仕事のスキルは高くても整理ができないと……
仕事の整理が苦手な人は「苦手だから仕方ない」と思いがちです。自分の性格の問題とあきらめているのですが、これは大きな誤解です。
整理ができないのは性格ではなく、仕事の組み立て(システム)に問題があるのです。仕事のシステムを矯正すれば、問題は解決できるはずです。
そこで本記事では、自動車整備士2人の様子を比較しながら、どうすれば効率よく仕事ができるのか、「スキル」と「整理」の観点から説明してみましょう。
■ タイプ1 スキルは高く、仕事の整理ができない
ジョーは腕利きの自動車整備士。何でも一人でやる職人タイプで、整理整頓とは無縁です。
ジョーは点検や修理を頼まれると「いつでも持ってきて!」と引き受けてしまいます。
だから修理工場には、いつも10台以上の車が並んでいます。修理や点検待ちの車もあれば、作業中のものもあり、進み具合もまちまちです。
ジョーの仕事は、計画的とは言えません。故障の修理に飽きると、別の車の定期点検をするといった具合です。
「すぐ乗りたいから急いでくれ」と電話がかかると、その依頼主の車にすぐに取りかかって一気に仕上げます。これがジョーの日常です。
この店では、いつ作業が終わるのかがわかりません。当然「ウチのクルマはどうなっているの?」とお客さんはいら立っているし、簡単な修理なのに時間がかかるという悪評も避けられません。
時々、頼まれていた修理が全部終わらない車を「修理済み」として、お客さんに返してしまうこともあって、クレームへのお詫びもしょっちゅうです。
「いつでも持ってきて!」は顧客にとってうれしいサービスですが、長い間、車が使えないのならよいサービスとは言えません。お客さんが自分の車を取り返しに来ないのは「行ってもムダだ」とあきらめているからです。
もちろん、ジョーもこんな状況を何とかしたいとは思っていますが、現実は変えられません。それでも腕はいいし、修理代は手頃なので、そこそこ繁盛しています。
これは、自動車の整備士に限った話ではありません。あなたの周囲に同じような仕事ぶりの人はたくさんいるはずです。
管理能力があれば評価が高まる
■ タイプ2 スキルは普通で、仕事の整理ができる人
ジョーと同じ町にはミックという自動車整備士がいます。整備士としての腕はジョーより落ちますが、管理能力は抜群です。
修理の予約状況を確実に把握していて、いつでも修理日の指定が可能です。だいたいの修理日数も教えてくれるし、工場の修理能力を把握しているので、簡単なものは即日仕上げもできます。
さらに、ミックはクルマごとに修理項目のチェック・リストを作っています。作業モレはなく、着実な仕事ぶり。
取りかかってみたら、予想以上の難しい修理になってしまった場合は、できるところまでやって一度お客さんに連絡し、別の日の再予約を依頼しています。
ジョーとの大きな違いは、ミックが仕事に満足していることです。
お客さんからの信用もあり、修理代が多少高くてもオーダーが減ることはありません。毎日、帰宅時間も一定で、家族との時間も大切にできています。
ジョーの仕事ぶりは、ダメなシステムの典型です。
顧客の満足度という観点から見ても、仕事の効率が悪く、評判もよくありません。お客さんを怒らせることも多く、せっかくの修理の腕が高い評価につながりません。
「評価されるシステムの特徴」とは
「ダメなシステムの特徴」を挙げてみましょう。あなたに当てはまることがないか、考えてみてください。
特徴1 仕事に制限を設定していない特徴2 新しい仕事にすぐに反応する
特徴3 同時にいくつもの仕事をする
特徴4 1日にできる仕事量を把握していない
特徴5 毎日、1日分の仕事を終えられない
一方、ミックの仕事のシステムはまったく違います。修理の腕はジョーに一歩譲るものの、顧客からの評価は抜群です。
「評価されるシステムの特徴」を挙げてみましょう。
特徴1 仕事に制限が設定されている特徴2 集中力を散漫にしていない
特徴3 一事に集中している
特徴4 1日にできる仕事量を把握している
特徴5 毎日、1日分の仕事を終わらせている
修理の技術はジョーの方が高いのですが、ミックの方がジョーの店より早く修理が終わります。ミックは仕事の整理ができているので、結果的にたくさんの車の仕事が可能になるのです。
チェック・リストのおかげでミックの店では修理モレもありません。顧客の評価も高く、整備の腕を超えた収入を得られることになります。
2人の仕事ぶりの決定的な違いを一言で言えば「場当たり的かどうか」ということに尽きます。
ジョーの仕事はすべてが場当たり的です。「1日に何台修理するか」「今日、どんな修理をするのか」「このクルマの修理はいつ完了するか」。すべては状況次第です。
ミックの場合も、お客さんからの依頼がいつ来るかわからない点は同じですが、依頼が来たら、すぐに仕事を整理します。それで場当たり的な要素をなくしているのです。
不測の事態があっても、即座に仕事のシステムに組み込んで対応するようにしているということになります。
自分と仕事の間に距離を取る
では、ミックは、いつ来るかわからない仕事をどうやって整理しているのでしょうか。
答えは、ミックは「自分自身と仕事との間に距離を置いている」です。別の言い方をすれば、次々に来る仕事を入れる「バッファー・ゾーン」を設け、そこで一度整理しているのです。
ジョーには、このバッファー・ゾーンがありません。だからジョーは、仕事が来たらその都度、反応するしかないのです。
(出所:『仕事に追われない仕事術マニャーナの法則・完全版』)バッファー・ゾーンを持っているミックは、新しい仕事との距離を置くだけではなく、そこで仕事を整理しています。
距離を置くだけなら仕事を「先送り」してため込むだけになります。実は、この「距離を置くこと」そして、そこで「仕事の整理をすること」が優れたシステムの基本になるのです。
EXERCISE → 新しい仕事にすぐ反応しない夕方、今日1日を振り返り、発生した仕事にすぐ反応したことがなかったか、考えてみてください。
● パソコンにメール着信の表示が出たので、仕事をやめてメールを読んだ。● プロジェクトの仕事に手をつけず「忙しいだけの仕事」ばかりした。
● クライアントから電話で要望があり、仕事を中断して依頼に応えた。
●上司から仕事を命じられ、その日の予定をすべて変更した。
●「面白いウェブサイトがある」と聞いて、仕事を中断してそのサイトを見た。
● 忘れていた仕事を思い出したので、予定を変更し、それに取りかかった。
このようにすぐに仕事に反応するような状況はいろいろあります。思いつくものをすべて書き出してみてください。
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