「虎に翼」のもう一人の主人公は花江――。NHK連続テレビ小説「虎に翼」で脚本を手がけた吉田恵里香さんは、主人公の佐田寅子(伊藤沙莉)を支える専業主婦の猪爪花江(森田望智)をそんな思いで描いた。27日の最終回を前に話を聞いた。

  • 「虎に翼」花江は先進的で戦う専業主婦 カギとなるのは「優しい夫」
  • マイノリティーを描くことは挑戦か 「虎に翼」吉田恵里香さんの問い

 寅子の親友として、兄の妻という家族として、並走する花江は、日本初の女性弁護士にして裁判官になって仕事に生きる寅子とは対照的で、家庭に生きる。

 近年、「ゲゲゲの鬼太郎」の作者、水木しげるさんと妻・武良布枝さんがモデルとなった「ゲゲゲの女房」(2010年)、チキンラーメンの生みの親である安藤百福さんと妻・仁子さんがモデルの「まんぷく」(18年)など、専業主婦をヒロインとして設定している朝ドラも出てきた。

 吉田さんは、花江もそうしたドラマに「なりうる人」と思った。「花江の朝ドラ、『虎に翼』花江版があった時でも、ちゃんと成立するように作ったつもりです」

 「虎に翼」のテーマの一つは、自分の人生を自分で決めること。バリバリ働きたい人、ほどよく働きたい人、家庭に入って家のことを守る人……。

 「心からなりたいものになれたら一番だと思っています。それになるためにはどうしたらいいかと考えたときに、やっぱり花江ちゃんも描かないとフェアじゃないと思って」

 猪爪家は、途中から家族みんなで支え合う方向に変わったが、花江は家事をやらされているのではなく、一貫して家族のために生きることが幸せな人として描いた。

 吉田さん自身、脚本家として第一線で働いているが、「バリバリ働く人のためには、ケアする人がいないといけないという社会構造にどうしてもなってしまっている。私もその人たちがいなかったら働けない」と言う。

 そうした社会の中で、ケアする側が、時に世の中で軽視されてしまうことに「腹が立つ」と語る。「お互いに支え合って家庭を円満にすることが、どれだけ大変で大事なことか。その心地よい生活を送るため、ご飯がある、シーツがピンとしている、ほこりがない……。花江はそういうことの『プロ』になっていく描き方に気をつけました」

 「虎に翼」のキャラクターたちは、みんな駄目なところがあって良さもある。寅子だけが正しいわけではない。そんな描き方をした。「嫌いな登場人物がいてもいいんです。誰かに寄り添うと、それまで見えてなかったものが見えてくる。そんな体験を作れたら、うれしい」(宮田裕介)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。