兵庫県姫路市埋蔵文化財センター(同市四郷町坂元)が7月20日から開催する企画展が「攻めている」。センター所属の職員が自らの「推し」を紹介するという。

 文化財調査の専門職員の山下大輝さん(31)は、室町から江戸時代の瓦を研究している。

 「播磨の地に来た秀吉の影響で、姫路の瓦職人が大坂城や聚楽第の瓦にも関わっていたと考えられています。軒平瓦の文様が共通しています」

 専門分野に関する解説がよどみなく続く。

 好きな歴史上の人物に「大和国西京住人瓦大工 橘朝臣国次」を挙げる。「播磨地方の寺の瓦に名前が記されています。奈良出身の私と同郷で、『推し』の人物です」

 市内の発掘作業を担当するセンターの職員には、それぞれの専門分野がある。今回の展示では、それを「推し」と位置づけた。

「城」から「骨」まで

 山下さんはもちろん「瓦」推し。ほかの4人の推しは「石垣」「埴輪(はにわ)」「城」「骨」というラインアップだ。それぞれがパネルと「推し活グッズ」を並べて、推しをアピールする。会場には、観覧者に自分の推しを書き込んでもらうコーナーも設ける予定という。

 山下さんは、研究のため現代の瓦職人につくってもらった「軒丸瓦」の実物の展示を考えている。「焼いていない状態なので、表面をととのえる『ナデ』の工程もしっかりと確認できます」

 全館無料で展示を見ることができる埋蔵文化財センターだが、姫路城がある市中心部から離れていることもあり、入館者は伸び悩んでいる。コロナ禍の影響で、夏休みに子どもを対象に例年開いている企画展も苦戦してきた。「何でもやってみようという雰囲気になって、今回は『推し』という言葉をテーマにしました」と山下さんは話す。

 考古学関連の展示会の紹介は、土器などの写真を掲載して「落ち着いた色合い」(山下さん)が多いが、今回はチラシも「攻めた」デザインにした。写真もイラストもないところに、ピンク色の「推シ展」の文字が浮かぶ。

 「色は目立つピンクに。影をつけて浮き上がるような表現にしたかったので、影をつけやすいように『推シ』とカタカナにしました」。デザインはすべて山下さんが担当した。

 「推シ展」は7月20日~9月16日。月曜(祝日の場合は翌日)休館。問い合わせは姫路市埋蔵文化財センター(079・252・3950)。(宮沢崇志)

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