スーパーで子どもと遊ぶ「どちらがお得かゲーム」
みなさんは、数学が得意な子どもが育つ家庭で遊ばれている“あるゲーム”を知っていますか?
われわれカルペ・ディエムでは、東大生やその親御さんに定期的にアンケートやインタビューを実施しています。その中で、数学が得意なお子さんが育つ家庭では、あるゲームで遊んでいる場合が多いことがわかりました。今回はそのゲームについてみなさんにご紹介したいと思います。
そのゲームとはずばり、「どちらのほうがお得か」ゲームです。
たとえば、小さいときに親子でスーパーに買い物に行くことも多いと思います。買い物の際に、子どもたちに、さまざまな場面で「どちらのほうがお得か」を判断させるのです。
具体的にお話ししましょう。スーパーには卵のパックが売っていますよね。たとえば6個200円の卵パックAと、10個300円の卵パックBが販売されていたとします。このときに、親御さんは子どもに「どっちがお得かな?」と聞いてみるとしましょう。
小学生で割り算を習っていれば「B!」と答えられる子どもが多いと思います。
「全部の値段÷個数=1個あたりの値段」を計算できますから、「A:200円÷6個」「B:300円÷10個」で、Aの卵が約33円、Bの卵が30円となります。
Bのほうが1個あたりの値段が安いので、Bを買ったほうがお得だと考えられるわけですね。
このような問題は、小学生の勉強ドリルに載っているものですが、日常生活で実際に計算する機会はなかなかないでしょう。このように、算数で勉強していることを、日常生活の中で活用させることで、算数に対する勉強意欲が高まるのです。
小学校高学年は即答しなくなる
ところが、子どもたちが小学校の高学年になると、「B」とは即答しなくなります。確かに、卵1個あたりの値段に換算して考えれば、値段が安いのはBです。しかし、この考え方では単純に値段のことしか考えていません。卵の賞味期限や卵の消費スピードが、考慮されていませんよね。
例えば、本来であれば卵を1週間に3個のペースでしか消費しない家庭が、賞味期限が2週間の卵を10個購入した場合を考えてみましょう。
普段と同じペースで卵を消費していた場合、卵は賞味期限が切れたタイミングで4個余ってしまい、残りの4個は賞味期限が切れて、味の落ちた状態で消費されることになります。あるいは、賞味期限内にすべての卵を消費しようとした場合、無理をして1週間で卵を追加で2個消費することになります。
つまり、一見お得のように見える「Bを選択する」という行動が、「わざわざ100円多く支払って、普段食べる量よりも多くの卵を買っている」という行動だと言うことができるのです。それはお得と言えるのでしょうか?
こう考え出すと、一概にBのパックがお得だ、とはならなくなります。このように、ほかのシチュエーションも考えながら、比較できるようになると、子どもたちもいろんなものを数値で表そうとするようになります。
例えば、お小遣いに関しても同じように質問をしてみましょう。
「1カ月で1000円ずつもらえるのと、1年の最初に一括で1万円渡されるのと、どちらのほうがいい?」と聞けば、子どもたちは「1カ月ごとに1000円もらったほうが、1000円×12カ月=1万2000円だから、1万円もらうよりも2000円儲かることになるな」「でも、最初にもらったほうがいろんなことができるし、ほしかったゲームが先に買えるかもしれない」などと考え出して、「うーん」と頭を悩ませることになります。
そうやって悩んで結論を出そうとすること自体が、子どもにとっては数学を使ってものを考える習慣となり、数学に興味を持てるようになるのです。
レストランでも同じことが言えます。例えば、親子2人でレストランに入ったとします。そこでは前菜、ピザ、パスタ、ドリンクがすべて1品500円(税抜き)です。
その一方で、コースを選ぶこともできます。2時間飲み放題付き3000円(税込み)で、前菜からピザやパスタまで出てくるコースです。
なお、アラカルトで頼む場合、1人あたり300円(税抜き)のチャージ料金がかかります。
コースとアラカルト、どちらがお得?
そのときに、子どもに「コースとアラカルト、どちらのほうがお得だろう?」と聞いてみるのです。子どもに計算してもらい、どちらがお得になるかを考えてもらうのです。
「飲み放題2人分で6000円なので、500円のメニューが12品頼める」とつい思ってしまいます。
しかし、この計算は、一見正しいように見えて間違っています。なぜなら、アラカルトにはチャージ料金が発生するからです。
また500円という料金も、細かく見ると「税抜き」で書かれているため、実際にはイートインの税率である10%が加算されて550円となるのです。
この2つの情報を踏まえて、改めて頼める品数を考えてみると、以下の通りになります。
・8品(1人4品)頼んだ場合(300円×1.1)× 2 + (500円×1.1)× 8 = 5060 円
・10品(1人5品)頼んだ場合
(300円×1.1)× 2 + (500円×1.1)× 10 = 6160 円
・12品(1人6品)頼んだ場合
(300円×1.1)× 2 + (500円×1.1)× 12 = 7260 円
このように考えてみると、2人でコースを頼んだ場合は税込み3000円×2人=6000円ですから、10品以上アラカルトで注文するよりも、コースのほうがいい、ということがわかります。
このように、レストランでの注文の仕方も、どちらがお得かを考えてもらうのです。
日常生活でも数学を取り入れる
『東大式 数値化の強化書』(彩図社)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプしますこうすれば、日常生活で計算する習慣が身に付きます。数学を勉強すればするほど、得した気分になれる。そうやって計算を続けていると、だんだんと数学が楽しくなっていき、自分から数学を勉強するようになる、というわけです。
頭のいい子どもが育ちやすい家庭の特徴として、勉強と日常生活の境目がないことが挙げられます。ただ机に座っている時間だけを勉強だと定義するのではなく、日常生活の中でも数学や英語・社会を使って思考することを促している家庭のほうが、頭のいい子が育ちやすく、頭もよくなりやすいです。みなさんぜひ、参考にしてみてもらえればと思います。
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