兵庫県相生(あいおい)市の当時中学2年の男子生徒が昨年3月に自死したことを受け、原因などを調査してきた第三者委員会が8日、報告書を公表した。同級生らから殴る蹴るの暴力を受けるなど、36件のいじめを受けたと認定した。「生徒が自死に至ったのは、いじめが主たる要因」と結論づけた。
報告書などによると、男子生徒は1年生の時、同級生らから「変態」と陰口をたたかれ、「きもい」と言われた。2年生になると、いじめは深刻化。休み時間などに「死ね」と言われ、殴られたり蹴られたり、羽交い締めで首を絞められたりする暴力を受けた。
昨年2月の校外学習では無断で写真撮影され、同級生にインスタグラムで公開され、不特定多数に拡散された。同3月には、教室の床に落ちていた生徒のメモを教員が授業中に読み上げ、同級生らがくすくす笑うことがあった。報告書は「生徒に甚大な心身の苦痛を及ぼしたと考えられる」と指摘した。その2日後、生徒は亡くなった。
報告書によると、生徒は通常の学級に在籍しながら発達特性に合わせた「通級指導」を受けていた。中学入学時は「新しい友だちとの関わりがスムーズにいかない」などの課題が教員内で共有されたが、その後は人事異動などできちんと共有されなかった。また、「生徒が抱える課題について専門職による助言が不可欠だったが、助言を得ようとした教員はいなかった」と指摘した。
報告書では学校側の対応を批判。学校側はいじめと認定された36件のうち、SNSに生徒の写真が公開されたことなど2件を把握していたが、学校全体でいじめ問題を調査する「いじめ対応チーム」は設置されなかった。生徒が亡くなる前月の学校生活アンケートで、いじめ行為を問う質問に生徒はいくつも「当てはまる」と答えたが、回答内容は学校全体で共有されなかった。
一連の学校側の対応について、「『いじめを見える化』するという姿勢が欠如」しており、生徒への継続的なケアができていないと批判した。
弁護士や臨床心理士ら4人でつくる第三者委は教職員16人、生徒30人から聞き取りした。弁護士で社会福祉士の曽我智史委員長はこの日の会見で、「生徒は本当にいじめで苦しんだ。つらかっただろう。同級生らは、このことを忘れないでほしい」と呼びかけた。
市教育委員会の木本博子・教育次長は会見で、学校側の対応が不十分だったとし、「(生徒からの)SOSを把握できなかったことを非常に重く受け止めている。主たる原因を検証したい」と話した。
生徒の両親も会見に臨み、母親は「学校を休ませなかったことに後悔の気持ちがある。学校を信頼してしまった」と、言葉に詰まりながら話した。
第三者委員会が認定した主ないじめの内容
・休み時間に首をつかまれ、教室の窓から下に落とされそうになった。
・掃除の時間などにほうきでこづかれる、殴られる、蹴られるなどの暴力を受けた。
・休み時間などに「死ね」「きもい」「うざい」「やばい」「変態」などと言われた。
・校舎内から出られないようにされた。
・無断で写真撮影され、「変態」の文字とともにインスタグラムで公開された。
・授業中、生徒が書いたメモを教員に読み上げられ、同級生に笑われた。
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