北海道旭川市で2021年3月、いじめを受けていた中学2年広瀬爽彩(さあや)さん(当時14)が公園で凍死体で見つかった問題で、市の再調査委員会(尾木直樹委員長)は1日、「自殺はいじめが原因」とする調査報告書の原本を今津寛介市長に手渡した。市の情報管理体制が整ったと判断した。

 再調査報告書の提出を巡っては今年6月、「黒塗り」を外した市教委の第三者委が作成した原本を思わせる「調査報告書」の画像がインターネット上で公開された。未完成稿と思われるが、再調査委は市の情報管理体制への不信感から同月30日、原本での答申を見送り、概要版(5ページ)の提出という異例の形をとった。

 調査報告書の流出は、いじめ調査対象者からの協力に多大な支障をきたすほか、関係者への誹謗(ひぼう)中傷など二次被害も懸念される。再調査委の厳しい指摘を受け、市は2カ月かけて新たな情報管理体制を構築。再調査委は「個人名が直接出ないような記号化」「漏洩(ろうえい)元を特定できる工夫」「報告書の管理の厳格化」がなされたことを評価した。

 市は今後、公表版を公開するが、どこまで黒塗りにするかなどは文部科学省のガイドラインに基づき、遺族側と調整して決めていくことになるという。

 記者会見で、尾木委員長は「今回の案件は全国どこでも起こりうるもの。私たちの活動が少しでもご遺族が前に進む一助になり、旭川はもとより、全国の子どもたちが未来に希望を描けるようないじめ対策につながることを願っています」と述べた。

 広瀬さんの遺体発見から約3年半になる。再調査委が「自殺はいじめが原因」としたことで、学校側の責任も明確になった。今後、市側の遺族への対応が問われるが、謝罪について今津市長は「しっかりとその内容を精査して今後のことを判断したい」と答えるにとどめた。

 一方、黒塗り外しの「調査報告書」をネットに公開した市民団体に対し、ネットからの削除要請をするなど、著しく業務に支障を来したことから、市教委は偽計業務妨害などでの刑事告訴を検討していた。

 これについて、今津市長は「関係機関に相談をしているところ。内容についてはこの場では差し控えさせていただく」と理解を求めた。

 再調査報告書は、諮問された「いじめの認定の再検証」「いじめと自死との関連性の再検証」「学校・市教委の対応についての再検証と再発防止策の提言」の3項目について答申。最大の焦点は市教委の第三者委が「不明」とした「いじめと自殺の因果関係」だった。(奈良山雅俊)

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