「子育てをしている・していた」という性的マイノリティーが242人いたとする調査結果が15日、日本解放社会学会で発表された。国内にはまだ把握していないケースもあるとみられるが、調査した団体は、当事者が差別されず安心して生きていけるために、認知を広げていくことが大切だと訴えている。
性的マイノリティーの出産や子育てを支援している一般社団法人「こどまっぷ」が2024年4~6月にインターネット調査を実施。子育てをしている人や検討中の人、以前は望んでいたが諦めた人など当事者710人分の回答を、新ケ江(しんがえ)章友教授(大阪公立大)らによる研究チームが分析した。
その結果、「実際に子育てをしている・していた」という当事者は242人いた。調査対象者が同一ではないため、増減の比較はできないが、2021年の前回調査では141人だった。
子どもの数をたずねると、「1人」が64.8%、「2人」が30.6%だった。また、この3年間で、本人またはパートナーが第三者の精子提供などを受けて子を産んだという人は122人だった。
第三者の精子提供などを受けて子を持ったという人は、子どもの年齢が低い人ほど割合が高かった。子の年齢が高くなると、元夫との間の子などの割合が高い傾向にある。
分析を担当した風間孝教授(中京大)は、「女性同士のカップルでは、2010年代ごろからは、第三者から精子提供によって子どもを産むという方法が主流となってきているとみられる」と話す。その要因として新ケ江教授は、「10年くらいから、ソーシャルネットワークを通じて子どもを育てたい当事者たちがつながりはじめたことが影響している」と話した。
242人の居住地は、東京が32.2%、東京以外の関東が28.1%、近畿が17.8%だった。中部、九州、中国・四国地方の人も10人以上はいるが、風間教授は「収入の面など女性同士で生活し、子育てできる環境が都市部に偏っている可能性がある」と話す。
回答者のほとんどの人が「不安や悩みがある」と答えた。607人の回答のうち、内容として最も多いのは「法的制度の未整備」で7割以上、「社会の偏見や無知」も7割を超え、「子どもへのいじめ」は6割だった。
新ケ江教授は「子どもを産んでいる性的マイノリティーの人が増えている現実がある。その現実を見ようとせず、問題が出てきているのに対処できていないのが今の日本の状況だ」と危機感を示した。「国勢調査などで国による実態把握が必要だ」と話した。(寺田実穂子)
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