子どもにとって必要なのは「自信」と「自分で考える力」だという(写真:mits/PIXTA)「将来どんな仕事をするのか」「誰とどんな人間関係を築くのか」「人生の楽しみをどのように作っていくか」。人生の大切なことには「正解」はなく、子どもが自分自身で考え、決断をしていくしかありません。その際に必要となる、「自信」と「自分で考える力」を身につけさせるために有効なのが「質問」です。ここでは、質問家として数々の企業のコンサルティングや小中高校での課外授業を請け負う、河田真誠氏の著書『君を一生ささえる「自信」をつくる本』より、子どもの「自信」と「自分で考える力」を育てていくうえで心がけたいことをお伝えします。

必要なのは「自信」と「自分で考える力」

私たちの人生は、選択と決断でできています。

「何を食べるか」「どんな洋服を着るか」「休みの日に何をして過ごすか」という生活の中での些細な選択から、「何を学ぶか」「どこで働くか」「誰と生きていくか」などといった、人生を左右する大きな決断まで、すべては何をどのように選ぶかで変わっていきます。

子どもの頃は、親や先生が決断の手助けをしてくれますが、大人になると、そんな手厚いサポートはありません。自分で考えて決断し、行動していくしかないのです。

その時に必要なのは、「自信」と「自分で考える力」です。

「自信」があれば、どんなことでも「やってみよう」というチャレンジにつながり、もし失敗をしたとしても、それを糧にしていくことができます。

「自分で考える力」があれば、他人に流されたりすることなく、「自分の望む人生」を選び、進んでいくことができます。

この2つは、自分らしく幸せな人生を歩んでいくうえで欠かせないものなのです。子どものうちから、これらを少しずつ育てていくことができると、自らの力で人生を切り開き、より良い未来をつくっていくことにつながります。

「人からもらえる自信」に依存しないこと

「自信」には、「人からもらう自信」と「自分で生み出す自信」の2つの種類があります。

たとえば、子どもがテストで100点を取って、親や先生、友達から「すごいね」「頑張ったね」と褒めてもらえて自信がついた、という場合。これは、他人から褒めてもらえたことで得られた自信、つまり周りの評価に依存した自信です。

もし、次のテストで30点しか取れず、誰からも褒めてもらえなくなったら、100点を取ったときに得られた自信は萎んで、なくなってしまうかもしれません。

一方、「自分で生み出す自信」は、他人からの評価や言動に左右されません。もちろん、褒めてもらえたら嬉しいという気持ちは誰にでもあると思いますが、「褒めてもらえること」ありきではないので、たとえ失敗したからといって、すぐに自信を失ったりはしません。

他人からの評価に依存せず、自分の中で自信を生み出していくことができれば、うまくいかないときでも「またがんばろう」「大丈夫」という気持ちにつながり、新しいチャレンジをしていけるのです。

本当の意味で「自信がある人」とは、どんな時でも自分を信じられる人のことです。そして、自分の中で自信を育てていくためには「自分の頭で考えること」と「自分のことをよく知っておくこと」が大切です。

しかし、いきなり「自分で考えなさい」「自分のことを知りなさい」と言われても、何をどうすればよいのかわかりません。

そうした時、役に立つのが「質問」です。

「質問」に対して「自分で考えること」が自信に

「昨日の晩ごはんは何だった?」と聞かれれば、その答えを考えるように、人は問いかけられると、自然とその答えを考えます。人生は、自分に「何を問いかけるか」でできているのです。

私は、企業研修でも小学校や中学校などの課外授業でも「相手に問いかけて、その人の考えや行動を引き出していくこと」を大事にしています。

小学生向けの授業では「自分のどんなところが好き?」「時間を忘れて夢中になれることは何?」など、さまざまな問いかけをしていき、子どもたちに自分の言葉で答えを考えてもらいます。

質問に対して自分で考えること、答えを言語化することで、自分の気持ちや考えが整理されます。そして、様々な視点で物事を考えられるようになります。

それが、「自信」になり、「思いやり」や「多様性への理解」、「強い心」、そして「考える力」を育むことにもつながっていくのです。

親や先生など大人の目線で考えると、「言うことを聞いてくれる子」「聞き分けのいい子」は手がかからず、良い子に思えるかもしれません。

しかし、親や先生、友達など、誰かの言う通りに生きていると、もし失敗したら、「あの人のせいで…」と他人を責める気持ちが生まれてしまいます。また、成功しても、「あの人の言う通りにしただけ」となり、どちらにしても、他人軸でしか生きられなくなってしまいます。

それでは、自分らしく幸せな人生を歩んでいくことは難しいでしょう。

逆に、自分で考え、決め、行動できるなら、成功すれば自信につながり、失敗をしても「どう乗り越えるか」を考えることができ、その経験もすべて自信につながっていきます。

自分の頭で考えることが、自分や周りを信じること、夢や目標をかなえていけるという自信につながっていくのです。

先ほども述べましたが、本当の自信とは「どんな時でも」「どんな自分でも」「自分を信じられる力」のことを言います。それは、「失敗をしない」ことではなくて、「失敗を乗り越えられる」「失敗を受け止められる」という感覚です。

そのためには、子どもが失敗をした時に怒ったり、責めたりするのではなく、「どうすれば、次はうまくいくかな?」といっしょに考えてあげてください。いい子にしている時や、成功した時だけでなく、どんな時にも愛情を持って、誰よりも信じてあげてほしいと思います。

子どもが「自分で考えること」を奪わない

子どもに何かを質問するとき、子どもがあなたの考えとは違う答えを言うことがあるかもしれません。そんな時、大切なのは、どんな答えでも「いいね!」と聞いてあげることです。

もし、あなたと考え方が違うのであれば、「どうして、こう思ったの?」と、理由をしっかりと聞いてあげてください。子どもには子どもなりの理由があるはずなので、それをまずはしっかりと受け止めることが大切です。

そして、あなたの意見は「私はこう思うよ」とひとつの意見として、伝えてみましょう。この関わり合いが、子どもの考える力や、自立心、そして、個性を育んでいきます。

質問の価値は、「自分の頭で考える」ということにあります。

大人が「それは違うよ」と否定してしまうと、子どもは自分で考えることをやめ、「大人が気に入る答えを探し、覚える」ようになります。

それでは、「考える力」は育まれず、いつまでも、誰かに正解を求めて生きていくことになってしまいます。「どんな答えなのか」ではなく、大人が「いいね!」と聞いてあげること自体に意味があります。

この世の中に絶対的に「正しいこと」はありません。なぜなら、「正しい」は、価値観や立場によってつくられていくからです。

たとえば、桃太郎の「鬼退治」は、村人から見ると「正しい」でしょう。しかし、鬼から見るとどうでしょうか? 鬼が宴会をしている時に、急に桃太郎たちが襲ってきて、金銀財宝を奪われるのです。鬼から見ると、桃太郎は「正しくない」となりますよね。

このように、どちらが「正しいか」を基準に話をすると、争いやケンカになります。なぜなら、「どちらも正しいから」です。

大人の価値観や正義を押しつけないこと

人はみんなゼロの状態で生まれてきます。なので、まずは、ベースとなる親の価値観を伝えることはとても大切です。

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そして、ある程度、物心がついてきたら、親から教わった価値観を基準に世の中を見て、自分の好みの価値観を自分で考えていくことができればいいのです。

大人が必ずしも正しいとも限りませんし、子どもには子どもの「正しい」があります。

頭ごなしに否定するのではなく、一度「いいね」と、子どもの「正しい」を受け止め、そのうえで「どうすれば、より良くなるか」「どうすれば、うまくいくか」という話をしていただきたいと思います。

その関わりが、お子さんの心の中で「自信」や「自分で考える力」を育てていくことにつながるはずです。

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