“ちょっとゆるい”くらいがいい
「メンバーが主体的に行動し、仕事のやりがい・達成感を得られるチーム」とは、具体的にいうとどういうチームなのでしょうか。
明確なイメージを持っていただけるように、その条件を以下に挙げてみます。
◎ リーダーがメンバーに、上司・部下という立場の違いを意識させない◎ 言葉は基本「ですます調」でていねいだが、フラットな関係で会話する
◎ チームの皆が、何の抵抗もなく発言できる。その発言を否定する人は誰もいない
◎ メンバー全員の発言を何らかの形で採用する
◎ 皆でアイデアを出すための企画会議をすると、物事が決まる。メンバーには「自分で決めた感」がある
◎ 企画会議を終えた後には、「今日の会議、楽しかった」と言う人が多い。メンバーの納得度も高い
これらからイメージしていただいた、「メンバーが主体的に行動し、仕事のやりがい・達成感を得られるチーム」は、どうすれば作れるのかをお話ししていきます。
大切なのはメンバーの「自己決定感」
「メンバーが主体的に行動し、仕事のやりがい・達成感を得られるチーム」の条件にある「自分で決めた感」は「自己決定感」です。メンバーにこれを感じてもらうには、1人ひとりの発言量が多くなければなりません。
そのためには「ここでなら、自分の考えをいくら発言しても大丈夫。否定されたり、あいつはダメだと言われたり、思われたりしない」という「安心感」があることが前提です。
このような安心感を持ってもらうためには、「つねに安心で安全である」という雰囲気を作る必要があります。
そこで目指すのが、フラットな関係作りです。
役職や社歴によって、目上・目下がはっきり分けられていると、目下の立場にいる人からは、目上の人に対して発言しにくくなります。
もちろん、組織ですから、役職や社歴の違いはそれぞれありますが、それによって発言をためらわなければならない環境にしないことです。
特にリーダーは、メンバーにとって目上の立場にいる人です。
ですからリーダーから率先して、「何を発言しても大丈夫、否定したりせず、メンバーの意見を尊重する」といったフラットな関係を作る必要があります。
フラットな関係作りとは、メンバーにとって、リーダーやほかのメンバーの顔色をうかがう緊張を強いることがない、いわば“ちょっとゆるい雰囲気”作りです。
この“ちょっとゆるい雰囲気”ができあがっているからこそ、メンバー1人ひとりが活発に発言できます。その結果、1人ひとりの発言量も増えていきます。
だからこそ、「自己決定感」を持てます。
そのためメンバーの納得感が高くなり、「仕事が楽しい」「自分からどんどん行動したい」「次もまた自分のアイデアを出したい」「次の企画会議が待ち遠しい」と感じることができます。
要は、メンバー1人ひとりのモチベーションが高まっている状態です。
こういう「場作り」「雰囲気作り」をすることも、リーダーの役割だと考えています。
次にいよいよ、「メンバーが主体的に行動し、仕事のやりがい・達成感を得られるチーム」におけるリーダーの姿についてお話ししましょう。
優れたリーダーの条件はいろいろありますが、大きく分けると2つ。1つは「ロジカルであること」、もう1つは「話しかけやすい柔らかい雰囲気」です。
「ロジカルであること」は、リーダーのベーススキルです。仕事に必要なことを、チームのメンバーたちにわかりやすく伝えることが、リーダーの仕事として必須だからです。
この「ロジカルであること」の基になっているのは、コンサルティング業界に由来する「ロジカルシンキング」です。
日本では、2001年5月にマッキンゼーの照屋華子・岡田恵子著『ロジカル・シンキング 論理的な思考と構成のスキル』(東洋経済新報社)が出版されて、一躍ブームになりました。
同書では、話の重複、モレ、ズレをなくす技術として「MECE(ミーシー)」が紹介されています。この「MECE」という言葉も、ブームに乗って広まりました。
「MECE」とは、「Mutually(お互いに)」「Exclusive(重複せず)」「Collectively(全体に)」「Exhaustive(漏れがない)」の頭文字からできた言葉です。何かを考えたり、正確な答えを導き出すために必要なこととされています。
リーダーがチームのメンバーたちに対して、仕事に必要なことを伝える際にも、こうしたロジカルシンキングに基づき、伝えるべきことを整理できるスキルが求められます。
話しかけやすい雰囲気を作る
一方、「話しかけやすい柔らかい雰囲気」は、人の感情と深い関わりがあります。
人には必ず感情があり、リーダーはメンバーの感情に影響をおよぼす存在です。そこでリーダーには、部下の感情を適切にくみ、配慮や寄り添うスキルが求められます。
リーダーはメンバーの行っていることを理解し、適切にコミュニケーションが取れるようでなければなりません。ですから、リーダーはいつでも、メンバーが躊躇なく話しかけられる雰囲気でいる必要があります。
そのため、リーダーに求められるのが「話しかけやすい柔らかい雰囲気」なのです。人は、厳しい表情の人より、笑顔でいる人のほうが断然話しかけやすいと思いませんか?
「上司と部下という関係があるのだから、メンバーはリーダーに対して、話の内容や言葉を選んで話してほしい」というスタンスより、「同じチームの仲間なんだから、何でも話していいよ」というスタンスのほうが、あれこれ相談しやすいのではないですか?
そこで、リーダーのポジションパワーを感じさせないように、メンバーにはフランクに接することが大切です。
もしかしてあなたは、「そんな態度だとメンバーになめられて、むしろよい関係が築けないのでは?」と考えているでしょうか。
そんなことはありません。
メンバーが話しかけやすく、何を話しても否定されないと感じられる柔らかい雰囲気を醸し出しながらも、仕事や成果に真摯に向き合っていれば、一緒に働いているメンバーには、その思いはちゃんと伝わるものです。
私も会社員時代に、特に説明をしなくてもメンバーが「あのリーダーはただ話しかけやすいフラットな人じゃない。仕事には真摯で厳しい」とわかってくれていたな、と感じた経験があります。
自分は「ロジカル」か?
それでは、リーダーに求められる2つの要素のうち、自分にはそのどちらかが足りていないと感じている場合に、どのように身につければいいのでしょうか。それをお話ししましょう。
リーダーとしては、チームのメンバーとともに会社から与えられたミッションをクリアする必要があります。
まずは自分自身で、「そのための目的は何で、手段は何か」「具体的に、何人で何をするか」を、明確にイメージできるかどうかを考えてみてください。
つまり、何か仕事をする際に、「目的」と「手段」を切り分けて明確にする必要があるということです。
しかし、「目的」と「手段」を明確にしないまま仕事をしているケースは、世の中でよく見られます。目的が何かもわからないまま、「これをやれ」と言われたからやるという、ただ誰かの指示に従うだけの仕事の仕方です。
「これをやれ」の「これ」とは、「目的」ですか、それとも「手段」ですか? 「手段」だとしたら、「目的」は何でしょうか?
「目的」と「手段」を切り分けるとは、それをはっきりさせることです。
たとえば、「Aという商品の売上データをまとめてください」と指示されたとします。
この指示は、A商品の売上を把握するという目的のために行うのですか? それとも、その売上データを他社の競合商品のデータと比べて、新たな戦略を練るという別の目的がありますか? そのために、まずはA商品の売上データをまとめるという手段が必要だということでしょうか?
もし、A商品の売上データが、別の目的のために必要な手段であるなら、最終的な目的は何かも皆がわかるようにしておきます。
プロジェクトの立ち上げ時には、プロジェクトメンバー全員が「目的」と「手段」を明確に理解し、納得できるようにする必要があります。
そうすることで、全員が仕事に“腹落ち感”を持つことができて、自分から動こう、自分もアイデアを出そうという意欲を養えるからです。
そこで、今進んでいる仕事について、「自分自身が『目的』と『手段』の切り分けができているのか」「自分のチームのメンバー全員が『目的』と『手段』を認識し、納得しているのか。その認識は確かに全員揃っているのか」を意識するようにしましょう。
「ロジカルシンキング」と「フレームワーク」
『変化をもたらすリーダーは何をしているのか?』(フォレスト出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプしますもしあなたが「自分は物事をロジカルに考えて整理するのはどうも苦手だな」と日頃から感じているようなら、「ロジカルシンキング」や「ビジネスフレームワーク」を勉強することをお勧めします。
先にも少し触れましたが、「ロジカルシンキング」とは、ビジネススキルとしての論理的思考のことです。1つの事象について矛盾がないように順序立てて考えたり、体系的に整理することを指しています。
また「ビジネスフレームワーク」とは、「ロジカルシンキング」の手法として、重複、モレ、ズレがないよう、事象を体系的に整理するためのロジックツリーや表などのツールです。
これを使うと、現状の把握や業務の具体的流れの可視化、課題の洗い出しなどが容易に行えるようになります。
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