「夢みる」をタイトルにした学校が舞台の2本の映画が2月、全国で上映される。一つは、テストも通知表もない学校で児童生徒の成長の記録をたどった。もう一つはオーガニック給食を実現させた人々の思いを描いた。共に、教育の未来を考えさせるドキュメンタリーだ。(榎本哲也)

「夢みる小学校 完結編」より

◆<夢みる小学校 完結編> 子が自ら考え、決める学校

 映画「夢みる小学校 完結編」は、きのくに子どもの村学園(和歌山県橋本市)が運営する全国5つの学校の1つ、南アルプス子どもの村小中学校(山梨県南アルプス市)が舞台だ。  この学校は教科書を使った通常の学習より、「プロジェクト」という体験学習を重視。建築、農業、料理、劇など何をしたいか、どう取り組むか、子ども自らが考え、議論して決める。  例えば、蕎麦(そば)作り。材料の配合、生地を寝かせる時間など算数が必要になる。プロジェクトの過程には、基本教科の要素があふれている。教職員はあくまでサポートに徹する。

◆この子たち大丈夫?の心配に応えようと

前作に当たる映画「夢みる小学校」(2021年製作)は各地で自主上映され、一部観客から「この子たちの将来は大丈夫?」「高校や大学で授業についていけるの?」との懸念も出た。

きのくに子どもの村学園の堀真一郎理事長(左)とオオタヴィン監督

 オオタヴィン監督(63)は「特に、中高年の男性から言われた。そんな『心配おじさん』の声に応えようと思った」と振り返る。小学校卒業までを追った前作に登場した子どもたちの中学生時代の映像を追加し、「完結編」にした。  1月13日に都内であった上映会には、映画に登場する卒業生が登壇。教員を目指している大学2年の男子学生は「子どもの村では、子どもが自分で『問い』を立てて、やりたいことを見つけていた。卒業後、高校の勉強でも『ここが分からない』という『問い』を自分で立てられた。そこを友達や先生に聞けたので、勉強についていけないことはなかった」と話した。

◆<夢みる給食> 「オーガニック給食」実践する9自治体

「夢みる給食」より

 もう一つの映画「夢みる給食」は、農薬や化学肥料に頼らない農作物を使う「オーガニック給食」を実践する東京都武蔵野市、長野県松川町など全国9自治体が舞台。農家や栄養士、首長らも登場する。

「夢みる給食」より。東京都武蔵野市はセンター方式の給食でも、有機農産物や添加物を使わない調味料を取り入れている

 映画で取り上げられた岐阜県瑞穂市の清流みずほ認定こども園の給食では、有機野菜をたっぷり使った重ね煮が提供された。

◆「無農薬」と訴えるだけでなく

 加納大裕園長(61)は「食の安全があって、子どもの健康があり、その上に教育が成り立つ」と話す。最近の子どもの体温は低いと感じているといい「入園時に35度台の子どもが、入園し半年もすると、体温が上がるんです」。映画では医師が「ヨウ素やマグネシウムが豊富なオーガニック給食で、甲状腺機能が正常化し細胞が活性化したためでは」と解説していた。  地元産の有機米給食を全市立小中で実現した千葉県いすみ市の太田洋市長(75)は「ただ『無農薬』と訴えても反発を受ける。『将来を考えると、この農業しかないんだ』というストーリーを描いて、市民に理解を求めた」と話した。

映画「夢みる給食」でナレーションを務めた俳優の上野樹里さん(右)と話すオオタヴィン監督

 <「夢みる小学校 完結編」「夢みる給食」の主な上映予定>
 映画の公式ホームページはこちら。かっこ内の日付は舞台あいさつあり。時間など詳細は各館へ。
【東京】2月2日〜アップリンク吉祥寺(2月3、4日)
【群馬】「給食」のみ上映で2月17日〜前橋シネマハウス(17日)
【名古屋】2月10日〜シネマスコーレ(11日)
【長野】2月9日〜上田映劇(12日)
【富山】2月17日〜ほとり座(17日) 

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