東京都千代田区立・麴町(こうじまち)中学校のダンス部の部活動をめぐり、学校側による事実上の「ヒップホップ禁止令」に生徒や保護者らが反発。区の教育委員会に抗議文書を提出する異例の事態になっている。

 保護者らへの取材によると、麴町中ダンス部はここ数年、毎年5月の体育祭と10月の文化祭「麴中祭」でヒップホップダンスを披露してきた。発表に向け、部員たちは週2回、ヒップホップ専門のコーチから指導を受けてきた。

 ところが昨年、学校側が「今年から体育祭でダンス部のヒップホップ発表の場を設けない」ことを決定。さらに今年3月には秋の麴中祭でもダンス部の発表はしないと決め、部員に通告したという。4月からは、活動内容を「創作ダンス」に変更することを学校側が決定し、コーチも創作ダンス専門に代わったという。

 ショックを受けた部員約30人は涙ながらに「ヒップホップを踊りたい」と訴えたが、決定は覆らなかったという。

 保護者らは学校に抗議。その結果、3年生が引退する1学期末の7月まで、週1回だけヒップホップの自主練習をすることが認められた。しかし、1学期終了後は自主練習も不可となり、退部する部員も出た。

 校長は取材に「ダンス部は運動部なので公式の中体連(日本中学校体育連盟)の大会を目指すべきだと思い、創作ダンスに変更した。ヒップホップは部活でなく、外でやってもいいと思う。方針を変更するつもりはない」などと答えた。

 保護者は、今回の学校側の一連の対応が、「(部活動は)生徒の自主的、自発的な参加により行われる」と定めた千代田区の「運動部活動ガイドライン」に違反すると指摘。千代田区教委に対し7月12日までの回答を求めている。

 ヒップホップは、創作ダンス、フォークダンスとともに「現代的なリズム表現のダンス」として新学習指導要領に基づく中学保健体育科の資料にも記されている。

 区教委は取材に対し、「当事者以外への回答は行っておりません」と回答した。

 「ヒップホップ・ラップの授業づくり」(明石書店)などの著書がある埼玉大学教育学部の磯田三津子教授は、「生徒の気持ちを無視し、教師の価値観を一方的に押しつけるのはよくない。生徒の学校離れがかえって進むのではないか」と指摘している。

 麴町中は、標準服の義務化をTPOに合わせた適切な服装を選ぶに変更したり、「全員担任制」など生徒の自主性を重んじる改革で知られたが、昨年度以降、こうした改革を見直す動きが相次いでいる。(編集委員・森下香枝)

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