打つ手が裏目に出る岸田首相に活路はあるのか

岸田文雄首相は6日、熊本市で開かれた自民党員らとの「車座対話」で、今通常国会で政治資金規正法改正を実現する考えを強調した。

しかし、国民との「信頼関係」を再構築しない限り、どんな厳しい改革案をまとめたところで、国民の批判は収まらない。やはり、今、政治が真っ先に行うべきは解散・総選挙しかないのではないか。

振り返ってみると、岸田首相は「大決断」を繰り返してきた。大変な努力を行ってきたと言っていいだろう。それが評価されないのは国民の審判を先送りしているからだ。

まず、「派閥解消」だ。自ら率いた宏池会を率先して解散し、安倍派(清和政策研究会)、二階派(志帥会)、森山派(近未来政治研究会)がこれに倣(なら)った。岸田首相にとって、「清水の舞台から飛び降りる」ような思いだったはずだ。それでも、国民の反応は冷ややかだった。

次に、完全公開での政治倫理審査会の開催に努力した。そのために前代未聞の首相出席にも踏み切った。ところが、出席者は「私は知らない」との答弁を繰り返し、かえって国民の不満を高めた。

今月4日には安倍、二階両派の39人の処分を決めた。「軽い処分では国民は納得しない」との世論を踏まえ、安倍派座長だった塩谷立氏と参院側トップの世耕弘成氏を異例の「離党勧告」処分とした。

しかし、国民の反応は散々だ。やればやるほど失望感を招いていると言っていいのではないか。政治資金規正法改正も、恐らく同じ結果に終わるだろう。

そもそも、疑惑を受けた議員が多数存在する国会が「再発防止策」を決めたところで、国民に対する説得力を持ち得るのか。それに、不信の目は今回の事件だけでなく「政治とカネ」全般に対して向けられている。「当面の対策」だけでは国民は納得しないだろう。

岸田首相には「成果がなければ解散できない」との思いがあるのかもしれない。しかし、解散は、主権者たる国民の意思を確かめる必要があるときに行うもので、成果の有無は関係ない。膠着(こうちゃく)した現在の政局を打開することの方が、目先の成果より、よほど重要といえるのではないか。

こうした中、野党から解散を求める声が上がってきた。

立憲民主党の泉健太代表は5日、岸田首相が自身の処分について「国民と党員に(責任を)判断してもらう」と発言したことを受け、「選挙で国民が首相を処分するしかない」と述べ、衆院解散を要求した。日本維新の会の馬場伸幸代表も6日、「すぐにでも選挙で信を問うべきだ」と訴えた。当然だと思う。

現在の政治状況を打開するには、解散・総選挙以外に方法はないように思う。(政治評論家)

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