半導体受託製造の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本県誘致に携わった蒲島郁夫前知事がインタビューに応じ、政府の財政支援について「長期的な視点で取り組むことが必要だ」と述べ、インフラ整備なども含めて継続して後押しするよう訴えた。巨額の国費投入を疑問視する声に対しては、「経済安全保障強化は国策だ。中途半端ではいけない」と反論した。

TSMCは蒲島氏が知事在任中の2021年、熊本県への進出を表明した。熊本市の北東に位置する菊陽町に建設した第1工場が今年末までに稼働し、第2工場も今年末までに隣接地で着工する予定。総投資額は計3兆円超に上り、うち約1兆2000億円を日本政府からの補助金で賄う。

財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は今月公表した建議(意見書)で、半導体産業に対する財政支援額の対GDP(国内総生産)比が「主要先進国で最大規模」と指摘。効果を検証し、政府の関与を「不断に見直していく」よう提言した。一方、蒲島氏は「外資にこれだけ投じるのはユニーク。政府は本気だ」と、むしろ評価した。

複数の候補地が取り沙汰される第3工場の誘致については、「TSMCは熊本のことをよく分かっている」と述べ、熊本が有利との見方を示した。

九州地方はかつて半導体産業が盛んだったが、海外勢の台頭や日米貿易摩擦によって衰退した。蒲島氏は「経済安保のために半導体を復活させたい政府と、16年の熊本地震から創造的復興を遂げたい県の思惑が一致した」と、TSMC誘致の背景を説明した。その上で、「九州全体に投資が波及し、『新生シリコンアイランド九州』を実現することが経済安保につながる。今やらなくては」と力説した。

蒲島氏は今年4月に知事を退任。東大先端科学技術研究センターのフェローに就任した。

インタビューに答える蒲島郁夫前熊本県知事=21日、東京都中央区

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