スーパーでどうやって賢く買い物する? 写真はイメージ(写真: sasaki106 / PIXTA)世の中は、想像以上に数字に溢れています。現役東大生・ドラゴン桜チャンネル塾長の永田耕作氏が上梓した『東大式 数値化の強化書』では、さまざまなシチュエーションを交えながら、ビジネスでも日常生活でも役に立つ「数値化力」を鍛えるコツを紹介しています。本書を一部抜粋・再構成し、スーパーでの割引について解説します。

皆さんは、数学は好きですか?

学生時代から好きで、今も数学を使っているという人もいるかもしれませんが、苦手な人も多い教科でしょう。

学研教育総合研究所が行っている「中学生の日常生活・学習に関する調査」によると、数学は中学生が学ぶ教科の中でいちばん好き嫌いが分かれる科目です。

大人になっても数学は苦手

科目の好き嫌いはその成績に直結するため、数学をいかに好きになれるかが成績向上のカギとなるのです。そして、中学生の時点で数学に苦手意識を持ってしまうと、大人になるにつれてどんどん数学から疎遠になり、計算能力が落ちてしまいます。

僕は、小さいころから算数・数学が大好きでした。学校の授業で勉強する教科としての「算数・数学」はもちろんのこと、それ以外の日常生活でもつねに数字を追いかける子供でした。

一方で、僕の周りにも算数、特に「数の計算」が好きな友達は多くいましたが、学年が上がるにつれて苦手な単元や、わからない問題が増えてきたことで、徐々に「算数・数学嫌い」が増えていってしまったのです。

これを解決するためにはどうすればよいのでしょうか。

1つの有力な方法は、日常生活のあらゆる場面の選択を「数学」を用いて考えることです。ここからは、1つ具体例を交えながら、その考え方を確認してみましょう。

皆さんは、スーパーで割引商品を探した経験はありませんか?

スーパーなどに買い物に行くと、「20%引き」や「100円引き」といったように、値引きされている商品を見つけることがあります。

あらかじめ告知されたセールで割引されている商品もありますが、多くの場合は、消費期限の近い商品や、閉店間近のスーパーにある生鮮食品などに割引シールが貼られています。

つまり、このまま売れ残ったら廃棄になってしまう商品に対して、多少利益が少なくなってもお客様に届けたいという思いで、お店側が値下げをしているのです。この仕組みは多くの人が理解していることでしょう。また、その値下げシールを狙って買い物をしている方も多いと思います。

この割引について、種類が多くてどれだけ安くなっているのかがわからない、という経験はありませんか? 単純なパーセンテージによる割引だけではなく、「レジにてさらに〇〇」というような商品もあり、結果的にいくらになるのかわからず、とりあえず「安そうだから」購入している、という人も少なくないでしょう。

しかしそれでは、本来買う必要のない商品を買ってしまっている可能性があるのです。

きちんと商品の値段を理解して、自分が買いたいかどうかを判断できるように、ここでは値段の数値化力を磨いていきましょう。

3つのパターン、どれがいちばんお得?

まずはこちらの問題を考えてみてください。

定価1000円の「お刺身盛り合わせセット」があります。スーパーでこの商品を1個だけ購入するとき、次の3種類の値下げの中で、いちばん商品が安くなるのはどのパターンの場合でしょうか?(ただし、今回は消費税については考えないこととします)

パターンA:「お刺身盛り合わせセット」に10%引きのシールが貼られており、「この時間帯はレジにてさらにお会計価格から20%引き」とアナウンスされている場合パターンB:「お刺身盛り合わせセット」に200円引きのシールが貼られており、「この時間帯はレジにてさらにお会計価格から10%引き」とアナウンスされている場合パターンC:「お刺身盛り合わせセット」に30%引きのシールが貼られている場合

いかがでしょうか。「お刺身盛り合わせセット」の値段がぴったり1000円なのでまだ複雑な計算にはなりませんが、それでもパッと3択を出されると、どれがいちばん安いのかがわからなくなるでしょう。

この問題を整理すると、「10%引き→20%引き」と、「200円引き→10%引き」、そしてシンプルな「30%引き」の3種類の中で、いちばん割引率が大きいのはどれかを考える、ということになります。

まず、結論から話しましょう。この問題では、パターンA、パターンBが2段階で値引きをされているので、一見パターンCよりも安くなるように見えます。しかし、答えはパターンCなのです。おそらく、多くの人にとって意外な答えだったことでしょう。

ここからは、実際に1000円の商品の値段変化で計算しながらこの謎を紐解いていきましょう。

パターンAでは、まず1000円の商品の10%は100円であるため、レジに持って行く前の商品の値段は900円になります。そして、レジでさらにその20%引きになるため、

900円 × 20% = 180円

900円 - 180円 = 720円

と計算することができ、最終的な商品の値段は720円になります。

ここで重要なのは、レジでの「20%引き」は元々の商品の定価である1000円ではなく、10%割引された後の900円からの計算になるため、割引額が少なくなるのです。この事実がこの問題を考えるカギになります。

同様にパターンBも考えてみましょう。まず、1000円の商品に200円引きのシールが貼られているため、この時点での商品の値段は800円になります。そして、レジでさらにその10%引きになるため、

800円 × 10% = 80円

800円 - 80円 = 720円

と計算することができ、こちらも同じく最終的な商品の値段は720円になります。

ここまでで、多くの人は答えがパターンCになることが理解できたことでしょう。

10%+20%引きと30%引きの結果は違う

パターンCの計算は、割引が1回しか行われないので非常にシンプルになります。30%引きのシールが貼られているため、

1000円 × 30% = 300円

1000円 - 300円 = 700円

となり、パターンA、パターンBより20円安い700円になることがわかります。割引が1回でも、いちばん値段が安くなっているのです。

この問題を見て、「10%+20%引き」と「30%引き」の結果が一緒ではないことに違和感を持った人は少なくないでしょう。「10+20 = 30」であるから、直感的にこの2つは同じ意味であるとイメージしてしまいます。

しかし、計算式にも記した通り、割引が複数回行われる場合は、2回目以降の割引はすでに下がっている値段から割り引かれるため、値下げ幅が小さくなるのです。

具体的に言えば、10%引き後の商品の価格は定価の90%になっているため、その後行われる20%引きは

90% × 20/100 = 18%

となり、実際には18%引きになっていることがわかります。

パターンBでは、1回目の割引がパーセンテージではなく、そのまま引かれていますが、これでも2回目の割引率が小さくなるという事実は変わりません。

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(図:本書より引用)

このように、どれも合計30%分の値引きがされている選択肢では、一括で30%引きになっているものがいちばん安くなるのです。

ただなんとなく割引率を見るのではなく、どのくらいの値段になるのかを考えることで、正確な判断ができるようになるでしょう。

数学がわかるとお得に買い物ができる

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スーパーは、多くの人が日常生活において頻繁に使用する場所です。そしてそこには、多くの数字が溢れています。この数字をうまく扱うことで、数学を得意にしながら、よりお得に物事を判断できるようになる。まさに一石二鳥なのです。

数字をいかに扱えるかで、世の中の見え方は大きく変わります。

今回新たな発見があったと感じた人は、ぜひ日常生活のどのような場面で数字が使われているかに着目してみると、数学に対して面白く感じるようになるでしょう。

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