東京都八王子市長選を制した初宿和夫氏(左)と初宿氏を支援した自民党の萩生田光一前政調会長=1月21日、八王子市の初宿氏の事務所

自民党が派閥パーティーの収入不記載事件で逆風にさらされる中、地方選では「白星」を重ねている。問題が大きく報じられ始めた昨年11月下旬以降、自民党と立憲民主党の対決型となった主だった7つの地方選のうち、立民系が勝利したのは2月4日投開票の前橋市長選にとどまった。自民系は昨年12月24日に投開票された東京都武蔵野市長選や、今年3月24日投開票の熊本県知事選など6勝を挙げている。

昨年11月下旬以降、都道府県知事選や、県庁所在地や注目を集めた市長選で自民系と立民系の候補が対決した選挙を抜粋した。

339票の僅差も制す

11月26日に投開票された高知市長選は、自民、公明両党が推薦した新人が立民や国民民主党、社民党が推薦した現職を破っている。

12月10日投開票の東京都江東区長選は、自民系の現職が公職選挙法違反事件に関連して辞職したために行われた。自民は小池百合子都知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」が推す新人候補に相乗りする格好で臨み、立民や共産党などが支援する新人を圧倒した。同月24日投開票の武蔵野市長選も、リベラル系が強い地域にも関わらず、自公が推薦する新人が立民や共産などが支援する新人を339票差の接戦で破り、18年ぶりに自民系市長を誕生させた。

東京都武蔵野市長選は自民が推薦した小美濃安弘氏(中央)が当選した(原田成樹撮影)

今年に入っても、地方選での自民系の勢いは衰えていない。1月21日投開票の東京都八王子市長選は政治資金パーティー収入不記載事件で不記載額が多かった自民の萩生田光一前政調会長の地元だったが、自公が推薦する新人が立民や共産が支援する新人を退けた。ここでも自民は小池氏と共闘し、小池氏は選挙戦終盤に自民系新人の応援に入った。同日投開票の大津市長選も自民や公明のほか維新の市議会会派が支援した現職が、立民や国民が支援した新人を破っている。

唯一、自民系が敗北したのが2月4日投開票の前橋市長選だ。立民など野党側の議員が支援した新人が、自公推薦の現職を破った。群馬県は福田赳夫、中曽根康弘、小渕恵三、福田康夫の4人の自民の首相を輩出し、今も自民が衆参で議席を独占する保守王国だけに、敗北は与党関係者に戸惑いを与えた。

前橋市長選は立憲民主党の議員らが支援する小川晶氏が勝利した

国政選は不安視

3月に入り、不記載事件を巡る国会の質疑や自民内の処分問題が連日報じられ、地方選にも痛手を与え始めたとみる向きもあった。しかし、同月24日投開票の熊本県知事選は自公が推薦する無所属新人の元副知事が、野党各党の県組織が支援した無所属新人の元熊本市長に約9万5000票差をつけて勝利した。

自民関係者は「地方選は国政選挙と違い、政党色が前面に出ずに候補者の資質が争われる傾向がある。中央政界での『政治とカネ』の問題の影響は限定的だったのではないか」と指摘する。一方で、自民新人と立民の元職が対決する見通しの衆院島根1区補欠選挙(4月28日投開票)は「国政の影響が出るだろう」と分析する。

与野党対決型の地方選を巡っては、任期満了に伴う東京都目黒区長選が14日告示された。届け出順に、新人で元都議の伊藤悠氏=都民ファーストの会、国民民主推薦、現職で6選を目指す青木英二氏、新人で元区議の河野陽子氏=自民推薦、新人で会社員の滝下隆行氏、新人で元都議の西崎翔氏=立民推薦、がそれぞれ立候補している。同区長選は21日に投開票される。(奥原慎平)

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