国連教育科学文化機関(ユネスコ)の政府間委員会は2024年12月4日、日本が無形文化遺産に提案していた「伝統的酒造り」の登録を全会一致で決定した。日本の無形文化遺産登録は2022年の「風流(ふりゅう)踊」以来で、国内で計23件となった。

伝統的酒造り / 2024年登録

酒造りは古くから日本に根差してきた食文化のひとつ。500年以上前に原型が確立した「伝統的酒造り」のわざは、こうじの使用という共通の特色を持ちながら、日本各地においてそれぞれの気候風土に応じて発展し、日本酒、焼酎、泡盛、みりんなどの製造に受け継がれてきた。杜氏や蔵人が醸した酒は、儀式や祭礼行事など日本文化の中で不可欠な役割を果たしている。


日本酒の仕込み作業。タンクに仕込んだもろみをかき回す杜氏(とうじ)=福島県喜多方市の大和川酒造店(2015年撮影、時事)

風流踊り / 2022年登録

盆踊りや念仏踊りなど24都府県で伝承されてきた41件の民俗芸能。風流踊は華やかで人目を引く「風流」の精神を表し、笛や太鼓などの音曲とともににぎやかに踊る。歴史や風土を反映し、地域ごとに特色があるが、いずれも、災厄を払い、死者の供養や豊作祈願など安寧な暮らしを願う人々の祈りが込められている。


鷺舞神事(島根県津和野町、2023年7月撮影、時事)


鬼剣舞 岩手県北上市 (PIXTA)


秋田県・西馬音内盆踊り(PIXTA)

伝統建築工匠の技  木造建造物を受け継ぐための伝統技術 / 2020年登録

木・草・土など自然素材を建築空間に生かす知恵、周期的な保存修理を見据えた材料の採取や再利用、建築当初の部材とやむを得ず取り換える部材との調和や一体化を実現する高度な木工、屋根葺(ぶき)、左官、装飾、畳など、建築遺産とともに古代から途絶えることなく伝統を受け継ぎながら工夫を重ねて発展してきた伝統建築技術。

漆の木に傷をつけてにじみ出てくる樹液を採取する「漆(うるし)掻き」や、雁皮紙をわら灰汁や柿渋などにつけて仕込んだ箔打紙にはさんで金箔を打ち延ばす「縁付金箔製造」なども含む。


伝統技術の日本産漆生産・精製(時事、日本うるし掻き技術保存会提供)

来訪神 : 仮面・仮装の神々 /2018年登録

「男鹿のナマハゲ」(秋田県)や「悪石島のボゼ」(鹿児島県)など8県10行事で構成。神の使いに仮装した者が正月などの節目に家々を訪ね、怠け者を戒めたり、無病息災などを願ったりする。


男鹿のナマハゲ(時事)

山・鉾・屋台行事 / 2016年登録

「京都祇園祭の山鉾行事」「博多祇園山笠行事」など山車(だし)の巡行を中心に据えた18府県33件の祭りで構成。山車を依り代(よりしろ)にして神霊を迎え、地域の安泰や厄除け、豊作などを祈願する。


「博多祇園山笠」 撮影 : 草野 清一郎

和紙:日本の手漉(てすき)和紙技術 / 2014年登録

埼玉県小川町と東秩父村の「細川紙」、岐阜県美濃市の「本美濃紙」、島根県浜田市の「石州半紙」の3件。8世紀からの伝統的工芸技術で、原料に楮(こうぞ)を用いるなど古来の製法を守り続けている。

和食 : 日本人の伝統的な食文化 / 2013年登録

正月や田植、収穫祭のような年中行事と密接に関係し、自然を尊重する日本人の精神を体現した社会的慣習。新鮮で多様な食材や自然の美しさを表した盛り付け、優れた栄養バランスが特徴。

那智の田楽 和歌山県那智勝浦町 / 2012年登録

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の1つである熊野那智大社の例大祭「那智の火祭り」(毎年7月14日)で奉納される神事芸能。600年以上の歴史がある。

壬生の花田植(みぶのはなたうえ) 広島県北広島町 / 2011年登録

豊作を祈願して毎年6月の第1日曜日に行われる。美しい鞍をつけた飾り牛が代掻きをし、早乙女が横一列になって田植えをする。


写真提供 : 広島県

佐陀神能(さだしんのう) 島根県松江市鹿島町 / 2011年登録

佐太神社の御蓙替祭(毎年9月25日)で奉納される神事舞。全国各地の神楽に影響を与えたとされる。

結城紬(ゆうきつむぎ) 栃木県・茨城県 / 2010年登録

古くから養蚕業が盛んだった茨城県結城市、栃木県小山市を中心とする地域で製織されてきた絹織物。奈良時代には朝廷に納められていた。

組踊 沖縄県 / 2010年登録

琉球王国の時代、中国皇帝から派遣される使節を歓待するためなどに演じられた。国立劇場おきなわ(浦添市)を伝承・公開の拠点とする。

雅楽 / 2009年登録

日本古来の歌舞と中国大陸や朝鮮半島からもたらされた歌舞とを融合させた声楽曲。宮中を中心に伝承され、宮中の儀式、饗宴などで演奏される。

小千谷縮(おぢやちぢみ)・越後上布(えちごじょうふ) 新潟県魚沼地方 / 2009年登録

新潟県魚沼地方で作られている苧麻(ちょま)を原料とする上質な麻織物。江戸時代には幕府にも上納されていた。

奥能登のあえのこと 石川県珠洲市、輪島市など / 2009年登録

耕作前の2月は豊作を祈り、収穫後の12月は収穫に感謝する田の神をまつる祭祀。目に見えない田の神があたかもそこに実在するかのようにふるまう。

早池峰神楽(はやちねかぐら) 岩手県花巻市 / 2009年登録

早池峰山を霊山として信仰した山伏によって演じられたのが始まり。早池峰神社の8月1日の祭礼などに演じられる。


写真提供 : 岩手県観光協会

秋保の田植踊 宮城県仙台市 / 2009年登録

田植えの様子を振り付けた踊りでその年の豊作を願う。もとは小正月の行事だが、現在は社寺の祭礼などで踊られている。

大日堂舞楽(だいにちどうぶがく) 秋田県鹿角市 / 2009年登録

大日堂(大日霊貴神社)で正月2日に五穀豊穣・無病息災などを祈って奉納される舞楽。4集落の能衆(のうしゅう)と呼ばれる人々が世襲で舞を継承している。

題目立(だいもくたて) 奈良県奈良市 / 2009年登録

八柱神社の秋祭(10月12日)に奉納される。源平の武将を題材とした演目を、出演者が登場人物ごとに台詞を分担して、独特の抑揚をつけて語る。神社の祭祀組織に新たに加入する青年が中心となって演じる。

アイヌ古式舞踊 札幌市、千歳市など / 2009年登録

北海道に居住するアイヌによって伝承されてきた踊り。祭祀的性格の強い儀式舞踊のほか、娯楽的なものや即興舞踊などがある。

能楽 / 2008年登録

舞踊的所作でストーリーが展開する「能」と、せりふによる喜劇「狂言」の総称。後の文楽や歌舞伎に大きな影響を与えた。

人形浄瑠璃文楽 / 2008年登録

三味線音楽の義太夫節に合わせて展開する人形音楽劇。1体の人形を3人で操作し、写実的な動きで表現するのが特徴。


撮影 : 大沢 尚芳

歌舞伎 /2008年登録

江戸時代に興隆した大衆演劇。伝説、史実などを題材にした物語や、実際に起こった心中事件を脚色したものが、現代まで演じ続けられている。

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