海に選ばれて神の呪いを解く使命を担うモアナ(左は妹のシメア) WALT DISNEY STUDIOS MOTION PICTURESーSLATE

<海を愛し海に選ばれた南の島の少女が、再び神の呪いに立ち向かう新たな冒険へ旅立つが...>

南太平洋に浮かぶ架空の島モトゥヌイには、「モワナビー」と呼ばれるティーンエージャーたちがいる。海へと繰り出す勇敢な少女モアナの熱烈なファンだ。

2016年に大ヒットしたディズニーの長編ミュージカルアニメ『モアナと伝説の海』で、モアナは命の女神テ・フィティにかけられた太古の呪いを解くために大海原を冒険し、島の人々を飢饉から救った。

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あれから3年。村長の娘であるモアナは父と共に島のリーダーになった。子供たちは彼女を尊敬し、年長者は助言を求める。以前は禁じられていた航海を繰り返し、1人で近くの島に行って戻ってくれば国民の祝日のようにお祝いされる。

続編『モアナと伝説の海2』は、モワナビーさながらのモアナ賛歌だ。8年前に大ヒットした前作の魅力を完全に再現することは難しいが、その特徴的な要素を意識した作品となっている。

探検とチームワークと勇気をたたえる壮大なミュージカルアニメは、とりわけ小さな子供がいる家族連れにとって楽しいシーンが満載だ。

ただし、活気にあふれ洗練されているにもかかわらず、消費されるための作品という色合いは前作より濃くなった。前作を際立たせていた繊細な演出や風変わりなキャラクターの癖はそぎ落とされたか、ノスタルジーを誘うオマージュとして再利用されている。

問題の1つは、この規模のシリーズものの2作目の常として、主人公が勝者の立場にいるところから物語を始めざるを得ないことだ。

手前から時計回りにモアナ、ケレ、モニ、ロト ©2024 DISNEY. ALL RIGHTS RESERVED.

前作から少し成長したモアナ(声は前作と同じくアウリー・クラバーリョ)は、最初の冒険で彼女を悩ませた自信のなさも不安も感じさせない。

ヒロインがとびきり困難な任務を達成するために能力と知識を身に付けていく姿を観客が見守るのではなく、ほぼ完成形のスーパーヒロインである主人公がいきなり登場する。自分がモーセのように海をかき分けて歩けることを、彼女は既に知っている。


私はプリンセスじゃない

もちろん、今回もモアナの前には大きな壁が立ちはだかり、ディズニーのヒロインにとって何よりも重要な「自分を信じること」という最強の力を奮い立たせることになる。

しかし彼女は前作で変幻自在の半神半人のマウイ(声は前作と同じくドウェイン・ジョンソン)と親友になっているので、今では厄介な事態が起きてもたいていは怖くない。

物語の軸となる航海は、今回も自然界と超自然界の戦いを機に始まる。怒れる神が海の果てにある島に呪いをかけた。世界に散らばった人々を再びつなぐため、その呪いを解きに行かなければならない。

モアナは亡き祖母タラをはじめ航海術をよく知る祖先から、この危険な使命を命じられる。

(左から)ヘイヘイ、半神半人のマウイ、プア ©2024 DISNEY. ALL RIGHTS RESERVED.

航海の新しい仲間は、マウイに憧れる少年モニ、天才肌の船大工の少女ロト、海が嫌いで泳げず、気難しい農民のケレ。そして、前作にも登場したヘイヘイ(おバカなニワトリ)とプア(モアナが飼っているブタ)もいる。

呪われた島モトゥフェトゥにモアナたちのいかだが近づくと、さまざまなことが起こり始める。前回も遭遇したココナツの海賊集団、カカモラ(見た目はミニオンズに似ている)とも再び絡む。そして一行は、ミステリアスな冥界の女神マタンギと出会う。


中盤のこのあたりはアクションが続くが、全体としてよく分からない。転覆寸前の危機など海難が次々に起こり、敵もどんどん増えていく。とはいえ、いかだの上の軽妙な会話は愉快だし、大胆で温かみのある色使いとウイットに富んだ視覚的アイデアがちりばめられている。

監督はデイブ・デリックJr.、共同監督はジェイソン・ハンドとダナ・ルドゥ・ミラー。3人にとっては初の長編映画となる。脚本はミラーと、前作に引き続きジャレド・ブッシュが担当した。

当初はテレビシリーズとして制作が進んでいたが、劇場公開用の続編として再構成された。中盤が詰め込みすぎなのは、その名残かもしれない。

「続編病」の兆候はあるが、多くが南太平洋に文化的ルーツを持つ才能豊かなアーティスト集団の情熱と細部へのこだわりが感じられる。

楽曲はマーク・マンシーナと、サモア生まれでニュージーランド育ちのソングライター、オペタイア・フォアイが今回も担当。しかし、前作でとりわけ印象的な楽曲を作詞(あるいは共同作詞)したリン・マニュエル・ミランダは参加していない。

21年にグラミー賞で最優秀ミュージカル・シアター・アルバム賞を受賞したアビゲイル・バーロウとエミリー・ベアーが手がけた楽曲は効果的に挿入されているが、前作の「ハウ・ファー・アイル・ゴー」「シャイニー」「ユー・アー・ウェルカム」、さらには勇壮な船乗りの賛歌「ウィー・ノウ・ザ・ウェイ」のような深い印象は残らない。


今回の代表的な楽曲は、黄金の喉を持つクラバーリョが高度な技術で歌い上げ、ジョンソンがせりふをしゃべるように心地よく聴かせる。しかし私は、映画館を出て30分たつとメロディーを1つも口ずさむことができなかった。

エンドロールの途中で、モアナと仲間たちが将来、別の神話に関連した危機に遭遇するだろうと(あからさまに)ほのめかされる。ディズニーアニメの古典的名作を実写化するという新しい伝統に従って、まだ古典ではないが、前作の実写版が26年夏に公開される予定だ。

若き冒険家(モアナが強いまなざしで主張しているように、彼女を「プリンセス」と呼ぶのはやめよう)は、自分はどこまで遠く行けるのだろうと今も夢見ているかもしれない。もっとも、あなたが次の航海も一緒に行きたいと思うかどうかは、また別の話だ。

©2024 The Slate Group

MOANA 2
モアナと伝説の海2
監督/デイブ・デリックJr.
声の出演/アウリー・クラバーリョ、ドゥウェイン・ジョンソン
日本公開中

『モアナと伝説の海2』日本版予告

「モアナと伝説の海2」日本版本予告

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