ドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんが亡くなった問題で、日本テレビは31日、公式サイトで社内特別調査チームの調査報告書を公表した。ドラマ自体は原作者の意向を反映したものだったが、制作の過程に問題があったと指摘。取材に応じた調査チームの早稲田祐美子弁護士は、「最終的には(原作者の)著作者人格権は守られたが、やりとりのなかで不一致があった」と述べた。

 ドラマを巡っては、原作者の芦原さんが1月、制作を巡るトラブルについてSNSに投稿。ネット上で話題になった後に芦原さんは投稿を削除し、死去。自殺の可能性が高いとみられる。

 芦原さんは「必ず漫画に忠実に」「原作者が脚本を執筆する可能性もある」などといった条件を、原作を刊行した小学館を通じて示したと投稿していたが、日テレのスタッフは「原作を大事にする」という意識ではあったが、「ドラマ化の条件」とは認識していなかったという。

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 報告書は、この原因として、制作初期から日テレ側と原作者の面会が行われないなど、すりあわせが十分に行われず、「意識疎通の土台が作られないまま制作に入っていった」と指摘。原作利用に関する契約書も、放送時点では結ばれていなかった。

 両者の認識のズレは次第に拡大し、撮影をやり直したり、互いの不信感が増幅したりした。連載中だった原作にない「オリジナル」となる第9、10話では、原作者の芦原さんが脚本を担当。8話まで担当した脚本家のクレジットを入れることに反対したという。

 日テレは原作者と契約書を結んでいないこともあり、「放送できなくなるかもしれない」と考えて芦原さんの意向を受け入れたため、脚本家は「日テレは守ってくれない」と不満を高め、制作の経緯をSNSに投稿。これに芦原さんが反論し、ネット上で騒動が大きくなっていったと総括した。日テレは脚本家と発注書を交わしていたが、契約書は結んでいなかった。

 調査チームはこうした経緯を踏まえ、再発防止策として、事前に全体構成案や演出を記した書面の作成、原作者との直接の面談などを提言。制作期間を十分取ることや契約書を早期に締結することなども盛り込んだ。

 日テレの石沢顕社長は「制作関係者や視聴者を不安な気持ちにさせてしまったことについて、おわび申し上げます」と謝罪。山田克也・コンプライアンス推進室長は、「制作過程で認識の齟齬(そご)があった点など、日本テレビに制作責任がある」とした。

 小学館は日テレの公表を受け、「現在、特別調査委員会で調査を進めており、調査結果は来週早々には公表したいと考えている」とコメントした。

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