約5年間で12ヵ国語を習得したKazu Languages氏。外国語学習の極意とは?(写真:筆者提供)日本で生まれ育ちながら、英語から、世界最難関のアラビア語まで、約5年間で12ヵ国語(スペイン語、英語、フランス語、アラビア語、インドネシア語、ロシア語、ポルトガル語、ドイツ語、トルコ語、中国語、タイ語、韓国語)を習得したKazu Languages氏。これほど多種多様な言語を最短最速でマスターした外国語習得法とはどのようなものだろうか。初の著書『ゼロから12ヵ国語マスターした私の最強の外国語習得法』を上梓した同氏が、その極意を紹介する。

「論理的な学び方」と「感覚的な学び方」

外国語を学習する際の心得や実践法には、さまざまなものがあります。大きく分けると、「論理的な学び方」「感覚的な学び方」があるといえます。前者は先に徹底的に文法を学んでから会話力をつけるという学び方。後者は、フレーズや単語を覚えていく中で、自然に文法も身につけていくという学び方です。

どちらの方法を選ぶかは、個々人の好み次第だと思いますが、私の学び方は感覚的です。

というのも、学生時代の英語の授業、さらには留学前のスペイン語の勉強で先に文法を学んだことが、自分にはあまり合っていなかったと感じているからです。スペインに留学し、現地の人たちと実際にコミュニケーションを取る中で、まず発音と一緒に実践的なフレーズから覚えていくことにしました。

もちろん文法を学ぶことも大切です。文法に沿って話したり書いたりできるようになるでしょう。もし、学習中の言語による大量のインプットがある状況、それこそ留学のような状態に身を置けるのであれば、意識的に文法を「学習」せずとも、自然と、ほぼ正しい文法に沿って話したり書いたりできるようになるでしょう。

しかし、日本に暮らしながら独学で外国語を習得するとなると、そうはいきません。

どこかの段階で文法をきちんと「学習」することが、その言語を効率的に習得する手助けになります。そこで鍵となるのが、「どの段階で文法を学習するのか?」なのです。

実践から入り、ルールは後から覚える

言葉は、いってみれば生き物のようなものです。そこにはマシンのような100%のルールは存在しません。基本的なルールはあるものの、イレギュラーな部分も多々あります。私自身は、そういう性質のものを習得する際に、「先にルール(文法)を覚えてから、実践に入る」という手順を踏むのは、実は遠回りになるのではないかと思うのです。

そのため、ひとまず「どういうルールのもとで、こうなっているのか」ということはさて置き、どんどんフレーズを覚えていきます。ある程度、フレーズが蓄積されていくと、自然と「パターン」のようなものが見えてきます。そうなってから文法に着手したほうが効率的に習得できます。

「このフレーズがこうなっているのは、こういうルールだからなのか」「でも、この場合は例外なんだな」という具合に、すでに頭に入っているフレーズと照合するかたちで、実践的に基本ルールと例外を学んでいくことができるからです。

というわけで、私は「先にしっかり文法を学び、後で会話力を身につける」という論理的な学び方ではなく、「先にフレーズを蓄積して会話力の素地を作ってから、自然に文法を学んでいく」、という感覚的な学び方をおすすめします。

外国語学習を「苦しい勉強」から「楽しい遊び」に変えていく。楽しいから続けられるし、続けられるから多くの言語を学べる。そんな楽しみに満ちた外国語学習の道のりを、ぜひ多くの人に歩んでいただけたら嬉しいです。

「母語」で話しかければ、「心」にまで届く

今は翻訳ツールがかなり発達してきています。生成AIの登場もあり、近い将来、通訳や翻訳の仕事はなくなるのではないかとも言われています。そんな中、なぜ私が外国語を学び続けるのかと不思議に思う人もいるかもしれません。

外国語を学べば学ぶほど、「努力してきて本当によかったな」と思うことがあります。それは、相手の母語で話すと、言語の壁を一瞬で乗り越えて一気に打ち解けてしまうことです。

かつてアパルトヘイト廃止を訴え続けた南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領はこう言い残しました。

「相手が理解している言語で話しかければ、それは相手の頭に届く。しかし、相手の『母語』で話しかければ、それは相手の『心』にまで届く」。

たとえカタコトであっても、相手の母語で一言、二言、何かを言うだけで言葉の違いという壁が消えてしまう。これは翻訳ツールを使ってのコミュニケーションではなかなか起こらない現象ではないかと思います。

外国語を学ぶと人生が豊かになる

言語はコミュニケーションツールであると同時に、「文化」でもあり、人間のアイデンティティと切っても切り離せません。

そして相手もその気持ちを喜んで受け止め、応えてくれようとしたときに、まるでワープしたかのように、「言語の壁を乗り越える」というプロセスを飛び越えて打ち解けてしまう、そんな印象があるのです。

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翻訳ツールはたしかに便利なものに違いありません。どんな言語の話者とでも簡単に意思の疎通が図れるテクノロジーの進化はすごいことです。

それでも私は、外国語を学び、自ら話せるようになろうとすることを、今後もやめないでしょう。なぜなら、「言語の壁が溶ける感覚」を今までに何度も味わってしまったからです。

それだけではありません。

外国語学習とは、新たな世界の扉を開く冒険への第一歩です。外国語を学ぶと人生が豊かになる。人生に新たな輝きがもたらされることは間違いありません。私は決して大げさではなく、本気でそう思っているのです。

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