(写真:jessie/PIXTA)「一度きりの人生で、今という時間は二度とやってこないのに、なんで自分は時間を無駄に使ってしまうのか」と以前は悩んでいた編集者・柿内尚文(かきうち・たかふみ)氏が、時間の使い方について考えました。柿内氏は「人生には4つの時間しかない」と言います。「幸福の時間」はやりたいこと、喜びを得られることをして幸せを感じる時間。
「投資の時間」は目的のために努力している時間。
「役割の時間」はやらなければいけないことをしている時間。
「浪費の時間」は無意識に過ごしてしまうムダだと感じる時間です。書籍『このプリン、いま食べるか?ガマンするか?』を一部抜粋・再構成し、時間の使い方のコツをご紹介します。

やらなければいけないことを優先する人

幸せの先送りをしてしまう人の特徴のひとつが、「やりたいこと」よりも「やらなければいけないこと」を優先させてしまうことです。

会社員ならば、組織やチームの中で役割があり、上司や部下から頼まれる仕事もあります。家事だったら掃除や洗濯をしないといけないということもあります。

「やらなければいけないこと」に使わないといけない時間が、人生にはかなりあります。特に、まじめな人はその傾向が強いかもしれません。そんな時は、この考え方をぜひ身につけてください。

「やらなければいけないこと」を「やりたいこと」に変換する、という考え方です。

これができると、「やらなければいけないこと」が「幸福の時間」に変換されます。「やりたいこと」をやるのは幸せですよね。その時にヒントになるのがこの考え方です。

「何かをやって、その成果としてごほうびをもらうのではなく、やること自体がごほうびになるようにする」

いい大学に入りたいから受験勉強をがんばる。営業の成績を上げたいから仕事をがんばる。大会で優勝したいから練習をがんばる。

目的や目標を達成するために努力をする。そのために時間を使う。これは「投資の時間」です。

時にガマンをして、つらくても努力をしてきた経験がある人は多いと思います。僕自身もその一人です。

達成感や喜びは長持ちしない

しかし、ある時に気づきました。何かを達成すると、その時は達成感や喜びがあるけれど、そういう感情はあまり長持ちせず、「また次の目標を達成しないといけない」という気持ちが生まれてくることに。

仕事でベストセラーを出しても、また次もベストセラーを出さねばならない。これじゃあ、達成感や喜びは一瞬で、永遠にゴールのない追いかけっこをしているのではないか。

果たしてがんばって達成することは幸せなのか? そう気づいてしまって以降、考え方を大変換しました。

やっていることそのものが楽しい、うれしい、幸せだと思えることにできるだけ時間を割こうと決めたのです。

もちろん、だからといって「やらないといけないこと」を放棄したわけではありません。

「やらないといけないこと」をまずは「やって楽しい」に変換できないかを考えるようになったのです。

変換できないか考えるだけでも、時間に対するとらえ方が大きく変わりました。明らかに「幸福の時間」を増やすことができたのです。

『このプリン、いま食べるか?ガマンするか?』(柿内尚文)より。イラスト/竹内巧

目的の変換をすると時間の価値も変化する

「やらなければいけないこと」を「やりたいこと」に一気に変換するのは難しいかもしれませんが、徐々に変えていくことは可能です。

それは、毎日「小さな変化」をしていくことです。小さな変化を続けていくことを「時間複利の法則」と僕は呼んでいます。「複利」とは投資や預金などで使われる言葉で、投資で得た利子を元本に組み入れていく計算方法です。これにより利子がプラスされて投資のもとになる金額が増え、同じ利率で利益が出た場合、金額はどんどん大きくなります。

自分を変えていく時も同じことがいえます。

「元の自分+変化した自分」がベースになっていくので、どんどん変化の度合いが増えていきます。

たとえば、やりたいと思ってやっていた仕事が、だんだん義務感だけで行うものになってしまった場合。

今の仕事の中に「興味が持てる部分」「おもしろいと思えそうな部分」「好きな部分」を見つけて、1日10分だけでもその時間を「楽しい」「おもしろい」「興味が持てる」という意識で仕事に取り組んでみる。

そして、その10分を徐々に20分にしていく。もしくは10分を複数回実施する。10分のままでも大丈夫です。

このように、毎日の中に「小さな変化の時間」をつくり出し、その時間を積み重ねることで「大きな変化」につなげていきます。これが「時間複利の法則」です。

小さな変化をつくるためには、意識的に目的を変換することも有用です。
僕も目的を変換することで、小さな変化を起こして苦手を克服できたことがあります。

苦手だった会食が変わった

以前は、仕事での会食が苦手でした。理由は会食を「仕事の手段」と考えていたからです。

仕事のためにその人と近づきたい。そのために食事に行く。こういう考えでいた時は、会食は楽しめない時間でした。いくらおいしい料理を食べても、味をあまり感じませんでした。

そんな状況を変えたいと思い、ある時から会食の目的を変えました。会食は仕事の手段(投資の時間)ではなく、相手と仲良くなるための「幸福の時間」にすることにしたのです。

仲良くなる、おいしく食べる、楽しい時間にする。そう決断しました。

すると、少しずつではありますが、会食の時間価値が変化していきました。つらいな、大変だなと感じてばかりいたのが、だんだんと「この部分は楽しかった」「ここは勉強になった」と思えるようになり、そして今では楽しくて、幸福な時間に生まれ変わったのです。相手が変わったのではなく、自分が考えを変えただけで、時間の価値が大きく変化しました。

時間の目的を変える

『このプリン、いま食べるか? ガマンするか? 一生役立つ時間の法則』(飛鳥新社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

苦手だった「雑談」も、目的を変換することで克服しました。仕事の打ち合わせ前の雑談を、以前は「打ち合わせをスムーズに進めるためのアイスブレイク」と考えていて、「投資の時間」として設定していたのですが、当時は雑談が苦手でした。

でも、雑談を「相手と仲良くなるための時間」と目的を変えて以降は、雑談がグッと楽しく「幸福の時間」になりました。楽しくなったせいで、ついつい雑談が長くなってしまうくらいです。

時間の目的を変える。そして少しずつでいいから変化していく。これこそが、「役割の時間」や「投資の時間」を、「幸福の時間」に変化させる方法です。

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