年間500万人が訪れる観光都市・北海道函館市の「観光コースではない函館散歩」を紹介する「はこだてピースマップ」(改訂版)ができた。身近な場所にある戦争の痕跡をたどることで、戦争が起こらないためにできることを考えよう、という呼びかけだ。

 夜景で有名な函館山のふもと。ロープウェー乗り場前の南部坂の路肩に高さ80センチほどの石柱がある。側面には「要塞(ようさい)第一地帯」「明治三十二年」などの文字が刻まれている。

 「函館山が軍事要塞だった歴史を物語るもので、市民は地帯内への立ち入りを法律で禁じられていました」。ピースマップを作った函館YWCAピースプランニング委員会の西堀滋樹さん(74)が教えてくれた。

 函館山は1945年の第2次世界大戦敗戦まで、「津軽要塞(函館要塞)」と呼ばれ、軍の管理下にあった。津軽海峡の制海権保持と防御のために砲台などの軍事施設が集まり、今も残る石柱は要塞地帯であることを示す標柱(標石)という。マップ改訂版には、新たに確認された3本を含む7本の場所が載っている。

 「函館山は写真撮影だけでなくスケッチまで禁止されていた。32(昭和7)年には法律に触れたとして小学生の絵が憲兵に没収されたこともある」と西堀さん。一般人が立ち入れるようになったのは敗戦後だった。

 マップでは1868(明治元)年に始まった箱館戦争から第2次世界大戦敗戦まで、30項目に及ぶ戦争にまつわる場所や出来事を解説し、大判の地図を見ながら巡れる。改訂版では2017年の初版より記述内容や資料を増やし、QRコードを読み込んでスマートフォンで巡るデジタル版も新装した。

 西堀さんは「戦争は忘れられたときに、次の戦争が準備されていく。そうさせないために、ここで何があり、人々はどんな思いで生活していたのか、想像してほしい」と話す。

 改訂版は500部作り、函館市内の書店で販売する。A5判78ページ、A2判地図付き、650円(税別)。問い合わせは函館YWCA(0138・51・5262)。(野田一郎)

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