや仮想現実(VR)機器が普及し、自宅に居ながらにして旅行先の雰囲気を堪能できるようになった。ネガティブニュースとの相乗効果で「わざわざ行列に並んで人混みにもまれるほどの価値はない」と敬遠する人が出てきたのだろう。

ただ、万博の熱気や空気感、会場を円形にぐるりと囲む大屋根(リング)の威容、そして最先端技術のすごさは、やはり会場でしか体感できないのではないか。

1970年大阪万博では、アポロ宇宙船が持ち帰ったアメリカ館の「月の石」が爆発的な人気を博したが、それだけではなかった。携帯電話の原型となった「ワイヤレステレホン」、ガソリンを使わない「電気自動車」、水平型エスカレーター「動く歩道」など未来の生活を予感させる次世代技術が来場者を驚かせ、ワクワクさせたのだ。

とはいえ、今回の万博は「空飛ぶクルマ」を除くとまだ〝目玉〟に乏しい。だからこそ、大阪府市が昨年末に全国6千人を対象にしたアンケートで万博に「行きたい」と考える人は33・8%にとどまった。

万博は開催国の威信を示すかつての「国威発揚型」から、現代社会の要請にこたえる「課題解決型」に変遷し全体的にコンパクト化しつつある。それでも来場者目標をクリアできなければ赤字に陥り、「失敗」の烙印(らくいん)を押されかねない。われわれの生活や産業の「未来社会」を示し、国内外の老若男女の興味をかき立てられるかが成功の鍵を握っている。(大阪経済部長 藤原章裕)

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