奈良教育大付属小(奈良市)に在籍していた女性教諭3人が今春、奈良市立小に出向を命じられたことは労働契約法に反するとして、同小を所管する奈良国立大学機構を相手取り、出向命令が無効であることの確認を求めて12日、奈良地裁に提訴した。

 奈良教育大付属小を巡っては、指導内容が学習指導要領に沿っていないとする報告書を大学が今年1月に公表。教員の異動がなく、人事が固定化されてきたことが一因として、教員を県内の公立小学校などに順次出向させる方針を示した。保護者たちが強行的な出向に反対する署名を始め、動きは全国に広がったが、今春3人が出向となっていた。

 訴状によると、3人はそれぞれ市内の別の市立小に出向を命じられたが、当人の同意がない上、労働条件の規定が整っておらず、法的な裏付けを欠くと主張。教員の入れ替えを求める文部科学省の意向が背景にあり、教育基本法にも反するとして、違法性を指摘している。

 大学は、年齢や教科のバランスを考慮して出向者を選ぶとしていたが、実際に出向となったのは年長の教員3人。そのうち2人は研究教科が図工で、付属小から図工を専門とする正規教員がいなくなったという。

 1人は校長・教頭を補佐する主幹教諭の立場で出向するはずだったが、出向先にポストがないため、一教諭として勤務。もう1人は「経験を生かし広めてほしい」と指示されたが、専門である図工の授業を受け持てていないという。

 教諭らは12日、奈良市内で会見を開き、「(県教委から派遣された)前校長と衝突し、実質的な処分として出向を命じられたと思う」「大学は今後も出向を続ける方針で、提訴により動きを食い止めたいと思った」などと語った。

 奈良国立大学機構は取材に対し、「訴状を確認していないのでコメントできない」としている。(机美鈴)

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