横浜市教育委員会から委託を受けた弁護士チームは25日、過去10年間に市立学校で起きた児童・生徒の自殺事案を点検した結果を公表した。学校内の「基本調査」にとどまっていた事案のうち、3人がいじめが原因と疑われ、その1人はいじめ防止対策推進法が定める「重大事態」として現時点でも調査が可能との見解を示した。

◆1人は「重大事態」として今も調査可能

 横浜市では今年3月、4年前に命を絶った市立中2年(当時)の女子生徒を巡り、学校側がいじめを認知せず、当初は基本調査だけで終えていたことが発覚。過去10年間に自殺した41人のうち、重大事態調査に移行したこの女性生徒ら3人を除く38人が基本調査だけだったことから、市教委は、当時の調査を点検するよう外部の弁護士10人に依頼していた。

点検結果について会見で発表する弁護士チーム=25日、横浜市役所で

 いじめによる自殺の疑いがある3人のうち、2人の事案は、遺族の協力を得る困難さなどを理由に、重大事態に認定しても全容解明や再発防止策の策定につなげられないと結論付けた。  3人の他にも、1人はいじめの存在が疑われたが、自殺との因果関係がはっきりしないとした。

◆「学校側の説明の仕方によって遺族の選択が狭められ…」

 当時、3人が重大事態調査に移行しなかった理由としては、内容の公表が前提となるため、子どもが亡くなった事実自体を周りに知らせたくない遺族の意向も働いたと指摘した。点検に携わった栗山博史弁護士は「(学校側の)説明の仕方によって遺族の選択が狭められ、調査を希望しない方向に行ってしまうことはあると思う。心情に配慮しながら、どういう調査ができるか、しっかり説明して可能な範囲でできることはある」と述べた。  市教委の住田剛一人権健康教育部長は「重大事態調査は公表ありきで、遺族が望まなかったなら、その意向を無視できなかったと思う。今ならもう少しできることがあった」と説明した。一方、当時の判断は「不適切だったとは言えない」と強調した。(神谷円香)    ◇ ◆相談窓口
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