北海道旭川市で3年前、中学2年広瀬爽彩(さあや)さん(当時14)が自殺した問題で、市は13日、いじめと自殺の関係を認めた再調査委員会(尾木直樹委員長)の調査報告書を公開した。非公開部分を一部削除しただけで、ほぼ全文を掲載。遺族の意向で、爽彩さんの発達特性やいじめの実態、死に向かう気持ちの変化が克明に記された。

 全文はA4判382ページで、市教委の第三者委の報告書(159ページ)の2倍以上となった。公表されたのは366ページで、新たに7項目のいじめを認定。爽彩さんの小学校からの学校生活や中学に入ってからのいじめの実態が詳細に記された。

 発端は教室内でのいじめだった。無視、悪口、言動をまねされ笑われるなどで孤立。学外での先輩らとのつながりを維持したい一心で、自らの意志にあらがいながら自慰行為の強要や動画の送信など性被害を受け続けた経緯が明らかにされた。

 小川で自殺を図ろうとした後、「死にたい」「生きたくない」と繰り返し教員に訴えた通話記録の一部や、「いじめと自殺」の関係性の判断となった失踪直前までの約1年2カ月に及ぶSNSの送受信履歴も記された。

 学校側の対応については、学校がいじめ認知に消極的で、これを指導助言すべき市教委も認知しようとしなかったと判断の誤りを指摘。学校、市教委の対応が適切であれば自殺という最悪の結果を免れることができる可能性があったとした。

 今津寛介市長はこの日の市議会本会議で、前日に遺族宅を訪問したことを報告。「学校及び市教委の責任を真摯(しんし)に受け止め、市長として改めて14歳の女子生徒の尊い命を救うことができなかったことを心からおわびする」と語った。

 報告書は市のホームページでも閲覧できる。これとは別に個人情報を含む非公開の「資料」がある。(奈良山雅俊)

 広瀬爽彩さんの母親のコメント

 通常は公表しない、遺族や娘の個人情報に関しても公表することに踏み切りました。臆測や根拠のない誹謗(ひぼう)中傷が遺族にとどまらず、一般市民の皆様にも及んでいたためです。

 娘が何に苦しみ、何に悩んでいたのか、また、娘が抱えていた特性が皆様の身近にあること、このようないじめはどこの地域でも起こりうることだと感じていただき、今後同じことが繰り返されないよう、そして同じような悩みを抱える方にも役立てていただけたらと思っています。(奈良山雅俊)

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