教員による児童生徒へのわいせつ事件の公判を巡り、横浜市教育委員会が傍聴に多数の職員を動員していた問題で、市教委は26日、3人の弁護士による検証結果の報告書を発表した。報告書は、動員について、憲法が定めた「公開裁判の原則」の趣旨に反しており、違法で「許されない」とした。

 問題となったのは教員が被告となった4事件の公判。市教委はこれまで動員をかけた理由について、いずれも「被害者側から要請があったため」と説明していた。しかし、報告書は1件については市教委の説明を認めたが、残りの3件は「(被害者側の)意向確認が十分にされたとは言えない」と指摘。その結果、児童相談所の職員が傍聴できない事案もあったと明らかにした上で、「動員したことで深刻な弊害が生じた」と批判した。

 報告書によると、動員は2019年5月、当時の教育長の了承のもとで始まった。同年度と23~24年度に横浜地裁で審理された4事件の計11回の公判の傍聴に、職員のべ414人が動員された。

 市教委は被害者の特定防止やプライバシー保護を目的としていた。ただ、公判では4事件すべてで被害者名と被告人名は非公開とされていた。報告書は市教委が公判後に動員の効果を検証していなかったことなどから、市教委の目的について「疑問がある」とした。一方で、「身内の擁護や不祥事の隠蔽(いんぺい)が目的ではない」とした。

 また報告書は、職員の大量の動員が「教育委員会として行うべき職務の範囲を逸脱している」と認定。地方教育行政の組織及び運営に関する法律に反し、違法だと指摘した。

 検証は6月中旬~7月下旬にかけて、動員された職員や公判に立ち会った弁護士、市教委に書面で調査したほか、教育長らにヒアリングしてまとめた。(堅島敢太郎)

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