「人生100年時代」をどう生きるか。中高生の皆さん、10代の今から考えてみませんか(写真:MAPS/PIXTA)100歳になった自分――。中高生の皆さんには想像もつかないかもしれませんが、日本では2007年生まれの子どもの半数が100歳以上生きるというデータもあります。多くの人が100年以上生きるようになると、人口構成はもちろん、社会や経済、働き方も変わっていくでしょう。「人生100年時代」をどう生きるか、10代の今から考えてみませんか。

ライフシフトって?

「人生100年時代」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。2016年に発売された『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)という本で提唱され、世の中に知られるようになりました。

『LIFE SHIFT』の著者は、英国の経営学者リンダ・グラットンさんと経済学者のアンドリュー・スコットさんです。

「人生100年時代」は、長寿大国と呼ばれる日本にもやってくると考えられています。厚生労働省によると、日本人の2022年の平均寿命は女性は87.09歳、男性は81.05歳。50年前の1972年は女性75.94歳、男性70.50歳でした。今のペースで伸び続けると、100歳を超える日も遠くなさそうです。

国も人生100年時代への対応を進めています。政府が立ち上げた「人生100年時代構想会議」では、リンダさんも議員を務めました。有識者たちが超長寿社会に国民が活力をもって生きられるための経済・社会システムに必要なことは何かを検討。会議の提案を受け、政府は学びたいときに学べるしくみづくりや高齢者の雇用の促進などに取り組んでいます。

これまでの日本では、若いうちに教育を受けて、60歳前後まで働き、引退して余生を過ごすという三つのステージを順番に過ごすのが一般的でした。しかし今後、長い老後を生き抜くには、より長く働くことが求められます。働く期間がただ長くなるだけでは、魅力的な人生とは言えないかもしれません。

リンダさんは著書で、これからはこの三つのステージが入れ替わったり、仕事を途中で変えたりする「マルチ(複数の)ステージの人生」が当たり前になると書いています。年齢に関わらず主体的に学び直して選択肢を増やし、さまざまな移行を経験する人生です。

その考え方を若者向けに書いたのが、『16歳からのライフ・シフト』です。高校生が自分の進路や将来の人生を考えるうえで役立つ部分をわかりやすくまとめ直しています。翔太と葵(1998年生まれ)、彼らの親世代の浩子(1971年生まれ)、祖父母世代の武夫(1945年生まれ)という3世代の人生を想定して例にあげ、人生設計のヒントを紹介しています。

著書では、マルチステージを幸せに生きるためには、アイデンティティー(自分らしさ)が必要と述べられています。また、お金や土地などの有形資産は大切ですが、家族や友人、知識、健康といったお金で買えない「無形資産」が極めて重要になるとも書かれています。

【マルチステージの人生の例】
・会社員でありながら、副業、兼業などで複数の仕事をする
・一定期間会社員として働いた後、新しいスキルを身に付けるため学び直し、フリーランスとして働く
・会社勤めをしながら、地域活動やボランティア活動にも打ち込む。そこで出会った人たちと起業する
・会社員として働いた後、自分磨きのために留学や旅をしたり、子育てや介護を中心にした時期をもうけたりして、再度会社員として働く

リンダ・グラットンさんに聞く「学びへの姿勢」

「人生100年時代」というキーワードを生んだリンダさんは、ロンドン・ビジネススクールの教授としても活躍しています。子どものころから好奇心に満ちあふれていたといい、年齢を重ねても学ぶことを楽しんでいます。

「新しいことを学ぶチャンスは毎日どこにでもあふれています。例えば、私はディナーに出かけた時でも、隣に座っている人からたくさんのことを学んだりします。一日のどの瞬間にも、チャンスは転がっていますよ」

前向きな姿勢はどこからくるのでしょうか。リンダさんは好奇心は自分の考え次第で高められると考えています。

「例えば、毎日何か一つ難しいことに挑戦しようと口に出してみるとか、何か新しいことを学びたいと言ってみるとか。運動したら筋肉がつくように、好奇心も意識次第で増強できると思います」

人生を豊かにしてくれる仲間を大切に

『16歳からのライフ・シフト』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら)

若いころから旅行が趣味だったといい、60代後半の今も旅行を楽しんでいます。取材した日も、イタリア南部のポンペイから前日に戻ったばかりでした。訪れた場所でも学ぶことを忘れず、「学んだことを早速書いておきます」と話していました。

そんなリンダさんの日課は毎朝コーヒーを飲みながら前の日にどんな学びがあったかを夫と話し合うことです。

「大切な人と話すのは幸せな時間です。みなさんも人生を豊かにしてくれる仲間を大切にしてください」

(朝日中高生新聞1月28日号掲載)

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