文部科学省は、公立学校教員の給与制度をめぐって「定額働かせ放題とも言われる枠組みは残る」などと説明したNHKの報道を「一面的なもので大変遺憾」として、ホームページに抗議文を掲載した。現行の給与制度を「定額働かせ放題」と批判して抜本改正を求めていた現場の教員らの間では、同省が抗議したことに疑問の声が広がっている。

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 抗議文は17日付で、矢野和彦初等中等教育局長名で出されている。

 文科相の諮問機関である中央教育審議会の特別部会は13日に、公立学校教員の給与増や働き方改革などの具体策をまとめた「審議まとめ」を了承した。残業代を出さない代わりに一律に上乗せ支給している「教職調整額」を、現在の「基本給の4%」から「10%以上」に増やすことなどが柱となっている。

 NHKの報道はこの審議まとめに関するもの。13日の放送では、冒頭に「定額働かせ放題、どれだけ残業しても一定の上乗せ分しか支払われない教員の給与の枠組みはこのように呼ばれています」「定額働かせ放題ともいわれる枠組み自体は残ることになります」などと説明。審議まとめの内容や現役教員の反応、有識者のコメントなどを報じていた。

 この報道について文科省は抗議文で、教員の給与に関する現行の仕組みや経緯、背景について触れていないと指摘。さらに、「一部の方々が用いる 『“定額働かせ放題”の枠組み』と一面的に、教育界で定着しているかのように国民に誤解を与えるような表現で報じるもの」としたうえで、「なぜ教職調整額の仕組みを維持するとしたかという中央教育審議会における議論の内容に触れることのない一面的なもの」とも批判した。

 公立学校教員の給与制度は、残業代がつかず、実際の残業時間に関わらず上乗せ分が一律のため「定額働かせ放題」との批判も根強くある。残業代を出す仕組みの検討は、特別部会の大きなテーマだった。ただ、残業代を出す場合に必要な財源は年3千億円以上(国の予算ベースの試算)で、教職調整額を10%にする場合の年約1150億円(同)の3倍近くになる。管理職が教員の残業時間を正確に把握することが難しいとの指摘もあり、特別部会は残業代を出さない現在の枠組みを維持しつつ、教職調整額の比率を上げて教員の処遇を改善することを打ち出した。(山本知佳)

 NHK広報局は朝日新聞の取材に対し「指摘があったニュースの中では、『給特法』について、原則残業を命じないとされている点が明記されたことも伝えており、『一面的だ』という指摘はあたらないと考えています。また、これまでも法律の仕組みや背景を丁寧にお伝えしています。文部科学省は、今回の報道について、訂正などを求めていないと認識していますが、今後も正確でわかりやすく、公平かつ公正な報道に努めてまいります」としている。

文部科学省がNHKに出した抗議文(全文)

 去る5月13日(月)の貴放送協会の報道においては、冒頭「定額働かせ放題、どれだけ残業しても一定の上乗せ分しか支払われない教員の給与の枠組みはこのように呼ばれています」としたうえで、「定額働かせ放題ともいわれる枠組み自体は残ることになります」と報じられました。

 今回のこの貴放送協会の報道は、公立の義務教育学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)について、教師の職務等の特殊性に基づき給与等の勤務条件の特例を定めていることなど、なぜこのような制度になっているのか、現行の仕組みや経緯、背景について触れることなく、一部の方々が用いる 「“定額働かせ放題”の枠組み」と一面的に、教育界で定着しているかのように国民に誤解を与えるような表現で報じるものでした。

 また、様々な議論を経て中央教育審議会の「審議のまとめ」が取りまとめられたにもかかわらず、今回、なぜ教職調整額の仕組みを維持するとしたかという中央教育審議会における議論の内容に触れることのない一面的なものでもありました。

このような今回の貴放送協会の報道は大変遺憾です。報道に当たっては、国民の皆様の正確な理解につながるよう、丁寧な取材に基づき、多面的に、公平かつ公正に取り扱う報道をするように求めます。

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