いじめがなければ、自殺は起こらなかった……。まだ雪が残る北海道旭川市の公園で、凍死体で発見された中学2年広瀬爽彩(さあや)さん(当時14)の死の原因が明らかになった。調査開始から3年余。再調査委員会が30日に公表した。医学や心理学的見地で自殺の原因を検討。生徒が残したSNSや診療記録などをAIも活用して分析した。
遺族側弁護団の石田達也弁護士は「AI技術や統計学などを応用したデータ分析など最新の技術を結集した完成度の高い画期的な調査結果で、各委員が専門性を遺憾なく発揮した過去に例のないレベルの内容だった」とした上で、「この再調査報告書が広瀬さんと同じ悩みや苦しみ、孤立を感じている子どもたちを救うために全国各地で活用されることを切に願います」とのコメントを出した。
ただ、すべての報告書が公表されたわけではない。再調査委は、本文約380ページ、資料などを加えると450~460ページの分厚い報告書を完成させていた。ところが、直前になって、22年9月に公表された市教委の調査報告書の「たたき台」と見られる黒塗りなしの文書がネットに流出し、「漏洩(ろうえい)に対する保護措置をとる」として、市への提出は見送られた。
再調査委は急きょ、調査手法や死因を導き出すまでの経緯などが書かれた「概要版」(5ページ)を作成。調査概要やいじめの認定、再発防止の提言など6章からなる報告書の冒頭とともに公表した。今津寛介市長に答申ではなく報告という形での異例の発表となった。
尾木直樹委員長は記者会見で、「流出は絶対にありえないこと」と、ずさんな情報管理を批判。「このようなことが繰り返されれば二次被害も考えられ、誰もいじめの調査や再調査に協力しなくなる」と厳しい口調で語った。報告書の答申は、流出に対する市の対応をみてから判断するという。
この日の朝、広瀬さんが見つかった公園にある献花台は、似顔絵を囲むように色とりどりの花やお菓子、飲み物で埋め尽くされていた。献花台に手を合わせていた男性(47)は「ようやく結論が出て、広瀬さんもほっとしているでしょう。自殺の原因はいじめだけではないだろうが、どこか大人の都合でここまで結論を延ばしてきた気がする」と話した。
広瀬さんは21年2月13日に自宅を出た後、行方がわからなくなり、3月23日に永山中央公園で遺体で見つかった。事実が明らかになると、公園のあちらこちらに花が供えられるようになり、11月から管理棟に献花台が設けられた。3月23日は手を合わせる市民の姿が多く見られる。(奈良山雅俊)
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