四国4県を代表する吹奏楽団が響きを競う第72回全日本吹奏楽コンクール四国支部大会(四国吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)が、23~25日に松山市民会館で開かれる。全国大会出場経験のある愛媛県内の2団体に、支部大会を前にした思いを聞いた。(戸田拓)

北条高校 エッセイつづって思いを共有

 55人以内の大人数編成で競われる高校A部門に部員26人で挑む北条高校(松山市)。合奏練習の前、岡﨑翔顧問(38)は吹奏楽部員らが日頃の思いを書いた文章を紹介した。

 「できないことが多く、『大丈夫か自分』となったとき、先輩が『どこで止まってるん?』と聞いてくれた。なんで僕が困っているのがわかるんだろう、と思った」

 北条高校は全国大会に過去5回出た実力校だ。今治市内などにも積極的に遠征して演奏を披露し、それを聴いて入学した生徒もいる。

 今回の自由曲「吹奏楽のためのエッセイⅡ」(福島弘和作曲)は、作者が「吹奏楽に対する思いを綴(つづ)った曲」(自作解説より)という。選曲を機に岡﨑教諭は、「自己表現が苦手な子らが内心を整理する助けになれば」と生徒らにも部活動をテーマに「エッセイ」を書かせた。

 それぞれの目標や、口に出せない悩みなどが寄せられ、楠岡美虹(みこ)部長(3年)は「お互いのことをより深く理解し、演奏にどう思いを乗せるかも見えてきた」と話す。

 北条高校は2026年度から、昼間定時制と通信制を併設し、多様な学びに対応する「北条清新高校」になる。「新しい学校でも吹奏楽部の存続は決定事項。今以上に魅力を伝える活動を目指したい」と岡﨑教諭。

 楠岡部長も「コンクールの結果で来てくれる新入生の数も変わる。後輩のためにも頑張りたい」と未来を見据えた。

愛媛交響吹奏楽団ウェーブ 波乗り越え大舞台へ

 万華鏡のように移り変わる和音。1拍ごとの確認を何度も繰り返し、同一パート内のわずかなずれも聞き逃さない。

 日曜の夜、練習会場に借りた松山市郊外の公民館で、指揮者の柿並陽子さんによる練習は熱を帯びた。

 職場・一般部門で、2年ぶり3度目の全国大会を目指す愛媛交響吹奏楽団ウェーブ。1993年に松山周辺の愛好家が作った金管アンサンブルが母体だ。編成は徐々に拡大し、97年にフル編成の吹奏楽団として今の名前に改称。昨年、結成30周年を迎えた。

 団員は県内外から集まり、卒業校も仕事も様々で、年代は大学生から60代後半まで幅広い。「輝かしく、豊かな、そして感動ある音楽作り」を目標に、地域の福祉施設や幼稚園などでもたびたび訪問演奏している。

 ふだんは東温市内の施設を本拠地としているが、夏場は空調が利かず、コンクール前のこの時期は外部の会場を渡り歩く。大型の楽器を運ぶトラックの手配もその都度必要で、何かと物入りだという。

 「一昨年は、コロナ禍で思うように演奏できなかった日々の欲求不満がモチベーションになり、全国出場に結びついた」と橘美帆団長(38)。だが昨年は県大会を突破できず、「ウェーブだけに波がある」と苦笑した。

 今年は自由曲で、吹奏楽の古典として名高いアルフレッド・リード「オセロ」を演奏する。金管のハイトーンや息の長い旋律など、奏者の力量が問われる劇的な音楽だ。6月の定期演奏会で取り上げて「しんどいがやりがいがある」と曲の魅力を再確認し、コンクールでも披露することになった。

 草創期からのメンバーで香川県丸亀市から参加しているコントラバスの近澤裕明さん(51)は「山あり谷あり、31年の間には存続の危機もあったが、団員の力で乗り越えてきた。みんなで是が非でも、全国大会に行きたい」と意気込む。

25日まで、松山市民会館で開催

 松山市民会館では吹奏楽コンクールとあわせて第43回全日本小学生バンドフェスティバル四国支部大会ステージパフォーマンス部門も開催される。両大会に愛媛県内からは計23団体が出場する。

 B部門を除くコンクール各部門の優秀団体は、10月19、20日に栃木・宇都宮市文化会館(中学生、高校)、10月26、27日に札幌コンサートホールKitara(大学、職場・一般)で行われる全国大会に出場する。

 小学生バンドフェスは23日にあり、優秀団体は10月26日にKitaraで開かれる全国大会に出場する。大会の詳細は四国吹奏楽連盟の公式サイト(https://www.ajba.or.jp/shikoku/main.htm)に掲載されている。

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