性教育について学び合う「全国性教育研究大会」が3、4の両日、宇都宮市峰町の宇都宮大学であった。性暴力は10代の被害が目立ち、早い段階から、違法性や助けを求める方法を教えることが重要だ。大会では、県内で実施されている授業や性暴力対策の発表があり、参加した学者や教員、警察官らが情報を共有し、意見を出し合った。

 全国性教育研究団体連絡協議会(全性連)の主催。1972年から全国各地で開かれており、今回で52回目。栃木県での開催は2回目で、2日間で約250人が参加した。

 3日は、日本女子体育大学の横嶋剛教授(保健科教育)が、学習指導要領にある「性に関する指導」をテーマに基調講演し、武蔵大学の林雄亮教授(計量社会学)が、2023年度実施の「青少年の性行動全国調査」の結果(速報)を報告した。

 発達段階別の教育について考える分科会もあり、小学校のグループでは、栃木県さくら市立氏家小学校の佐久間史穂教諭(24)が、4年生に実施した思春期の体の変化に悩む子どもを想定した授業について報告した。

 授業は、変声や精通について友人から相談を受けたらどう答えるか問うものだった。学習前は具体的な言葉で励ませなかった子が、授業後に習得した言葉を使うようになった経過を紹介した。

 2日目は、「性被害、性暴力の防止教育を考える」という分科会。県人権男女共同参画課の斎藤史子主幹と、県警人身安全少年課の癸生川(けぶかわ)幸子課長補佐が、県の施策や性暴力の被害状況などについて説明した。

 県警が23年に把握した子どもの福祉を害する犯罪(福祉犯)の被害者は67人。増加傾向にあるSNSに起因した被害者は19人で、18人が少女だった。県警は、迅速な相談を促すため、学校と連携してSNSの怖さを教える「教室」や、商業施設で開設する「相談室」の周知を呼びかけた。

 一方、県はSNSのトラブルに加え、デートDV(親密な人への暴力)への教育にも力を入れていると強調。相談経験が豊富な民間団体のスタッフが高校などで講演する「セミナー」などを開き、23年度は約4千人の生徒や教職員が受講したと明かした。24年度も12校から要望を受けているという。

 県は、15年度に設けた「とちぎ性暴力被害者サポートセンター(028・678・8200)」の案内カードを中学2年生と高校1年生に配る施策や、実績についても言及した。被害者の半数は10代以下で、20代を加えると7割になるという。

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 子どもが性的な被害を明かしたら、大人はどう聴くべきか――。公認心理師でもある県警人身安全少年課の癸生川課長補佐は、発表でコツを紹介した。

 まず、驚かないこと。聴く側がびっくりすると、先を言えなくなる恐れがあるため、慌てて詳細を聴き出そうとせず、自身の言葉でゆっくり語らせるのが良いという。

 言葉につまった際、想定して「触られたの?」などと先回りして聴くのも厳禁。子どもが「間違っている」と言えず、「うん」と言ってしまうことがあるのだという。記憶があやふやになるリスクがあるため、「それから?」といった言葉で聴き出す「それから質問」が効果的だという。

 また、「『怖かったね』などとカウンセリングのように聴くことも注意が必要」と指摘した。共感してほしくて被害を誇張する子どもがいるためだという。課長補佐は「事件と感じたら淡々と聴き、すぐ警察に連絡してほしい」と求め、「先生方は、常に性被害は存在するという認識で、『あなたの体はあなただけのもの』という事前教育をしてほしい」と呼びかけた。(杉原里美)

子どもから性被害を打ち明けられた際の聴き方

・驚かないようにする

・誘導や暗示をしない

・子どもの言葉で語らせる

・「それから?」などと質問する

・カウンセリングのように感じられないよう、淡々と聴く

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