(漫画:©︎三田紀房/コルク)記憶力や論理的思考力・説明力、抽象的な思考能力など、「頭がいい」といわれる人の特徴になるような能力というのは、先天的に決められている部分があり、後天的に獲得している能力は少ないと考える人が多いのではないでしょうか。その考えを否定するのが、偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠氏です。漫画『ドラゴン桜2』(講談社)編集担当の西岡氏は、小学校、中学校では成績が振るわず、高校入学時に東大に合格するなんて誰も思っていなかったような人が、一念発起して勉強し、偏差値を一気に上げて合格するという「リアルドラゴン桜」な実例を集めて全国いろんな学校に教育実践を行う「チームドラゴン桜」を作っています。そこで集まった知見を基に、後天的に身につけられる「東大に合格できるくらい頭をよくするテクニック」を伝授するこの連載(毎週火曜日配信)。連載を再構成し、加筆修正を加えた新刊『なぜか結果を出す人が勉強以前にやっていること』が、発売後すぐに3万部のベストセラーとなっています。第117回は駿台予備学校講師の宇野仙先生に、地理を通して学ぶ、賢くなる思考力の身に付け方を伺いました(前後編の後編)。

地理が高校の必修科目に

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われわれカルペ・ディエムでは、駿台予備学校東大専門校舎の「お茶の水校3号館」にて、2024年度から既卒生100人を対象とした『東大特化学習支援』を実施し、東大を目指す生徒の皆さんをサポートしています。

今回も前回に引き続き、駿台予備学校講師の宇野仙先生にお話を伺います。宇野先生は、地理の講師として、今まで2万人以上の東大志望者を指導し、東大合格に導いている先生です。

地理は2022年度の新学習指導要領から高校の必修の科目になり、これからますます重要度が高まる科目だと考えられています。今回は宇野先生に、「地理の学習を通して、頭をよくする方法」についてお話を伺いたいと思います。

西岡:僕自身、宇野先生の授業を通して「頭の使い方」を学んだように思います。地理を学んだからこそ、その思考法をほかの科目にも応用して、偏差値35から東大に逆転合格することができたなと。ただ、それは一体なぜだったのか、自分の中でうまく言語化できていません。この点について、お話を伺えればと思います。

宇野:実は西岡くんのように、地理から勉強に目覚めて、成績が上がる生徒というのは少なくありません。地理がきっかけで東大に受かったと言ってくれる生徒が、文系だけではなく、理系にもいてくれるのは、講師をやっていてとても嬉しく感じる瞬間です。

西岡:そもそも、宇野先生は地理という科目をどのように定義していらっしゃるのでしょうか? 世間一般では、世界の地図を覚える、世界の地形を暗記する、といったイメージを持つ人もいると思うのですが。

東京のブルーベリー農家が多い理由

宇野:一言で言うと、「結果から逆算して考える」科目ですね。地球上で今見えているものは、結果でしかありません。この地域で、こういう産業が発達しているとか、人口はこれくらいだ、など。でも、そのすべてが「結果」であって、考えを巡らせれば「原因」がどこかにあるかがわかります。

例えば、拙著『「ドラゴン桜」式クイズで学ぶ東大思考』でも触れていますが、以前東大の入試問題で「ブルーベリー農家が47都道府県の中で、いちばん多いのは東京都だが、これはなぜか考えて答えなさい」という問題が出ました。

(左)宇野先生(右)筆者(撮影:東大カルペ・ディエム)

西岡:東京には、ブルーベリーのイメージはありませんが、意外な統計データですね。

宇野:ブルーベリー農家が「観光農園」を行っている場合が多い、ということまでたどり着けば、すぐに答えが出ます。ブルーベリー農家は、観光農園として、農園での収穫体験を実施しており、そこにはカップルや家族連れがたくさん訪れます。

観光農園は、お客さんを集めやすい地域で開業するのがいちばんです。人口の多い東京近辺だと、お客さんが集まりやすく、観光地として適している。

こうしたことは、東京近辺で街を散歩していて「なんでここに農園があるんだろう?」と考えたことがある人なら気付けることです。でも、多くの人は「結果」として見ているから、その「理由」まで深掘りしないんですよね。

西岡:結果だけで満足せず、原因を探る思考が重要である、ということですね。これについては『ドラゴン桜』の中でも、同じようなことを述べているシーンがあります。

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(漫画:©︎三田紀房/コルク)

 

(漫画:©︎三田紀房/コルク)(漫画:©︎三田紀房/コルク)

宇野:同じような例で、こんな問題があります。私が初回の授業で出題している「なぞなぞ」なのですが、「赤道が通っている国(ケニアやエクアドルなど)で作っている商品で、日本では必ず1年に4回、値段が上がるものがある。これはなんだと思いますか?」というものです。

西岡:この情報だけだと、少し難しいですね。何かヒントを貰えないですか?

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宇野:1年に4回と言うのは、3月、5月、8月、9月の4回です。

西岡:規則性があるわけではないから、何かのイベントごとに値段が上がっているということですよね。

宇野:いいところに目を付けましたね。答えは「花」です。5月の母の日、8月はお盆、3月と9月はお彼岸と、決まったイベントがあるから、花の値段が上がるんです。このように日本は年中花の需要があります。赤道近くであれば、気候の変化が年間を通して乏しく、花を安定的に供給することができます。だからこそ、ケニアやエクアドルでは花の栽培が盛んなのです。

西岡:これも「なぜ」を問うことで答えが導けるものでしたね。

暗記ではなく、ロジックを理解する

宇野:そうです。ただ、勘違いしないでほしいのは、今の問いから学んでほしいのは「ケニアでは花が栽培されている」という事実ではなく、「なぜ赤道が通る国では花が栽培されるのか?」「それはなぜか?」というロジック・過程なのです。

問題を解くために必要最低限の知識は必要ですが、その知識を基に「どのような考え方ができるのか」が大切です。特に、最近の共通テストの傾向などを見ていると、結果ではなく過程をフォーカスする動きがあると思っています。

西岡:この前、宇野先生は共通テスト対策の参考書を出版されていましたが、こちらも「結果」よりも「なぜそうなるのか」のほうに重点が置かれた構成になっていて、驚かされました。やはり自分たちが受験生だったころのセンター試験対策とは若干毛色が違ってきているんだな、と。

宇野:まさにそうです。結果ではなく、過程の部分をしっかりと理解し、納得するための思考を働かせることが、これからの入試において、またこれからの時代を生きるうえで重要になってくると考えています。

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