不登校を経験した当事者の体験記や、学校に行かない子どもの居場所などをまとめた情報誌「ユニパスバンク~不登校編~」(A4判、80ページ)が完成し、香川県内の15カ所で無料配布されている。

 NPO法人「親の育ちサポートかがわ」が、個人や企業の寄付金を原資とした県の補助金などを活用して作成した。きっかけは、小児科医で同法人理事長の鈴木裕美さん(55)が、香川県三木町で開いているフリースペースでのできごとだった。

 「ユニパスバンク」は、鈴木さんがつくった造語です。この言葉には、ユニークな道を歩く全ての人に伝えたい思いが込められています。  記事の最後で、PDF版「ユニパスバンク~不登校編~」のリンク先をご紹介しています。

 2019年10月の開所直後からスペースに通う中学生の男子生徒がいた。小学校高学年から、家の中で過ごしていたため、居場所ができて本人も母親も喜んでいた。

 男子生徒が来年が受験というタイミングで、鈴木さんと母親は、高校進学について、調べてみた。しかし、「ネット上の情報では何がどう違うか分からない」と壁にぶつかった。

 週1日だけ登校と言っても、曜日が決められているとプレッシャーを感じて行けないという体験談も耳にした。

 20年秋、鈴木さんは自ら、定時制と通信制、就学支援金の対象か否かなど、高校を特徴ごとに分けて一覧化した冊子をつくることを決意。21年に「ハイスクールプロジェクト」として、定時制・通信制高校の情報をまとめた冊子を作って、県内の中学校に無料配布した。

 その後、親からは「子どもが不登校になって、どうしたらいいかわからない」といった声を聞くようになった。今度は、不登校や登校しぶりのある子どもと保護者のための情報誌を作ることを決めた。

学校以外の居場所を一覧化、体験記も

 「ユニパスバンク」は、県内各市町の教育委員会などが運営する教育支援センターや、平日はほぼ毎日開校している5校のフリースクール、19カ所のフリースペースなど、学校以外の居場所を一覧化。親の会も紹介する。

 不登校や登校しぶりのある子を診る県内の小児科医や精神科医計33人も地域別にまとめた。

 鈴木さんが「絶対に必要だと思った」という、不登校を経験した当事者の体験記も盛り込んだ。子の不登校を経験した父親や母親、小学6年生から中学3年生まで引きこもっていた会社員らの手記が収められている。

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 また、親が心配する課題として、体調不良▽学習の遅れ・進学▽ネット・ゲームの過剰使用▽体力低下などを挙げ、それらを専門にした医師らの談話も収録している。

「学校に行かなくてもできることはたくさんある」

 「ユニパスバンク」とは、鈴木さんが作った造語だ。不登校やひきこもりなど「ユニークな道(パス)」を生きる人々の「登録コミュニティー(バンク)」という意味がある。

 「本人たちは普通になりたい。でも普通でない自分にすごく悩む。そういう子たちに、『それはユニークであって誇るべきこと』と伝えたい」との思いからそう名付けた。

 「学校に行かなくてもできることはたくさんあると知って欲しい。この冊子を通して、少しでもわくわくしたり、ほっとしてもらえたらうれしい」と鈴木さん。

 冊子は、香川大医学部や高松市総合教育センターなどで計4千部配布している。親の育ちサポートかがわのホームページ(https://www.oyanosodachi-support.com/%E3%83%A6%E3%83%8B%E3%83%91%E3%82%B9%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%AF/)では、PDF版も公開中だ。

 学校以外の居場所の一覧や医師リストを差し替えれば他の都道府県版の冊子になる。今後は他県などでの冊子作成にも協力していくつもりだという。(内海日和)

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