(26日、第106回全国高校野球選手権西東京大準決勝 早稲田実14―3日大二=五回コールド)

 決勝に勝ち進んでもらい、演奏のバトンを後輩に必ず渡す。そして、自分も甲子園でもう一度演奏したい――。そんな願いを込め、早稲田実の卒業生で元吹奏楽部副部長の佐藤優海香さん(25)は26日の準決勝、神宮球場に高らかにホルンの音を響かせた。

 もともと、野球には全く興味がなかった。でも、高1の夏にがらっと変わった。

 2015年夏、同級生の清宮幸太郎(現・日本ハム)が主軸として活躍。早稲田実は西東京大会決勝に進み、佐藤さんも吹奏楽部のメンバーとして応援に駆けつけた。

 東海大菅生との決勝は激闘になった。七回まで5点差で負けていたが、八回二死満塁で清宮が右前適時打を放つなど一挙8得点。試合をひっくり返し、甲子園出場を果たした。

 同級生なのに、すごい。野球はいつ、どんな展開になるかわからない。醍醐(だいご)味を知り、野球にはまった。

 その後の甲子園での演奏は特別だった。アルプススタンドの急な階段、駆けつけたたくさんのOBたち、スタンドの「何とも言えない雰囲気」……。全部覚えているのに、演奏のことはあまり記憶にない。とにかく、選手に届くよう必死で吹いていた。

 26日の西東京大会準決勝。現役の吹奏楽部員が合宿で来られず、OBに声がかかった。佐藤さんは仕事を休み、演奏に駆けつけた。

 10曲ほどある応援曲は、全て暗記していた。この日勝って28日の決勝に進めば、合宿から戻ってきた現役部員がスタンドで応援できる。日差しが照りつける中、OBたちは「後輩に演奏をつなげよう」と全力で吹いた。

 応援は選手たちに届き、試合は早稲田実ペースで進んだ。点が入るたび、スタンドは大きくわき、佐藤さんも笑顔を見せた。「やっぱり野球っておもしろい」

 願いがかない、応援演奏のバトンは次につながれた。決勝は現役部員の舞台。でも、甲子園に進めば、OBとしてアルプスの舞台に立てる。また、仕事の休みをとって、必ず駆けつけるつもりだ。=神宮(石川瀬里)

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