大阪広域水道企業団や周辺5市との水道事業の統合計画案が、維新を除く反対多数で否決された東大阪市議会の本会議=3月26日(西川博明撮影)

地域政党「大阪維新の会」が本拠地で守勢に立たされている。次期衆院選の関西6選挙区で維新側と初めて議席を争う公明党が対決姿勢を鮮明にし、維新が誘致に関わった2025年大阪・関西万博の予算増額を批判。大阪府内の複数の市議会で維新公認の首長が提案した議案を否決に追い込むなどしている。衆院選の時期が見通せない中、さや当てが激化している。

「万博開催に対してネガティブな印象をもたらしている」。公明の大阪府本部は16日、斎藤健経済産業相に提出した万博の予算執行に関する提言で、万博の会場建設費と運営費が当初想定から上振れしたことについてこう指摘した。

万博の予算執行を巡っては、経産省と日本国際博覧会協会がそれぞれ管理組織を立ち上げたが、公明府本部も独自に検証委員会を設けた。提言は表向き、協会が予算管理と情報公開を怠らないよう経産省に指導監督を求める内容だが、協会副会長の府知事と大阪市長の双方の任にある維新に対する牽制(けんせい)とも取れる。

大阪都構想では協力も統一選後に対立

会場建設費の3分の2は国と大阪府市が支出する税金であり、大衆政党を自任する公明は府市両議会で納税者の負担の重さを問題視。ある公明府議は「国や府市は簡単に会場建設費の増額を決めたが、物価高に苦しむ納税者の理解を得られていない」と批判する。

これに対し維新府議は「公明は政権与党として国家事業の万博を推進する立場だが、大阪では批判し、政局にしている」と不満を漏らす。

これまで両党は、維新の看板政策である大阪都構想を巡って協力関係にあり、維新側は衆院選で公明が議席を持つ大阪の4選挙区と兵庫の2選挙区で対抗馬の擁立を見送ってきた。しかし昨年4月の統一地方選に際し、維新側は府市両議会で過半数の議席を獲得。これを機に、衆院6選挙区での対決にかじを切った。

維新恨み節「事業を政争の具に」

両党の対立は、維新が首長職を押さえる一方、議会で過半数の議席を持たない府内の自治体で顕著にあらわれている。

堺市議会(定数48)で維新は最大会派ながら18議席。議案の可決には他会派の協力が必要になるが、令和6年度当初予算案の審議は、永藤英機市長肝煎りの自動運転バス事業を巡り紛糾した。

第2会派の公明(11議席)は4年度の同事業の関連予算に賛成していたが、今回は同事業を削除した修正案を自民党などと提案した。修正案は3月の本会議で賛成多数で可決されたが、永藤氏は審議のやり直しを求める再議に踏み切り、最終的に永藤氏提案の原案が可決されることとなった。

公明市議は、修正案提案の理由を「自動運転バス事業計画の全体像が示されないため」と説明するが、ここでも維新側からは「事業を政争の具にしようとしている」との恨み節が聞こえる。

「協力関係にない」突き放す公明

東大阪市議会では、大阪広域水道企業団や周辺5市との水道事業の統合計画案が、維新を除く反対多数で否決された。5期目の野田義和市長は過去4回の市長選で自民、公明の実質的な支援を受けてきたが、昨年9月の市長選では維新公認で当選を果たした。

公明関係者は各市議会での動きについて「それぞれ地元の事情が大きいが、衆院選を見据え、維新に対する態度を鮮明にする意味もある」と明かし、東大阪市については「(市長と)協力関係になく、政策が合わなければ反対する。従前のようにはいかない」と突き放す。

維新の横山英幸幹事長は「事案によって賛否は当然ある。維新がだめだからという動機付けで反対しているのであれば、あってはならないことだ」とくぎを刺した。(木津悠介、吉田智香、宇山友明)

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