兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で8日、将棋の藤井聡太名人・竜王(22)=王位、王座、棋王、王将、棋聖と合わせ七冠=と日本将棋連盟会長の羽生善治九段(54)の記念対局が指され、約3800人が観戦した。

 阪神甲子園球場と日本将棋連盟が100周年を迎えたのを記念し、「日本将棋連盟×阪神甲子園球場『100周年記念対局』」として実施された。非公式戦で、持ち時間は各30分、使い切ると1手30秒未満の秒読みとなる早指し戦。

 対局は貴賓室で指され、対局の様子はバックスクリーンのメインビジョンなどに映し出された。対局の進行状況は、三塁側特設ステージで谷川浩司十七世名人(62)、久保利明九段(49)、室谷由紀女流三段(31)、榊(さかき)菜吟(なな)女流2級(21)が大盤を使って解説した。

 振り駒で先手番は藤井名人・竜王。対局開始は午後1時33分。戦型は「角換わり相早繰り銀」。午後2時55分に終局し、120手で羽生九段の勝ち。終局直後、解説の谷川十七世名人は「(羽生)会長、強いですね」。続いて「途中、(羽生九段が)少し苦しいかなと思ったんですけど、優勢になってからは、安全かつ最短の勝ち方だった」と総括した。

 終局後、両対局者は大盤の前に移動し、ファンの前で感想を述べた。勝った羽生九段は「甲子園球場での対局はめったに無い機会で、すごくうれしく思っています。自分自身としても良い記念になりました」と述べた。敗れた藤井名人・竜王は「この甲子園球場さまと将棋連盟が共に100周年ということで、こうした機会をいただいて、100年に一度の対局なので大変緊張しました。将棋の方は、積極的に指していったんですが、羽生九段にうまく切り返されてしまったかなと感じています」と話した。

 解説の谷川十七世名人から「羽生九段が快勝、という感じですか?」と問われたのに対し、羽生九段が「(持ち)時間が短い将棋にしては、自分としては、うまく指せたかな、と。今回は100周年という記念というかお祝いなんですけど、藤井さんからお祝いをいただいたような気分です」と答えると、客席から笑いが起きた。

 解説会の最後に、谷川十七世名人が「両対局者へエールを送っていただいて、この解説会を締めたい」と観衆に提案し、一緒に「かっとばせ~、藤井!」と叫ぶ一幕も。続いて、羽生九段へのエールの先導役を急きょ務めることになった室谷女流三段が「かっとばせー、羽生と羽生会長と、どっちが良いですか?」と尋ねると、羽生九段はニコニコ笑って、「それは、羽生でしょう」。球場内に「かっとばせ~、羽生!」の声援が響いた。

 また、対局に先だって、阪神甲子園球場をホームグラウンドとするプロ野球「阪神タイガース」の熱烈なファンとして知られる谷川十七世名人、室谷女流三段と、将棋ファンで阪神OBの井川慶さん(45)、阪神の才木浩人投手(26)による「スペシャルトークショー」もあった。

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