記者団の取材に応じる茂木敏充幹事長(中央)ら=28日午後、東京・永田町(酒井真大撮影)

自民党は28日投開票の衆院3補欠選挙で候補者擁立を見送り不戦敗となった選挙区も含めて全敗した。派閥の政治資金パーティー収入不記載事件が直撃した形で、岸田文雄首相(党総裁)の政権運営は厳しさを増す。野党は大型連休明けの国会で、自民の政治改革案が不十分だとして首相に攻勢をかける構えだ。

補選から一夜明けた29日、閣僚経験者は「保守王国の島根も崩された。岸田首相では次期衆院選を戦えない」と語った。

党内で直ちに「岸田降ろし」が始まる気配は薄いが、連休中に地元有権者から厳しい声を浴びた議員が「ポスト岸田」に向けた動きを加速させる可能性もある。

一部には茂木敏充幹事長や小渕優子選対委員長の引責辞任を求める声がある。若手は「党総裁も辞めるべきだという話につながる。誰も責任を取らないのはおかしい」と話した。

ただ、党幹部は「幹事長でなくなれば影響力が落ちるので、茂木氏は辞めないだろう」とみる。茂木氏は28日夜、記者団に「信頼、党勢の回復に全力で取り組みたい」と強調。小渕氏は「次の選挙に備えていきたい」と述べた。

連休明け国会は政治資金規正法改正などの政治改革が焦点だ。補選で全敗した自民案が集中砲火を浴びることは避けられない。まずは公明党との与党協議だが、パーティー券購入者の公開基準引き下げなどを求める公明に、自民は譲歩を余儀なくされる公算が大きい。

野党は、政党から党幹部に寄付され、使途公開の必要がない政策活動費や企業・団体献金の廃止など自民が消極的な内容を主張している。自民が政治改革に後ろ向きだと印象付ける狙いもある。補選で3勝した立憲民主党の泉健太代表は29日、自身のX(旧ツイッター)に「後半国会、驕(おご)らず、気を引き締めて戦う」と投稿した。

自民内では、首相が6月23日までの今国会会期中の衆院解散の可能性を残しつつ、解散せずに9月の総裁選で勝ち抜く方向に傾いているとの見方が強い。かじ取りを誤れば、どちらの道も閉ざされかねない。(沢田大典)

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