中央銀行デジタル通貨(CBDC)について議論する財務省の有識者会議=令和5年4月

中央銀行が電子データの形で発行する「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」の将来の導入可否を検討する政府と日本銀行の連絡会議が17日開かれ、これまでの議論を踏まえた中間論点整理を公表した。日銀が「デジタル円」を発行する場合の必要な法令面での対応や、他の民間のキャッシュレス決済手段との役割分担などの課題を共有した。導入決定時に遅滞なく発行できるように、さらに関係者で必要な検討を進める。

偽造対策など法令整備も

連絡会議は財務省や法務省、内閣府、警察庁など関係府省庁の局長級幹部と日銀の担当者で構成。今年1月から議論を行ってきた。

中間論点整理では、スマートフォンのアプリなどを使ったキャッシュレス決済の利用が広がる一方で、決済サービス間の連携不足、セキュリティー対策などでは課題もあると指摘。2019年ごろから諸外国や日本でもCBDCに関する調査や研究が本格化する中、実情を踏まえ、利用者のニーズに合った制度設計を行うことや、法令面の対応など主要な論点を明確にする重要性も強調している。

現在の法令では、紙幣や硬貨の偽造には罰則があるが、デジタル円を想定した罰則規定はない。そのため、デジタル円の偽造を取り締まるため、新たな法令整備が必要とした。また、犯罪で得た不正な利益がデジタル円で決済された場合の差押え方法なども検討を進める。

国民にメリット伝える

また、決済手段として国民に広く受け入れられるための本人確認の手法なども検討する。デジタル円が民間のキャッシュレス決済サービスと相互に補完するような制度設計も今後の検討課題としている。

財務省の担当者によると連絡会議での議論は一旦終了。「今後は関係する業界団体と議論を進めるなどさらに制度設計を深める」としている。

CBDCに詳しい大和総研の長内智主任研究員は「導入しても使われないと意味がない。国民にとってのメリットを分かりやすく、具体的に伝えることが重要だ」と指摘する。(永田岳彦)

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