産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が20、21両日に実施した合同世論調査では、岸田文雄首相に「(自民党総裁任期が満了する)9月以降も続けてほしい」との回答は8・2%にとどまり、計9割が総裁再選に否定的だった。派閥パーティー収入不記載事件の党内処分も評価されていない。訪米の成果もあって内閣支持率は底打ちの気配も出ているが、政権を取り巻く環境はなお厳しい。
世論調査では、自民支持層でも「9月以降も続けてほしい」と答えたのは19・4%で、「総裁任期まで」が60・4%で最多だった。
首相の総裁再選が支持されない背景には、不記載事件への対応がありそうだ。特に、首相が自身を処分対象としなかったことへの評価が厳しい。
安倍派幹部らへの処分内容を「大いに納得できる」とした回答者でも、そのうち49・9%が首相を処分しなかったことを「妥当ではない」とした。
今回、内閣支持率は3・7ポイント上昇しており、下落傾向は収まった感がある。報道各社の調査も同様の傾向で、朝日(20、21両日実施)が4ポイント増、毎日(同)は5ポイント増、読売(19~21日実施)は横ばいだった。ただ、いずれの調査でも支持率は3割を切る危険水域にとどまっている。
首相自身は政権運営への意欲を失っておらず、9月の総裁選で再選を目指すとみられている。そのため、総裁選前に衆院解散・総選挙で国民の信任を得て自民内の「岸田おろし」を封じるという基本戦略を描いてきた。
その場合、解散のタイミングは6月の会期末にほぼ絞られるが、支持率が低水準にとどまる状態での選挙は党内にも反対する声が根強い。むしろ首相が解散を強行することで「岸田おろし」を誘発する可能性もある。
そこで、衆院選を経ずに総裁選へ突入するシナリオも選択肢として浮上している。首相周辺は「これまで何度も解散が取り沙汰されたが、首相は結局、すべて見送ってきた」と打ち明ける。
総裁再選に否定的な「9割」のムードを変えるのは簡単ではないが、官邸は賃上げや6月からの減税など、経済再生の成果に望みをかけている。(千葉倫之)
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