元お笑い芸人である中北朋宏氏が「会話で損しない方法」について解説します(写真:マツ/PIXTA)「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」 と心理学者のアドラーが考えたように、ほぼすべての人が人間関係で悩んだ経験があるはず。元お笑い芸人である中北朋宏氏は、芸人引退後に未経験でコンサル業界に転職し、「笑いの技術」を駆使して3年で売り上げナンバーワンに。
その後、起業して株式会社俺を設立。現在は心理的安全性や営業力を向上させる独自のノウハウ「コメディケーション」を260社、2万6000人以上に提供している。最新刊『おもしろい人が無意識にしている 神雑談力』では、中北氏がこれまでの経験やお笑い芸人として培った技術を駆使した「人を動かすコミュニケーション術」を網羅。以下では、その中北氏が「会話で損しない方法」について解説します。

相手に信頼されない「薄っぺらい会話」

職業柄、企業研修や個別面談などを通して数多くの方と年間通してお会いさせていただきます。

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2024年度には、すでに4月の新入社員研修を通して数百名の方とご一緒させていただきました。

その中でも、配属されて「この方は、上司・先輩との関係構築がスムーズに行えそうだな!」と感じる方と、「この方は、上司・先輩から誤解を受け苦労しそうだな……」と感じる方が明らかにいます。

関係構築するためには、当然ではありますが相手との「会話:受け答え」が重要となります。

やはり「大丈夫かな……」と受け答えに疑問を抱いた方は、現場に配属されてから上司・先輩とのやりとりに苦労している声を多くお伺いします。

今回の記事では、そんな多くの方と関わってきた中で、このような受け答えをしていると上司・先輩から「本当に理解しているのか……」「この新人は大丈夫だろうか……」など、相手に不信感を与える「受け答え」をいくつか紹介します。

【NG①】相手の話をただ繰り返す

まず、ご紹介したいのは相手の発言を繰り返すことです。

コミュニケーションの書籍などを読むと相手の言ったことを繰り返すことは、相手の気持ちに寄り添うための定石とされています。

ただ、これには明確に落とし穴があります。

1. 相手の発言を咀嚼せずに繰り返す

相手の短い発言を繰り返すことには、効果はあると思います。

ただ、そこそこの長文の場合、咀嚼せずに、ただただ繰り返すと、相手からは「なぜ、自分の言ったことをもう一度聞く必要があるの?」と疑問が湧きます。

具体的な事例をご紹介すると、

Aさん今日は、〇〇をお願いしようと思います。その後に、□□に取り組んでほしいです。ただ、〇〇は難易度が高いのでいつでも質問してくださいね。

新人Bさん今日は、〇〇をやりますね。その後に、□□に取り組むんですね。〇〇は難易度が高いので質問します。

このような、そこそこ長い文をほとんど同じ内容でボイスレコーダーのように繰り返す方がいらっしゃいます。

ぜひ、要点だけを繰り返すようにしましょう。

2. 相手の発言に横文字を入れて繰り返す

繰り返しでもう一つご紹介しておきたいのが、自分なりに要点をまとめるのはとても良いのですが、なぜかビジネス用語の横文字を多用したがる方がいらっしゃいます。

例えば、よく聞く言葉として「コミット」「アジャイル」「エビデンス」「ローンチ」など、インターン先で使っていた言葉なのか、ビジネス憧れなのか……。

この言葉で、わざわざ伝えた日本語を英語にされると「本当に理解しているかな……」と疑問に思ってしまいます。

他にも、会話を繰り返すことの「落とし穴」があります。

3. 質問を繰り返す

意外と多いのが、質問されたことを繰り返すことです。

これは具体的にお伝えしたほうが早いと思います。

AさんBさんは〇〇について、なぜ問題が起きていると思う?

新人Bさんなぜ、問題が起きてるんでしょうね?

Aさんは、Bさんの意見が聞いてみたいにもかかわらず、Bさんの質問の繰り返しを聞いたところで「なんだろうこの新人……」と感じるわけです。

また、なぜか質問を繰り返す方の多くは、深く思考しているかのように遠い目をしていることが多いです。

今すぐ、遠い目をやめ、現実に意識を戻し、自分なりの意見を伝えましょう。

【NG②】枕詞に著名人の名前を使う

次に、自分からの発言について気をつけたいことをお伝えします。

この発言をついついしている人は「一撃でNG」と思われることも多いので、ぜひ押さえてもらえると幸いです。

1.〇〇さんが言っていたのですが……

自分の意見を伝える前に、「〇〇さんが言っていたのですが……」と「堀江さん」「ひろゆきさん」「西野さん」などの著名人や有名社長の名前を枕詞として使用する。

ちなみに、私に対して元お笑い芸人ということもあり、「西野さん」の名前を使う方もまれにいますが、使われた瞬間、その方と話す気をまったくなくします。

なぜかというと、その方の意見ではなく「西野さん」の意見なので、その方から聞く必要がないからです。

2.「仕事の本質」「人の真理」など大げさな言葉を使う

これは、ビジネスパーソンのどの層にも当てはまるとも思いますが、「仕事の本質をわかっていない」「人の真理とは……」と、ペラペラと語りたがる方が、人の真理にたどり着いているとは到底考えられません。

このような曖昧で大袈裟な言葉を使う方は、経験上で90%以上薄っぺらいとみて間違いないと考えています。

【NG③】相づちが目的化している

さて、最後に、相づちについても、念のためお伝えします。

コミュニケーションのノウハウなどを調べると必ずと言っていいほど、「相づち」の重要性について語られています。

先日、ある会社で相づちを意識するあまり「メトロノームのように一定のリズムで相づち」を打っている方がいました。

あくまでも、相づちは相手との関係構築をする手段です。

目的化することだけは避けましょう。

「一定のリズム」での相づちは、逆に「相手の話を聞いていない」という印象を与えてしまいます。

前記事【『新しい職場「すぐなじむ人」「なじめない人」決定差』】でも書きましたが、相手の立場にあわせて相づちをいれるのは、有効です。

ぜひ、NGの例を意識し、楽しんで新入社員生活をお楽しみください。

まとめNG① 相手の話を繰り返すだけ
→相手の会話を咀嚼せずに返すと、「なぜ、繰り返したのだ」という印象にNG② 枕詞に著名人の名前を使う、大げさな言葉を使う
→著名人の意見であって、話し手から聞く必要はないNG③ 相づちが目的化している
→適当な相づちは、逆に「相手の話を聞いていない」印象に

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