東京大学が2割(約11万円)の授業料値上げを検討するなか、21日夜、東大の学生と藤井輝夫総長が意見を交わす集会「総長対話」がオンラインで開かれた。本郷キャンパス(東京都文京区)では、反対する学生らによる集会や、総長対話のパブリックビューイング(PV)が開かれた。
藤井総長は冒頭、教育環境の整備や教職員の人件費に使われる国からの運営費交付金が増えない中、断念せざるを得なかった教育活動も複数あったと説明。寄付金集めや支出削減に限界がある一方、授業料を値上げすることで約29億円の安定的な財源が確保できるとして、「教育環境の改善は待ったなしで、一刻も早く改善したい」と強調した。
また、値上げにあわせて経済的に困窮する学生への支援も拡充するとし、授業料免除の基準を「世帯年収400万円以下」から「同600万円以下」にすると説明した。
学生たちからは「多子世帯の学生や、親との関係が悪くて授業料を出してもらえない学生など、世帯年収だけでははかれない事情もある」などと反対の声が上がった。報道で値上げが明らかになるまで大学から学生への説明がなかったとして、「学生は完全に蚊帳の外」との批判も出た。
もう一度総長対話の機会を設けて欲しいという要望もあったが、藤井総長は「約束はできない」と述べた。
国立大の授業料は、文科省令で定める年53万5800円の「標準額」から20%まで値上げできる。文部科学省によると、2019年度以降、東京工業大、東京芸術大など6校が学部の授業料を値上げしている。
国立大の財務状況は近年、光熱費や物価高騰の影響で危機的だと指摘されてきた。全国86の国立大でつくる国立大学協会は7日に会見を開き、「もう限界です」との声明を公表。教職員の人件費や研究費に使われる国からの運営費交付金の増額を訴えた。(狩野浩平)
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