書籍・文具小売店の数はこの30年で3分の1に減少した photoB/photo-ac

<動画視聴やSNSに時間を取られて、現役世代の読書実施率も過去30年で大きく減っている>

社会は時代と共に変わるが、1990年代以降インターネットが普及したことによる変化は大きい。通信、マスコミ、さらには財やサービスの購入の仕方も大きく変わった。電話・FAXが電子メール・SNSに、新聞・雑誌・テレビがウェブメディアに、小売店舗がネットショップに取って代わられている。

「時代の変化」と言えばそれまでだが、その一言では片付けられない事態も起きている。書店の減少だ。アマゾン等のネットショップの台頭により、書店の存立が脅かされて久しい。書店には文化の拠点の意味合いもあることから、経済産業省は街の書店を支援する方針を打ち出している。

総務省の『経済センサス』(以前は『事業所・企業統計調査』)を見ると、書籍・文具小売店の数は1991年では7万6915だったが、2021年では2万7628。この30年間で、およそ3分の1に減っている。人口10万人あたりの数にすると、62.0から22.0への減少。この数値を都道府県別に計算し、4段階で塗り分けた地図にすると<図1>のようになる。

書店がどれほどあるかのマップだが、30年間で色が薄くなっている。1991年では人口10万人あたり50を超える県が大半だったが、2021年では3段下の白色の県がほとんどだ。書店が全国的に淘汰されていることが、怖いくらい可視化されている。

市町村単位で見ると、書籍・文具小売店が1つもない自治体の数は埼玉県では2、千葉県では3、東京都では7、神奈川県では4となっている(2021年)。全県の数を合算すると、こうした「書店砂漠」の自治体はかなりの数になるだろう。

ネットショッピングの台頭によることは明らかだが、街の書店を保護すべく強硬策をとっている国もある。たとえばフランスでは、オンライン書店が送料無料にすることを禁じたり、電子書籍については定価販売を義務付けたりしている(反アマゾン法)。

だが、ネット書店に押されていることだけが原因とも言えない。書籍への需要そのものが減っていることも考えられる。<図2>は、国民の読書実施率の変化をグラフにしたものだ。各年齢層のドットをつないだ折れ線にしている。

働く年代で読書実施率は低下している。人手不足で労働時間が長くなっていることから、時間的なゆとりがなくなっているのかもしれない。インターネット上の動画やSNS等で、効率よく知識を得ようという「タイパ」志向が強まっていることも考えられる。本を手にしようという人が減れば、書店も減る。

反対に書店の減少が、読書離れを引き起こしてもいる。気軽に立ち寄れて、思いがけない本と出会い、実物を手に取って眺めることができる書店が減ったら、読書から遠のく人が増える。子どもは特にそうで、厚みのある活字の本を手に取り、自身の想像力を働かせたり深く考えたりしなくなることは、人間形成の上でも問題と言える。

書店の減少と国民の読書離れ。この2つが互いに影響しながら進行し、公共図書館を見ても、そこで働く職員(司書等)の非正規化がものすごい勢いで進むなど、文化の基盤が揺らいでいる。90年代以降の「失われた30年」において、経済的貧困と同時に「文化の貧困」が進んできたことにも注意しないといけない。

もっとも、ドライバー不足による物流逼迫でネットショッピングが機能しなくなったら、リアルの書店が復活する可能性もある。最近では、住民が店内に書棚を設け、自分が所有する本を売ったり貸したりする「シェア型」の書店も考案されている。これまでとは違った、新たなタイプの「知の拠点」が各地に増えることを期待したい。

<資料:総務省『事業所・企業統計調査』(1991年)、
    総務省『経済センサス(活動調査)』(2021年)、
    総務省『社会生活基本調査』(時系列統計)>

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