ビール大手各社が主原料の大麦やホップについて、雨や暑さに強い品種や栽培技術の開発を急いでいる。気候変動の影響で、多くの農産物で品質低下や収穫量減少が懸念される中、ビールも例外ではないようだ。業界からは、異常気象で原料調達が困難になれば「将来、1缶800円台もあり得る。誰も飲まないし、衰退の一途をたどる」(関係者)と危惧する声が漏れる。

サッポロビール(東京)は今年、雨への耐性の強さと、醸造した際の風味や泡持ちの良さを兼ね備えた大麦の開発に成功した。大麦は収穫直前に雨が続くと発芽してしまい原料に使えなくなる。新品種は長雨での発芽リスクを従来の約7分の1まで抑えることができるという。2035年に主力の「黒ラベル」などの製品に使うことが目標で、50年には国内外の同業他社への提供も視野に入れる。

ビールに苦味や特有の香りを与えるホップの研究にも力が入る。キリンホールディングス(HD)と東京大発のスタートアップ(新興企業)「CULTA」は、ホップを室内で栽培する技術を確立した。1年に複数回の収穫が可能となり、研究開発のサイクルを早めることで、気温上昇などに対応した品種改良を加速させる方針だ。

アサヒグループHDの子会社は、米マイクロソフトなどと協力し、ホップの生産国のチェコで最新技術を使って土壌や気候条件データを管理。効率的な生産につなげている。

18年に世界的な科学誌「ネイチャー・プランツ」に掲載された論文では、気候変動による干ばつや極端な気温上昇で大麦の収穫量が減り、日本では500ミリリットル缶当たりで3.5ドル(約520円)価格が上昇する可能性があると指摘した。

サッポロビールが開発した大麦。雨への耐性が強く、ビールの品質を長持ちさせる性質を持つという(同社提供)

キリンホールディングスなどは、室内でホップを栽培する技術を確立した(同社提供)

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